act1
みなさん初めまして。今回初めて投稿しましたBlackKnightです。
初めてなのでちょっとおかしな点もありますが、どうぞお読み下さい。
オレ、成瀬 統軌は前の学校から(半ば強引に)転校させられ、とある学校へとやって来た。
―――黄昏ヶ丘学園。
転入届と一緒に渡された冊子を読むと六年前に出来たらしく、やはり最新式の設備も揃っているらしい。 のだが。
敷地内に一歩踏み込んだ瞬間から聞こえるのは数々の銃声、時々爆発音。
「………普通、学校で銃声や爆発音なんて聞こえないだろ………」
だがこれといって他にやる事もないので、今は学園長に会う他ない。
取り敢えず正門に向かうと、丁度出て来た一人の女子生徒が話し掛けてきた。
「君………見かけない制服だけど、ウチの学校に何か用事でも?」
前の校長は“学園長に転入届を提出すればいい。”とだけしか言われてないし、そもそも学園長室が何処か知らないしな。聞いてみるか。
「あぁ、転入生だ。 学園長室に行きたいんだが………」
「転入生?私は奈々瀬綾花、よろしくね」
奈々瀬………何処かで聞いた事がある様な………!
「綾花だったのか。 なぁ、オレの事は覚えてるか?」
そう言うと彼女―――いや。オレの元幼馴染みはこくりと頷き、
「忘れる訳無いじゃない。 成瀬くん………ううん、統軌君」
あの頃と全く変わらない笑顔で微笑んだ。
―五年前―
オレ達はあの日、誰もいない公園で話し合っていた。
「本当に…行っちゃうの……?」
綾花が俯きながら言葉を発する。
二人ともまだ小学生だった頃。 当時起きた謎の爆発事故によって両親が死に、オレは遠い地の祖父母に預けられる事になっていた。
「ゴメン………でも、行かなきゃダメなんだ………」
泣きそうになるのを必死で堪えながらそう言ったのを今でも覚えている。
「じゃあ………約束して。 絶対に………また戻ってくるって」
あの頃のオレは何の考えも無しに言ったのだろう、「分かった」と。
その後、綾花と二人。 誰もいない公園で暫しの間、静かに泣きながら抱き合った。
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しかし、引き取ってくれた祖父母も去年に他界した。
別の親戚も引き取りたいと言ったが、オレには両親と祖父母が遺してくれた遺産があるし、何より五年前の“約束”があったから、この町に戻る事を決意したのだ。
「約束、覚えててくれたんだ」
「ああ………少し時間がかかったけどな」
暫しの無言。
急に嬉しそうな表情から少しむくれて、
「何か言う事があるんじゃない?」
と言い始めた。何か言う事………?
………ああ、確かに。 言う事があったな。
「ただいま」
「お帰り、統軌君」
オレも綾花も言ったのは何気ない一言の筈だ。 なのに彼女のその言葉は、オレを何処か暖かい気持ちにさせてくれる。
………
………
………危うく本来の目的を忘れるところだった。
「綾花、そう言えば学園長室に行きたいのを忘れていた………」
「そ、そう言えばそうね。 じゃあついて来て」
迷路の様な学園の中、彼女の後をついて行くと少し大きな扉の前に着いた。
「ここが学園長室よ、ちょっと待ってて」
綾花が三度扉をノックすると中から、「どうぞ」と声が返ってきた。
「失礼します、転入生を案内して来ました」
綾花に続いて中に入るとそこには20~30代くらいの年の男がいた。
「ご苦労様だね奈々瀬君。 君は少しの間、外で待っていてくれないかな」
綾花は学園長に言われるままに廊下へ戻って行く。
「初めまして、だよね。 私がこの黄昏ヶ丘学園の長を務めている暗沢 宮彦だ。 よろしく、成瀬統軌君」
「どうも………」
握手を求められたので取り敢えずしておく。
