ACT3
微かな消毒液の匂いがする保健室.........
身体からプスプスと煙が出ている高原をベッドに寝かせる。
ついさっき高原はスティンガーミサイルまともに食らっってノックアウトされてしまったのだ。
フゥ、と溜息をつくといきなり周囲の風景が変化すし、静止世界に入ってしまった。
その時、北東で何かが吹き飛ぶような轟音が聞こえた。
急いでこの前貰ったこの世界でも使用可能なデバイスを開いて学園の地図を開く。
方角からして場所は体育館のようだ。急いで走って行くとデバイスが振動する。
すぐさま開くと学園長の声がする。
「統軌君。聞こえてるかい?ここはマインドを使った方がいい、急いでくれ。」
切れた後すぐに走りながらモーションを行い、
「来い!オルタ!」と結晶を砕く。
すると昨日と同じ、鎧姿になる。
しかし心なしか普通に走っているよりこちらの方が速く感じた。体育館までは普通走って4分は掛かるはずだがたった1分ちょっとで着いた。すると体育館の中には固まったままの教師と生徒たちがいる。
しかし壇上には幼馴染みと火の玉みたいな奴が対峙している。
火の玉の方はおそらくファントムだろう。怪しく揺れる火の玉をデバイスでアナライズするとフレイムボールと言う名前やら特徴やらが表示される。
この機能は昨日学園長と話している時に渡された彼の破片をデバイスにセットしたことによってできるというのだ。
どうやらフレイムボールとやらもこちらに気付いたらしく火球を放つ。
オルタのスピードにも劣らない速さでこちらに飛んで来た火球を昨日使用した雷の魔術で消し飛ばす。
すると綾花はこちらに気付いたようでアイコンタクトをとって来た。
小さい頃はサインの送り返しなどをよくしていたので簡単に分かった。
『左の方を攻撃するから右の方をお願い』
それに対して『O.K.』と返す。
次の瞬間、綾花の右手から閃光が走る。持っていたのは見たことの無いシルバーカラーの銃だった。
銃弾が敵の側面に当たると同時にオレは壇上へと跳び、フレイムボールの体をムラマサで切り裂く。
途端にフレイムボールの体はポリゴン片の如くバラバラになって消え去り、その後オレのオルタも解ける。
綾花からは「統軌君、今の何だったの?というか、何であんな格好してたの?」と聞かれた。
「後で説明するからまず元の世界へ戻ろう。」
とオレが言うと、「わかった」と言ってくれたが、どうしようかと悩みながらクロスタイマーを握って帰ろうとした瞬間、体育館全体を揺るがすほどの咆哮が響く。
またオレのデバイスが振動し、開く。
「もしもし、今すぐ裏庭に向かってくれないか。大変なことが起こっている。あ、それと奈々瀬君も連れて行ってくれ。」と学園長。
「綾花を危険な所へは連れて行けない。」と返すが、
「彼女もマインドコネクターだ。」と言われた。
「嘘だろ」とオレは言ったが否定の言葉は返ってこない。
「とりあえず二人で早めに行ってくれ。」と言って電話が切れる。
「どうしたの?私は大丈夫だよ?」と言ってくれたがどうしても大丈夫だとは思えない。
「お前のことは守ってやる、だから一緒に来てくれ。」
とオレは頼んだ。本当は来させたくないがここにオレがいない間にファントムに襲われたらと思うとこのほうが安全だと思った。
「わかった。絶対守ってね。」と言ってくれる幼馴染みに心の中で「ありがとう」と言う。
すると綾花は「今さっきの格好って私にもなれるの?」と質問してきた。
「ああ、なれる。俺の言ったとおりに動いて。」
と言い、説明を始めると、綾花は言ったとおりに動き、最後に結晶を優しく手で包み込み、
『アイゼン。』
と言って砕く。すると光が綾花を包み込み、光が消えるとそこには羽衣を纏っている彼女とその瞬間を息を呑んで見守るオレがいた。
物陰から見ていた赤髪の少年がいることにまだオレは気付いていなかった.........