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刻が迫るまでに  作者: 神城。
序。
4/5

三。(奏多)

再編しました。

メールが来た。

良く見れば一斉送信で複数名に送られている。

タイトルは簡潔に、『鎮守依頼』とあり、明日の工程が大まかに記されている。

日程等に問題は無いから、OKと即返して待つ。


メールはいつも簡潔に。慣れていない場合には解りづらいこの上ないだろう。

送り返して数分が立つと今度は電話の着信音が響く。

「奏多、明日の放課後に最小単位。こちらは周防・土岐」

学院から、2名の学生が随行すると言うことか。その情報を簡潔に与えてくれる。

「土岐?」

まさかと言う思いが駆け巡る、単独で来たのだろうか。

「南里朱の鳥分家土岐の次男、神楽が狙っている獲物」

どうやら、気苦労で終わったらしい。南の大陸、南里からなら西は自由に渡航できるし身の危険性もない。

東にもそういう家があるから肝を冷やしたことは口にするまい。気づかれているだろうが。

「情報の種類は?」

「学院は下部組織」

やや方角を間違えたような返答がくるが、それはしたほうが悪いといわれている。

学院は協会の下部組織だから協会に籍を置くものが調べつくようなこと自体が伝わってない可能性が高い。

つまり言いたいのはそういうことだろう。

学生よりも悠に情報を握らせた状態で保護者としてついていき、彼らの身を案じる。必要になれば動く。彼らの行く先が間違っているようであれば修正し、正しく導くという、保護者のほかに教育者と言う意味も含まれている引率制度。

面倒だが死人が出るよりはましだと言う考え。学院は東や北を嫌うが、実は協会は主に東に依存していると言う現状。

学院に目をかけて踏ん張らせていても、状態を甘く見て何も努力しない判断に打つ手なしと援助打ち切りを下した人間はことのほか多いということを、彼らは知る由もないだろう。

知ることになるのはあらゆることから手が引かれ、全ての事柄が手を打つには遅すぎる状態を迎えてからだ。

南里の土岐に目をつけたとなると、周防のほうが厄介ということだろう。故に、こちらの最少人数に土岐を盛り込み周防を向こう側へやらねばならない。

それを周防が素直に了承するかどうかだ。面倒なのはそこだろう。

「神楽が慕っている纏の案という名目にすれば4-4でいける。我等はお金で雇われているのではないのだから」


神楽は依頼時の正式ルート。つまり上位組織を介して接触しなかったため、接触された各家には上位組織から厳重注意、謹慎処分、罰則指令として神楽が所属する神杜家の依頼を優先順位第一位に定め行えと指示してきた。

