ACT1
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転校生が来た次の日、オレは久しぶりに両親の墓参りに行った。
両親は最初の方こそ行方不明ということになっていたが、やがて半年が経ち、生きている可能性が0に等しくなった為親戚の人たちでこの墓を建てた。
そして学園長、暗沢と初めて出会ったのが両親の葬式での事だった。
ー五年前ー
「統軌、早く線香立てて来な。」オレはじいちゃんの言うことを全く聞かなかった。その時のオレは両親はまだ生きていると強く信じ込んでいた。
「イヤだ。父さんと母さんはまだ生きてるはずだ。線香を立てたらその考えを自分で否定したことになる。」
周囲の大人たちは口を噤む。なぜなら皆、両親がもう死んでいると思っているからだ。
それでも、オレの前では簡単に“死んだ”とは言わなかった。
だが、ただ一人オレの目の前でこう言った、
君の両親は死んでしまったんだ、と。
その男が暗沢だった。オレは奴の後ろで泣いた。
この墓の前にいると思い出される。あの頃の記憶全て。
「やっぱりここにいたんだ。」後ろから声をかけられる。
「早くから家を出ていったからもしかして、って思ったけど......」隣で桃色のショートヘアを揺らしながら綾花がはなしかけてくる。
「ゴメン、もしかして出掛ける時に起こしちゃったか?」
「ううん、違うよ。一緒にお墓参りしようと思って早めに起きたんだけど先に行かれちゃった。」
綾花は微笑みながら言う。
「さて、せっかく来たんだから一生懸命掃除しよ。」
綾花と話しながら掃除を続けていると、どこからか物音がした。
何処だろうと辺りを見回すと、
「あれって、一ノ瀬君じゃない?」綾花の指差す方向には、革ジャン姿の転校生がいた。
「確かに、転校生の一ノ瀬だな。」
両手を合わせ、墓の前で立つ転校生の雰囲気はどことなくオレと似ているような感じがした。
一ノ瀬に声をかけようとして、近付く。
すると一ノ瀬が振り返りながら銃口をこちらに向けてきた。
「おいおい、いきなり銃口を向けるなよ。」オレがそう言うと、
「なんだ、成瀬か。」と言いつつ一ノ瀬はホルスターに銃を収める。
「なんでオレの名前を知ってる?」
「クラスの人間の名前なんて一回見れば憶えられる。」
「へえ、スゴいな......」そう言ったオレを無視し、一ノ瀬は帰っていった。
「じゃあまたな。」と背を向けたままの転校生に言い、両親の墓へと戻る。
「何話してたの?」綾花の問いになんでもないと答え、
「早く帰ろうぜ。腹減ってさ。」
二人して手を合わせてから帰路に着く。頬を撫でる春風がいつもより心地よかった。