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彼方からの呼び声  作者: ごおるど
第二章
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14 実技試験?

年内最後の更新となります。


 




 ようやく気を取り直したらしいレイランドに再び説教された。要するに、騎士団の庇護下に入れば、そこまで警戒しなくとも喧嘩を売ってくる者は格段に少なくなるから、大人しく推薦されろというものだ。


 この展開は予測していたとはいえ、まったくあの馬鹿男のせいで……とティアはもう一発くらい蹴り飛ばしておけば良かったと後悔した。


「お兄さん、推薦を強制させる権限って騎士団にはあるんですか?持ちつ持たれつとはいえ、別の指揮系統を持つ他の団体が一方的に押し付けをするなんて、対外的には癒着と取られかねないですよね。私はありえないと思っていたんですけど、組合側はどういう立場なんですか?」

 騎士団に対しては逆らうな等、何か言い含められている可能性を考えて牽制するように言ったが、ダークエルフの青年は綺麗な顔に人の良さそうな笑みを浮かべた。先ほどと同じ、うさん臭いと感じるほど爽やかな笑みだ。

「ごり押しされるのは珍しいことでもなんでもないよ。ただ、出先機関なんて思われるのは困るので、その時対応した係員にある程度采配は任されているんだ」

「……で、お兄さんはどうするの?」

 レイランドが何か合図を送っているようだったが、青年は肩をすくめた。 

「さっきの騒ぎで実技試験の免除じゃなくて、合格を出してもいいと思ってるよ」

「ちょっと待て!」

「……は?推薦するんじゃなくて?」


 訳が分からないティアと目論見が外れたレイランドが同時に声を上げるが、青年はレイランドの方を完全に無視してティアの方を向いた。

「俺は試験官を務めることがあるから、判断する権限を持っているんだ。あの男は、銅の一。油断はしていたんだろうけど、素人が勝てる相手でもない。代わりに戦ったと思えは十分だ」

「だが、こいつは魔術師で格闘技術は関係ないだろう」

「ちょっと待って。分かるように話して」

 まずは階級の話が分からないと、どうしてそうなるのか理解できない。


 どうせ後から説明するのだからと、合否の判断の前に仕組みを説明してもらった。



 簡単に言うと、点数加点方式の階級制だ。仕事を成功させると加点、失敗すると減点、規定数以上の成果を上げると加点、その他、素行が悪かったりすると減点対象となる。

 階級は大きくは銅、銀、金、白、その中が更に五つに分かれていて、全部で二十ある。最低が銅の第五階梯、最高が白の第一階梯で、銅の第一階梯までは加点された点数が一定に達すると自動で階級が上がるが、銅から銀に上がる時と、銀の第一階梯以上は昇格試験があり、受からないと点数が達していても昇格できない。

 さらに白の階級となると完全に名誉職扱いで、腕前もさることながら、人格までも判断基準とされるために、そう滅多になれない階級だった。

 因みに、登録証はそれぞれその素材の(プレート)なので、一目で階級が分かるようになっている。

 依頼は自分の階級の物か、指名依頼しか受けられない。階級の低い依頼が連続で失敗した時のみ上位階級の者に依頼が出る場合があるが、上位の者が依頼を独占しないように配慮されている。

 この依頼の中には目安として、あるいは行程上必要なものとしての道具や種族、あるいは職業が限定されている物があるので、組合に登録するときも得意の得物やどの程度の魔法を使えるかなどを申告が必須となる。そうした方が、より優先的に仕事を受けることができるからだ。勿論、登録した以上はその技能が一定の水準に達しているかどうかを組合職員が認定する。組合側としても、受けた依頼の成功率に関わる部分なので、なるべく組合員の技能を把握していたいという事情もある。


「銅は駆け出し、銀は中級、金は一流、白は……超一流というか、一人で軍隊を相手に戦えるくらいだね。さっきのは銅の第一階級、もう少しで中級。暮らしが立ち行くだけの稼ぎがぎりぎりできるくらいだ」

 それを簡単に倒したのだから、少なくとも格闘術に関しては及第点を貰えると言う事らしい。だが、ティアが魔術師として登録するのなら、魔法を主体とした実技試験を受けなければならない。

 そう説明されて、ティアは渡りに船と頷いた。


「元々魔素中毒の私が、魔術師でございなんておこがましくて名乗れないと思っていたので、あれで実技試験が終了するなら、それに越したことはないです」

「だから、ちょっと待て!ティアちゃんが格闘で登録するって、無理がありすぎるだろう」

「元々、治療目的だもの。昨夜色々試してみたけど、魔道具やら魔石の補助がないと碌な魔法も使えないんだから、討伐依頼が受けられるとしてもやる気はない。咄嗟に魔法も使えないんだもの、危ないでしょう。勿論、最低限の仕事はこなすつもりだけど、お金を稼ぐことよりも病気を治すことを優先するのは当たり前だと思うけど」

