ACT2
寮に帰って風呂に入り終えたオレはベランダに立って涼んでいた。
無数の星の瞬きが夜空をいっそう綺麗に見せる。
オレはそんな星明りの下、Century'sの“心の在り処”を聴いているとベランダの扉が開き、
「統軌君、どうしたの?」と青のパジャマ姿の綾花が隣に並んだ。
「ああ、涼んでいただけだよ。」と言うと、安心したように笑顔を見せて、
「わかった。冷えないようにね、おやすみ。」と言って、部屋の中に入っていった。
入っていくのを見た後、胸元に下げてあるクロスタイマーを見る。
宝石部分の中の小さな光の粒子は夜空の星の如く輝いている。
オレは学園長が突然言った静止世界について考えながら部屋に戻った。
ベッドの上で横になると俺の意識はそのまま闇に飲み込まれていった.....................
~翌日~
目が覚め、デジタル時計を見ると5時30分だった。
早く起きすぎたか。そう思いながらも顔を洗い、台所へ向かうと、朝ご飯とお弁当を作り出す。
6時過ぎ、両方を作り終えた後、デバイスを開いて画像ファイルから一つの写真を表示させる。
小学六年生になってすぐの時に撮った最後の家族写真だ。
しばらく眺めていると急にデバイスが振動する。
どうやらメールみたいだがまたしても知らないアドレスからだった。
内容は、ただ“気をつけろ”とだけだった。
その時、「おはよう」と声がして振り返ると、どうやら綾花が起きてきたようだった。
おはよう、と返し、朝食を並べて談笑しながら一緒に朝食を楽しんだ。
それにしてもさっきのメールは何だったのだろう、そう考えながらオレは一時限目の体育?を受けていた。
何故体育?なのかと言うと体育教師が奥村咲という名の女だからだ。しかも背中にあの有名なロケットランチャー、RPG-7を担いでいる。
走っている時に最後尾のヤツがロケット弾に吹き飛ばされ、もうすでに3人が保健室送りになっている。
「いや~しかし奥村にも滅入るよな~」と言って後ろから近付くのは高原だった。
「去年もあんな感じだったのか?」
そう俺が聞くと、「去年よりもスパルタになった。でもまあ真打ちが出てないだけマシだな。」
と言いながらペットボトルの水を飲む。
「真打ちってなんだよ?」とオレが言うと、
「去年はM60を使っていたな。切り札って感じだな。」
「おいおい嘘だろ?」
「嘘じゃねえんだって。あの女M60片手で扱いやがってよ、筋肉どんだけついてんだって思ったぜ。最早バケモノだな。」
そう言った高原の後ろにもう一人の赤髪がゆらゆらと揺れていた。
「誰がバケモノだって?高原。」声の主は額に怒りマークを浮かべた奥村。こちらへどんどん近付いてくる。
「成瀬、また、生きて会おうな。」と高原は目に涙を浮かばせながら震えている。
「高原、覚悟はあるんか。」と奥村が睨みを利かせた瞬間、高原は全力で逃げ出した。
しかし回り込まれてしまう。
「高原は去年もウチのM60に世話になった第一号だったな。」
「何のことやら。」と言う高原も震えが止まらなくなっているようだった。
「今年はちょっと趣旨を変えてみたんだ。」と言いながら後ろに手をやると、左右から二つの箱が出てきた。
今の出し方は22世紀の猫型ロボットもビックリするだろうな、と考えながら見ていると、今度はRPG-7を構え「バーイ」と言いながら無情にもトリガーを引く。
高原を追う一つの弾頭。ギリギリで避けると後ろで爆風が起こす。
さらに高原を8つの影が追う。
その正体は箱から出てきたミサイルだった。高原を完璧にマークしたそれは形状からしてスティンガーミサイルだと分かった。
高原に南無阿弥陀仏、と呟くと次の瞬間。辺りに爆風と閃光が迸り、高原はダウンしたのだった。
「成瀬、高原を保健室に連れて行くように。」
と言われ、オレは高原を担いで保健室へと急ぐのであった............