つまりこの依頼は、金銭雇用ではなく罰則雇用になる。上位組織からは接触時から4年と1年の保障期間で設けられている分、目的未達成でも破棄できるのがありがたい。

この5年と言う歳月が罰則として定められている。その間一切の金銭は利益として発生しない。経費だけが落ちていく。

東の上位組織はその間、西の協会に恩を売ることを忘れてはいない。

東の各属性代表家が無償で5年間奉仕活動に当たるのだ。これを返せない恩として受け取らないはずがないだろう。

ただでさえ、西は東を嫌悪している認識のほうが強い。それが実際は東に頭を下げて術師を工面してもらっているのでは、汚名もいいところだ。


「確認する。明日放課後学院裏口、作戦指揮彩野、偽装案発案纏、上級より徹・樒・纏・渚・奏多・彩野。学院より周防・土岐」

「問題なし。纏・奏多・彩野・土岐と徹・樒・渚・周防」

発案者と周防を別のグループにしてもいいのかと一瞬頭をよぎったが、それではすすめなくなってしまう。

霜月はあくまでも氷の支配下にある。つまり、風と水を合成したものと、氷そのものを媒体にするしかない。

纏と彩野は共に動かなくてはならないし、渚は単独行動が可能になる。彩野自体が土岐と動くことを選んでいる以上、それ以外の組み合わせはない。

「分かった」

そこで通話は途切れる。こちらから切った形になるのか。

最後まで思考を読まれていたような気がするがそれも仕方がない。

これを彼らに伝えることをしなければならない。彼らが固まっていてくれることを願うのみだ。


「纏?」

運よくというか、タイミングよくだ。この場合。

通話が終わったと思ったら即別の番号から着信が入る。表示名はさっき話に挙がっていた人物だった。


「うん。奏多。どうなっているのか聞いている?」

周防神楽が懐いている人物。柔らかな癒しのイメージだとかいっていたような気もするが、全然そんなことはない。

目的のためになら手段を選ばない。今回は完全に金銭すら発生しないが、神杜に恩を売っておくには必要だと思って割り切っている位だろう。

「明日放課後学院裏口。采配彩野、偽装案纏、徹・樒・渚・纏・奏多・彩野、学院から周防・土岐で」

一度そこで区切る。相手もメモをしていることだろうから。

一度に全部言うと自分でもメモが取りきれなくて厄介だ。


「土岐?東の?南の?」

「南の。次男坊が即刻周防に目をつけられた。明日はそいつがくる。纏が案を考えたようにすれば周防はいうことを聞くだろうから。組み分けは一応いうと、土岐・彩野・奏多・纏と徹・樒・渚・周防の4-4」

「霜月をやりながら、周防から土岐の力をごまかすやり方を伝授ってことでいいの?」

「そうなるな。今夜中に霜月攻略の情報が送られるはずだから、それを元に立ててもらって周防に説明してくれないか?」

纏も分かってる。自分が何故か周防に懐かれているということを。それが一番面倒なことでも、諦めて付き合ってくれている。

最初の接触時に拒みきれなかったのが悪いのだから。皆そう思ってる。


何か報酬が出るのなら、彼にこそ功労賞を上げたいものだが、上位組織はそのとき一番輝いた人物にしか渡さない。前回は徹で今回は渚だろう。属性が場所攻略に一番適しているというそれだけの理由で。

彩野には学生という面を考慮して表向き保護者役がつく。そのため、何か功労賞に値すべく行動があったとしても、それは全て指導が良いということで保護者役に与えられる。

それを纏にしている。だから本来ならば報酬の発生しないこの依頼でも纏は功労賞というものを間接的に手にしている。

これがある程度回数を重ねると、年度ごとにさらに報酬が増える。神杜家との契約による経費や報酬は出ないが、上級組織から経費及びその功労賞等の賞与が与えられる仕組みだ。

学園の優先枠で身柄を拘束されているとはいえ、必要最低限に上位組織が抱える依頼をこなしていけばそれで充分だ。

尤も上位組織もまた複雑な面持ちだろう。東の組織から恩恵を受けつつ西の術師に仕事を回さないことには西の術師レベルが落ちてしまう。

だが、単体で挑むことの出来るような人物は限られている。

だから結局受け入れざるを得ないんだ。現状。学院からの卒業生は質の劣化がすでに問題になっている。

だからこそ、学園・学館にはがんばって欲しいところだ。あそこはたぶん大丈夫だろう。


「わかったよ。後で彼女と話をしてみる。今回は僕の力だけじゃ進められないからね。その布陣にするってことは恐らく有能なんだろうね、学院には勿体無いくらいの術師」

大体話すことは終わったと電話を切ろうとすると、部屋の隅からがたごととFAX機が唸っていた。

物はやはり、霜月のもの。先ほどの大雑把なものとは違って、注意すべき点など詳細がそこに記されていた。

「纏。今詳細がきた。いつも押し付けて悪いが上手く周防を騙してくれ」

「仕方ないね。代わりにそれ以外の一切の手間はそちらに押し付けるよ?じゃ、また明日ね」


霜月攻略。

なんてことはない。名は体をあらわす、そのままだ。

氷属性の遺跡で、火・地属性は半減、水・風属性は3/4に。魔物はいないとされていて、門を条件通りに示せば

中へ入ることが出来る。

それが水と風の複合魔法である氷か、純粋な氷属性の魔術である必要がある。

水は彩野、風は纏、それぞれの得意魔術を合成し、氷は渚の専売特許だからこそ、片方のPTを任せることが出来る。

それ以外の属性を当てた場合。それが対反射作用を持っているトラップが仕掛けてあった場合。術者にきれいに跳ね返る。

反論を許さず追尾機能がつけられているものも中にある。

つまり、属性や性質を知らずに門を力押しで進もうとするものの先には死しかないという状況が作られている。


幸か不幸か、学院は属性を問わず教えている。

故に学院の生徒は属性に特化したものが非常に少ない。それを補助するかのように、学園の生徒は基本的に属性に別れている。

主として学ぶ属性を定め、それに関連する属性について学ぶ、それが学園のスタイルだ。

同じ大陸にもう一つ学館があるが、あれは攻撃系・補助系・錬金術系と系統術に分かれている。詳しいことは知らない。


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