「万が一の時は、その杖で戦うのか?」

 レイランドはティアが持っている杖を見る。魔石が付いているので、その部分は確かに金属部分より耐久性が弱い。だが、魔石だ。鎧部分を思いっきり叩いたとしても、砕け散るような事はないだろう。


「そう簡単に壊れないでしょ」

「違う!そんなでかい魔石が付いている高級品でぶん殴ること自体、許せないというか、心情的に色々駄目だ。お前の持ち物を目当てに襲って来る輩が出てくる。絶対に!」

 断言されて首を傾げる。そんなに高いかな?というのがティアの正直な感想だ。

 金属製の杖はこれだけなので、分かり易く堅そうだからこれを選んだのだが、それ以外の素材で作った杖で、硬度が高いものはいくつかある。そちらの方がよほど高級品なので避けたのだが、ブラックボアの牙と同じように、昔は大したことがなくても今は高騰しているのかもしれない。

 ティアは、暴れたりした時も言いつけどおり大人しくしていた青の方を示した。


「なんのために青がいると思うの?私自身もちゃんと対策を考えているし、そもそも、その杖は使用者登録がしてあるから、盗むのも不可能だよ」

「……は?」

「え……?」


 使用者登録をしてある品は、していない物の倍の価値がある。おまけに、使用者を限定にする魔法は、対象となる物と同等以上の魔力が必要となる為、使いこなせる者はごく少数だった。鍛冶師や細工師等、生産職が使用するものではあるのだが、必要な魔力が多いため、まともな生産職では使用できないのである。

 現状使用されている魔法は、使用者以外が触れると音が出る等が防犯としての効果の限界であり、盗むのが不可能とまでなると国宝級の物にしか使用されていない。


「あー、それはお前の師匠に貰ったのか?登録してもらったのも?」

「そう」

「辺鄙なところで、師匠と二人暮らしって言ってたろう?その杖は買ったものなのか」

「違う。全部自給自足」

「もしかして、その服も……靴も?」

 頷くティアに、レイランドは内心で頭を抱えた。


 少女の師匠が只者でないのは知っていたが、言葉の指し示すところは優秀な……とてつもなく優秀な魔導師であると同時に、生産職と同等以上の道具を作成できる技能を持っていることになる。そうなると、当然もう一つ聞きたくなるのは人情というものだろう。


「もしかして、薬の類も作れる?」

「……どうしてそんなことを聞くの?」

「師匠から教えられて、薬品生成の技能を持っていれば、そちらの方の仕事をあっせんできるよ。ただ、薬は薬で組合があるから傭兵組合(うち)からの出向という形を取らないといけないけどね。あちらは製法を漏らさないようにするため、重複登録不可だから」

 レイランドの代わりに、青年が答えた。


 薬の類は傭兵組合でも大量に仕入れて販売しているし、薬の材料は常時依頼として出しているが、製法が流出すると多くの職人が食いっぱぐれるおそれがあるため、重複登録ができないようになっているのだ。


「でも、それだと中間マージ……じゃなくて、依頼料を中抜きされるだけでこちらに利点はないですよね?」

「薬師の組合は、薬師の組合員の下で何年か修行をして、師匠に認められるようになってから本登録になるから、そういう意味では一長一短かな?」

 薬品をいきなり持ち込んでも、鑑定魔法を使える者が常駐していない限り効果が保証できないので、やたらな品は買い取らない。薬師組合では一定の水準の製品を作成できる事で一人前としているので、組合員が作ったもの以外の薬を流通させることがない。


 ティアが技能持ちとして登録する場合、傭兵組合が身分を保証する形になる。何か失敗したら、傭兵組合側が責任を持つことになる訳だ。なるほど、一長一短だった。


「魔素中毒が治らない限り、私が胸を張ってできると言えることはほとんどありません。治ってから登録し直すと言う事もできるんでしょう?」

「もちろん」

「じゃあ、余計な情報は付け加えないで登録できるのなら、そのままでいいです」


 ティアが青年にそう告げると、レイランドも違う組織の人間である為、それ以上の強要はできないようだ。




 かくして、格闘師として実技試験を合格扱いしてもらったティアは、そのまま座学試験を実施してもらう事になった。






来年1/21が登録一周年となるため、一周年記念として何かやろうと思っております。

つきましてはアンケートにご協力いただきたいです。

詳しくは、活動報告をご覧ください。よろしくお願いいたします。

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