ACT1
ファントムと呼ばれる怪物との戦いが終わった。
そしてオレは今綾花と一緒に帰路についていた。
あのことを話そうか話さないかで悩む。流石の綾花でもこの話はオカルトすぎる。そんな事をモヤモヤ考えている内に寮に着いた。玄関を開けて中に入ると、いきなりデバイスが振動した。
「どうしたの?」と綾花が聞いてくる。
「電話みたいだけど知らない番号からだ。」
出てみるとオレをこの地に戻らせた元凶の声がした。
「成瀬君、今すぐ学校に来れるかというか来なさい。」暗沢の声だ。
「ムチャ言うんじゃねぇよ。」
すると暗沢は「君が体験した世界について話があるんだ。」
何故コイツがその事を知っているんだ、と疑問を抱くが、
「分かった、今すぐ行く。」
と言って電話を切る。
バッグを玄関に置き、綾花に「行ってくる」とだけ言い、学園までの道を急ぐ。
昨日ぶりの大扉を開くと、こちらに向かって何かが飛んで来る。
ダガーだ、一瞬の判断ではどうしようもない。目の前のダガーが飛んできて.........そして止まる。
目の前のダガーは宙に浮いたままだ。ここは今さっきまでいた世界だった。前から笑い声がして見ると、
「いやいや、すまないね。」と言う学園長に宙に浮いたダガーを手に取って投げ返すと、暗沢の前でキィン!という金属音と共に閃光が走る。
暗沢の両手には黒のダガーが握られていた。
「危ないな、成瀬君。」そう言いながら、怪しい笑みを浮かべる学園長。
「どの道、止められていただろう。」とオレは放つ。
そう、奴はオレの投げ返したダガーを片方に持ったダガーで威力を相殺し、空いているもう片方の手でキャッチしたのだ。
「そうだね、じゃあ早速だけど本題に入るよ。」と暗沢。
すると机の上に青い宝石で作られた十字架のペンダントを置く。
「これはね、特殊な技術で出来た産物でね。名をクロスタイマー、時間の十字架と言うんだ。次にこの世界について説明しよう。」と言いながら椅子から立ち、手を後ろに組むと、口を開き、
「この世界は静止世界、サイレンスワールドと言う。この世界に入る為にはこのクロスタイマーが必要になるんだ。」そう言ってそのクロスタイマーを投げてきた。
手に握るとその十字架からは不思議な力が流れて来る様であった。
「それを握りながら念じることで元の世界との行き来が可能できる様になる。憶えておく様に。」
と言い、俺に背を向けた。
首にクロスタイマーをかけ、手に握りこみ、念じると周りの空間が動き始める。
「質問いいか?」とオレは言うと暗沢はこくりと頷く。
「サイレンスワールドって世界があることは分かったけど、その世界はこの世界と何の関係があるんだよ?」
すると暗沢は、
「君に与えたクロスタイマーはこの世界と静止世界に干渉を与える事が出来る物だ。そして、静止世界はこの世界で干渉を起こされた瞬間に入ることが出来る。いわばこの世界の時間を止められた状態でもう一つの世界を具現化させているような感じだね。そして、静止世界で付けられた傷はそのまま元の世界に上書きされると言う訳さ。」
とても理解が出来そうにない説明だった。
「それでアンタがここにオレを呼んだ理由は多分こうだろ、今さっきオレが戦っていた所を見てこの世界を守って欲しいと言う事だな。」
「That'sRight!」
オレはこいつに会った事を一生後悔するだろうと思いながら、今知っている情報を教えてもらい帰路に着く頃には空にうっすらと星が輝き始めていた。