第二の人生 3
太陽が爛々と照りつける浜辺で俺は日本でやらなくてはいけないことを必死で思い出しそうとしていた。
学校...高校を中退した。
友達...ネットの中に30人程度。うち女は2人。
趣味...ゲーム。
職業...自宅警備員。
将来の展望...特に無し。
貯金...親のスネ
彼女...100人近くはインストールした。ただし全員少し薄っぺらい。
家族...母親が1人......
母さん...
スーパーマーケットで働き始めると言ったら泣いて喜んでくれた母。
スーパーマーケットを辞めたと伝えても、「自分のやりたい時にまた始めたら良いよ。母さんいつでも応援してあげるから」って優しく微笑んで、涙を流しながら俺を抱きしめてくれた母。
京都産のハンカチを渡したら、「ありがとう。今まで何にも力になれなくてごめんね」って言いながら袖を濡らしていた母。
将来しっかりした仕事に就くための勉強をしたいからお金が欲しいと言ったら、潤む目で俺を見つめて、嬉しそうに震える手で10万円を俺の手に握らせてくれた母。
母の顔が次々と脳内に浮かび上がっては消える。
母泣いてばっかだったな...
ほんと俺は駄目な息子だったよな。
親孝行らしい親孝行も一回も出来ずにこんなわけの分からない世界に来てしまって...
あれ?何でだろう?
目の前が霞む。
これは...涙か。
目にゴミでも入ったのかな。
ははっ
何故か涙が止まらないや。
俺、どうしたんだろう?
そこで俺はふと気付いた。いや気付いてしまった。
今の俺の身体がスライムだったということに。
ヤヴァイ!何がヤバイって超ヤバイ。俺の体がどんどん粘液となって溶け出している。
まさに水も滴る良い男。ウホッ!
...じゃない。そんなこと考えている場合ではない。
俺は急いで日陰に転がり込んだ。
すっかり失念していたが、スライム兼吸血鬼属性を持つ俺は昼間に直射日光に当たると身体がどんどんゲル状に変化してしまうのだ。
こんなニュルニュルヌチョヌチョな状態を他人に見られてしまっては俺の「人間に紛れて異世界で過ごそう計画」が頓挫してしまう。それだけは死んでも避けなくては。
異世界で暮らしていく上で最初から躓くわけにはいかない。
えっ?
日本?
特に未練もないのでここで暮らすことにしました。
駄目な息子でごめんよ。母さん。