学園長と二人きりだ………この際、気になる事を聞いておくか。
「………幾つか質問がある。 答えてもらいたい」
「おやおや、見かけによらず積極的なセリフだねぇ。 いいでしょう、私が答えられる事であれば何でも答えようじゃないか」
学園長は飄々とした態度でいる。
一つ目、学園内から聞こえる尋常ではない音について――この学園では“常に上を目指して行く”という教育方針のもと、護身術や銃火器の扱いを訓練するカリキュラムが存在する。 ちなみに学園外には外周を囲う塀の特別な防音機能によって銃声や爆発音は一切漏れない様になっているそうだ。
二つ目、学生は皆武装しているのか――答えはYES。 各々が専攻する武器を決め、各自で持っているらしい。 学生同士の喧嘩になった時に使われない自信でもあるのか?と思ったら皆防弾・防刃仕様の服だから大丈夫らしい。 おい学園長、顔は守れてないぞ。
最後に三つ目、何故オレを学園に入れたか――ただ単純に俺が良い人材だから。 その程度の理由で他人を勝手に自分の学園に転入させるのだから多少怒りが湧く。
だがその怒りもすぐに引っ込める。
何せ前の学校は校長があの状態なら戻ったところでもう一度行って来い、と言われるのが関の山だろう。 それにこれから行くアテも無い。
「分かった………この学園に入る」
両親に続き、祖父母も亡くしたオレは親戚にもかなり迷惑を掛けてしまったし、これ以上オレの事で迷惑を掛けたくはない。
無言。
いきなり学園長に綾花を連れてきてほしいと言われたので外にいる綾花を呼ぶと、学園長の口からとんでもない台詞が出て来た。
「成瀬君の部屋だが奈々瀬君と一緒の部屋でいいかな?」
………何を言ってるんだこの人?
「成瀬君と同じ部屋って正気ですか学園長!?」
正直、オレも同意見だった。
しかし口に出すつもりは無い。 何人か見た事はあるが、この手の人種には幾ら言っても暖簾に腕押し、糠に釘。 無駄な事くらい一目瞭然だ。
「いいじゃないか!うら若き少年と少女が同室だなんて青春ド真ん中な話だろう?」
この学園長、顔はマジメそうだが頭のネジが少々抜け落ちているのではないかと思う。
「いいねぇ、青春を駆け抜ける少年少女の愛のメモリー♪うん、いい話になりそうだ!」
目が幻覚を見る麻薬常用者のそれに近付いている。 あ、トリップし始めた。
前言撤回。ネジが少々抜けているどころではない、何か本格的な末期症状を迎えているらしい。
学園長が幻想の世界に耽っている間に帰ってしまおうかと考えても見たが、帰り道どころか入る寮すら知らない。 よって、今ここでこの学園長を現実に連れ戻す事に決めたのだ。
「学園長、起きて下さい」
少し強めに肩を掴んで揺らす。 すると目は元通り正常に戻る。
「あ~、すまない。 少し考え事をしていたんだ」眼鏡の位置を直しながらそう言うが、普通の人間は考え事だけで脳内トリップ出来るのか?
「あの………学園長?本当に私たちって同室なんですか?」
綾花がオドオドしながら聞く。
信じられない気持ちは分かる。 どんな女子だっていくら幼馴染みと言えども異性を同室に入れるなんてしない。 したがらない。
だが学園長は無慈悲に告げる。
「YES。 君たちって幼馴染なんでしょ。 それぐらい平気でしょうに」
学園長、アンタには一般常識と言う物が無いのか。
というか何でコイツはオレ達が幼馴染みだという事を知っている?
「ハイッ、この件はもう終了! 成瀬君のクラスは2-Bだ。 明日から授業始まるから忘れ物はしない様に。 入学届はその机に置いておいてくれ。 それでは私は仕事が残っているのでこれにて解散だ」
強引に学園長室から締め出されたオレ達2人は仕方無く学園長室を後にするのであった。
~一方その頃学園長室~
「面白い子だね………楽しみになってきたよ」