こんなことなら
試験当日――――。
(あ…!思ったより簡単だ!いける)
スラスラ解ける問題に紗千はウキウキしていた。
その後のことを知るよしもなく…。
試験終了――――。
「紗千ーっおつかれー」
「美織もだよぉー」
「どう?できた?」
「うん!思ったより簡単だった!」
「きゃー嘘!私全然わかんなかったー」
こんなふうに2人で話していると…
「!あ、もう4時だ!」
「え?紗千どうしたの?急ぎの用事?」
「あ…えっと…」
美織にはいっても良いだろうと考え、
口を開く――――。
「美織…聞いて…くれる?」
「私、受験終わったら、先生に…告白しようって思ってたの…」
「え!?」
「うん…だから…、ごめん!!行ってくる!」
急いで塾に向かう。
早く!早く!
「…はぁはぁ…はぁ…っ」
ドアを開ける。
「あ、あのっ…、サカナ…じゃなくて、桐野先生いますか?」
「あー、桐野先生なら今日は来てないよ。何で?」
「いやいいです!ありがとうございました!」
(なんで…?先生いつもいるはずなのに…っ
何で?何で?)
すぐに塾を後にし、走った。
いるはずのない道を探して、探して、
見つからないのに走って。
いつしか辺りは紅く夕焼けで染まっていた。
「ここ…どこ…?」
そこはまるでドラマでもよく見るような路地裏。
足が痛い。先生もいない。迷子にもなる。
「もう私…」
そのまま意識はなくなった。
「ん…」
道の隙間から眩しい光が差し込んでいる。
「…あれ、私…」
すべてを思い出した。
「…帰らなきゃ。」
そう言い立ち上がろうとした瞬間。
「痛っ…!」
足の力が入らない。
靴はボロボロだ。
「………」
目からこぼれそうな涙をこらえ、立ち上がる。
あたりの人に聞くが
「桜宮?どこだいそこ。
聞いたこともないけど…」
みんなそう言う。
それほど遠く離れたところだと理解した。
「あ、そうだケータイ!!」
……電波がつながらない。
しょうがないのでとりあえず道を進んでみる。
そろそろ足が痛くなってきた頃だ。
動くたびに足の骨や関節が疼く。
「う…」
しかし体は耐えられずそのまま前に倒れた。
―――――――――こんなことなら…告白なんて決めなきゃ良かった。
紗千はこの時初めて弱音を吐いたのであった。