プロローグ4
第二の人生オンライン発売から二ヶ月。俺は最先端の廃人たちに混じり、ひたすらレベリングを行っていた。
睡眠2時間。飯風呂30分。ゲーム21時間30分。この時間分けを俺は「ニートの黄金比」と読んでいる。
全く寝ないのは次の日に支障が出るし、寝過ぎるのはレベリングに支障が出る。そこで長年の経験から生み出された最強の時間配分。それが「ニートの黄金比」である。
さらに課金アイテム【経験値1.5倍】(¥10000/月)を使いレベリングを加速する。
「ニートの黄金比」と「経験値1.5倍」これが狩りにさほど特化していない俺が最先端の廃人たちに引けを取らない理由である。
ちなみに経験値1.5倍を買う金は親の懐から出ている。
「来年くらいから正社員として働くために今必至で準備しているんだ。その勉強のためにどうしてもお金がいるから少し貸してくれない?」
って言ったら普通に感極まったようで涙を流しながら、10万ほどくれ、いや貸してくれた。
第二の人生オンラインを買った残りの5000円で京都の高級ハンカチを買って母親にプレゼントしたからそのおかげかもしれない。
あの時も泣きながら喜んでいたもんな。
全く良い母親過ぎて将来詐欺に合わないか心配だ。
ん?「第二の人生」は自分の手で掴み取るんじゃないのかって?親の愛から生み出された金だから自分の手で掴み取ったようなものだろ?
◇◇◇◇◇◇
第二の人生オンライン開始から訳三ヶ月。
街中で職業はスキル【パントマイム】を使い、怪しい踊りをしながら、美人のお姉さんとイチャイチャ、チュパチュパ、ギシギシアーンするパントマイムをしていたら、「変態吸血鬼」という不名誉な二つ名がついた。
粘体吸血鬼からとっているのだろうが、何ともネーミングセンスが無い。せめて変態吸尻鬼に出来なかったのだろうか。最近のゲーマーは尻への愛着が足りない気がする。
やれ二次元の胸だの。巨乳より貧乳だの。やはり美乳が一番だの。煩わしい。
お前らは胸を盲信するあまり尻への尊敬と畏怖を忘れてしまっているのでは?と小一時間は問い詰めたい。
二次元でも三次元でもそう。美人と呼ばれる人種の胸の形や足の細さ、顔立ちの良さを引き立てているのは紛うことなき尻なのだ。
ツンと張った柔らかな尻。
ほのかに桃色に染まった暖かい尻。
マシュマロのように白く柔らかな尻。
俺はそこにこの世の真理を見出す。混沌とする欲望の中で唯一にして絶対の双丘と一筋の割れ目。無常の世で唯一永久不変の美とも言えるそれを真理と言わずしてなんと言おうか。
おっと思わず語り過ぎてしまった。
閑話休題。
何故ここまで熱心に一人で語ってしまったのか。それは遂に俺がレベル255(カンスト)に達したというのが主な理由である。
ここまで長かった。
ゲームを始めてから3ヶ月弱。経験値1.5倍と一日平均プレー時間20時間を持ってしてもこんなにかかるとは。
しかし、その苦労も今報われようとしている。
カンスト者限定課金アイテム【セカンドライフボール】(¥10000)。説明文には「第二の人生をあなたに」とだけ書かれている。
これだけでは何のことか分からないし、ネットにもまだ情報は上がっていない。
しかし、俺はこれを種族強化もしくはステータス再度振り直しのアイテムだと踏んでいる。値段にしても名前にしても転生系アイテムである確率が高いように思えるためだ。
それに、これを使えば俺は更なる高みに行ける。そう生粋のゲーマー魂が俺に囁きかけるのだ。
さぁ早くこのアイテムを手に取れ。もっと高みに羽ばたけ。
心の声を背に受けながら俺は【セカンドライフボール】を購入した。
勿論親の金で。