朝日 壱
私の一日は午前6時に始まる。
起きたら、まず身支度を整えるてランニングに行く。これは受験の時に塾の人から勧められてやり始めたことであり、今も続けている。いつか、何事も最後は体力だと、塾の講師の人が言っていた。
家を出て、川沿いのランニングコースを走る。
そして、いつも本を読んでいるところまで来るといったん休憩する。
するとちょうど朝日が昇ってくるのが見れるのだ。
朝日と同時に家々の窓が開き、この世界が動き出すのを見るのが私は好きだった。
今日もそんな一日から始まるものだと思っていた。
だけど、この日は先客がいた。
――――黒瀬君。
初めに彼を見つけたのは私だったから、声をかけようかと迷っているとこっちに気付いたらしく手を振ってきた。
「おはよう、宇佐美」
「……おはよう」
何故彼がいるのだろう? 昨日、ここで話してから一日もたっていないのにまた会ってしまった。
いいのやら、悪いのやら。
「へぇ、お前、ランニングしてんの? 初めて知った」
それはそうだろう。私が朝走っているのを知っている人はほんの一部なのだから。
「黒瀬君こそ朝、走っているんだね」
「あぁ、まあな。で、昨日宇佐美と話したから普段よりちょっと遠めにして行ってみようと思って来たら、お前と会った」
びっくりしたと言って、笑う。
「だから、宇佐美って持久走だけは得意なのか」
そう、私は体育が苦手だ。だけどその中で唯一できるのが持久走。初夏のころにあったマラソン大会もクラスで5位以内に入っていたほど。体育の中でこれだけは胸を張っていられる。
しかし、そのことを黒瀬君が知っているとは思わなかった。
私は地味で目立たないから…
「それはどうも…」
とりあえず、お礼は言っておいた。
いつの間にか朝日が昇ってきていた。