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プロローグ
「──危ないっ!」
突然の衝撃と、誰かの悲鳴のような叫び。ばりばりという轟音、ガラスの割れる音、そんなものが続けて一度に聞こえた。
「雫、しずくっ!しっかりしろっ」
誰か、じゃない。これは、あれだ。幼馴染の静の声。いつもあんまりしゃべんないくせに、なんかいっぱい叫んでる。
なんでそんなにつらそうなの?なんで泣きそうなの。……どうしてここはこんなに暗いの?だんだん静の顔が見えなくなってきちゃったよ。
車の扉が開いて、閉まる音。知らない男の人が何か、叫んだ。走ってくるような足音。
静が怒ってる、叫んでる。でも……もうよく聞こえない。
真っ暗な闇に、雫は飲み込まれた──。