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まけんな勇者  作者: roon
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4. 便利な世の中

 二人は連泊することを伝え、宿にお金を払うと市場へと繰り出した。


「まずは資金調達かな」

「どうやって稼ぐ?」

「そうだね・・・薬草とか素材を採取してきて買い取ってもらうか、どこか人手の足りない場所で雇ってもらうかが一般的らしいね。素材を加工して自分で出店する人もいるみたいだけど、少数派かな」


 頭の中に存在している知識を引っ張り出しながら、ラールは市場を見回った。何かを採取して売るにしても、普通に市場に出回っているものはあまり買い取ってくれないものもあるため、そのあたりを調査しなくてはならない。ディルアドラスにはそのあたりのことは良く分からないため、いそいそとラールの後ろに付いて物珍しそうにお店の商品を見て回っている。


「(この辺りだと、レゴ草位しか採れないからなぁ。採取だと支出の方が大きいかも)」


 レゴ草は風邪薬や傷薬の材料となる薬草の1つで、採取しやすいため安価で売られている。逆に言えば安く買い叩かれる可能性が高い。市場の価格を見た感じでは、採取して得た金額よりも宿代の方が高くつく。


「(他の都市に移動するか・・・)」


 ケランは内陸の都市であるため、他の大陸に渡る予定の二人が長居するメリットはない。ようやく来れた人里をたった二日で離れるのは名残惜しいが、早めに移動を考えたほうが良いかもしれない。

 そんなことを考えているラールの隣から声が聞こえた。


「あんた、冒険者かい?」


 ふと顔を上げると、ディルアドラスが店長と思しき男性から声をかけられている。


「?」

「違うのかい? それだけ立派な剣持ってるからてっきりそうかと思ったんだが」


 店長は頭を掻きながら、ディルアドラスの腰の魔剣を見遣った。


「私はこいつの連れだ」


 突然ディルアドラスに指を指され、ラールは面食らった。


「ふーん・・・護衛ってワケか」

「違う。相棒だ」

「相棒?」

「ええっと、僕達同郷の知り合いで、昨日この都市に着いたんです」


 ディルアドラスに任せておくとややこしくなりそうだったので、ラールは失礼と思いつつも会話に割って入った。


「そうだったのか。若いのに大変だな、坊主」

「いえ・・・」


 ラールの外見は12歳くらいに見えるため、ディルアドラスといると違和感があるらしい。親を亡くして引き取られた子どもとでも思われているのか、哀れみを込めた目を向けられて、ラールはばれないように溜息をついた。


「ところで、冒険者ってなんですか? 僕達の住んでた所には居なかったので気になって」

「ああ。冒険者っていうのは簡単に言うと何でも屋みたいなものだな」

「何でも屋?」

「冒険者組合ってものがあって、そこに登録しているのが冒険者だ。冒険者組合には様々な人から依頼が来るから、その中から自分に見合ったものを受けて報酬をもらうのさ」

「だから、何でも屋ですか」

「そういうことだ。そこの兄さんなんか、強そうだし向いてるんじゃないか?」

「強くないといけないんですか?」

「いや、強くなくても大丈夫だが、魔物討伐みたいな依頼もあるから、腕っ節が強い奴が登録していることが多いな。魔術師や神官もいるが」

「そうなんですか」


 ラールは感心した。自分が生きた時代はそのようなものは無かった。魔王がいたために魔物の勢力が強く、旅に出る者は少なかったし、魔物の討伐を含め都市ごとに解決するのが当たり前だったためだ。


「(平和な時代が続いたから、旅に出る人が増えたのか)」


 500年前に魔王を倒し勇者となった者は、ラール達がこれまで見た中で最も強く、持っていた聖剣の力も相まって魔王の復活を最も長く抑えていた。それが世の中の発展に貢献したのだろう。


「(勇者の影響ってすごいな)」


 なりそこなった自分とは大違いである。ラールは口元に笑みを乗せた。


「冒険者は誰でもなれるんですか?」

「ああ。なるだけなら登録するだけでいいから、旅をしているやつの殆どが登録している。組合はこの大陸なら全ての国にあるから、ちょっとした身分証の代わりにもなるしな。他所は分からないが」

「便利ですね。登録だけでも、してみようかな」

「坊主がかい? そこの兄さんなら分かるけど、あんたくらいの歳の子ができる依頼はないと思うよ」

「・・・細かい作業は得意なので、何かしらありますよ」


 内心溜息をつきつつ、ラールは店長の言葉をスルーした。


「ま、登録だけなら年齢に関係なくできるから、依頼を見て考えたらいい」

「そうします」


 ラールはお礼を言うと、情報料代わりに店に置かれていたオレンジを2つ買い、店を出た。


「それは何だ?」

「オレンジ。後で冷やして食べよう。冷えてるほうが美味しいし」


 オレンジを持っていた布の袋にしまい、ラールははぐれないようにディルアドラスの手を引いて市場を離れる。


「もういいのか?」

「うん。冒険者組合みたいな便利な組織があるなら、利用したほうが楽そうだし」


 自分で採取したものを売る場合や雇ってもらう場合には、相手と交渉する必要がある。その手間を考えれば、依頼として既に提示されたものを引き受けたほうが楽だ。


「冒険者組合、行ってみよう」

読んでくださり、ありがとうございます。

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