逮捕1
アクセス解析をみると、約3分の1があらすじでバックしてる件www
俺が盗んだスピーカーは八百屋のおばさんのもので、シルクハットは上品な格好をした貴族っぽいじじぃのものだったのだが、どうやらそのじじぃがこの街一番の権力者だったらしい。
しかも俺が盗んだのが最近薄くなってきた髪を隠すために買った、最高品質の黒龍の革を使ったシルクハットだったそうだ。
なんとも運がないことだ。スライムになってう○こが出ない体になったからだろうか。
じじぃはシルクハットをよく分からない男(俺)にいきなり強奪されたと言って、ひどく憤慨してお役所に押し入ったらしい。
観客の表情が固まったのは、そのシルクハットを盗まれてじじぃが酷く怒っていたのを知っていたからだということだ。
「擬態」で顔をイケメンに変えればばれやしないぜ。グヘヘ。とか思っていた半日前の俺をぶん殴りたい。せめて「装備品鑑定」のスキルを使って鑑定しておけば良かった。
それに初めて会った人に軽蔑されるのは何度経験しても凹む。
今回は原因が分かって良かった。
取り敢えず、次回からは他人にばれないものを盗もう。
ちなみに金貨1枚というのもかなりばかけた値段だったらしい。普通の宿なら銅貨50枚で泊まれると衛兵さんが教えてくれた。(金貨1枚=銀貨100枚=銅貨10000枚、白金貨=金貨100枚)
プレイヤーがやっている宿など金貨5枚くらいがデフォだったことを考えるとゲームの世界とは随分価値が違うようだ。
まぁ、オンラインゲームではゲーム内通貨は必ずと言って良いほどインフレするのでそれも当然なのかもしれない。
考えごとをしている俺にイライラしたのか、衛兵さんがまたもや同じ質問を繰り返した。
「お前はどこから来たのだ?」
しかし俺の答えも変わらない。というより変えようがない。
「日本です」
「だからその『ニホン』という国はどこなのだ?」
「東の方です」
「...だからこの海辺の街ハマビーチの東には海しかないと言っているだろう」
「ちくわ大明神!!」
「しかし、俺の故郷、日本が東にあるのは事実なのですが」
「そんなものがあったらとうに発見されているだろう。ハマビーチの航海術はピカイチなのだから」
「ちくわ大明神!!」
「そう言われましてもですね...」
「はぁ...埒があかんな。」
さっきから何遍も繰り返したやりとりが再び繰り返される。
正直日本としか言いようがないのだから仕方がない。
ちなみに手錠はされているものの、体を粘液化できる俺はいつでも外すことが可能だ。
ただ衛兵さんに人間ではないことがバレると今後に色々支障が出そうなため、今は大人しく捕まってやっている。
それにさっき「霊視」のスキルで衛兵さんのレベルを測った際にLv63と表示されたのも俺が未だに冷静でいられる理由の1つだ。このレベル差ならたとえ攻撃されようとほとんど無傷だろう。
もっともこっちに来てから戦闘はまだ経験していないため、必ずしも安全であるとは言えないが。
「おい。お前いい加減にしないと、本当にラインハルト伯爵公を呼ぶぞ!」
ついに切れたのか、衛兵が身を乗り出して俺に迫ってきた。ちなみにラインハルト伯爵公とは俺がシルクハットを奪ったじじぃのことである。この街で知らぬ者はいない権力者で皆に恐れられているとか。
「そう言われましても...」
「ちくわ大明神!!」
それに俺にはもう1つ気になることがある。
それは詰問処の天井に張り付いて「ちくわ大明神!!」を連呼しているロリっ娘バニーちゃんは一体誰なのかということだ。