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刻が迫るまでに  作者: 神城。
序。
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序。(土岐雅也)

再編し直しました。

見上げた空はどこまでも青く、地表はひび割れている。乾燥した大地は生命の限界を悟っていた。

少し人里から離れただけでそこは、人のいるべき場所ではなかった。


彷徨った挙句の現状は、仕方が無いと諦めるにも等しい。気づくのが遅く既に標的にされていた。


捕縛及び死滅対象の人害たる異形の者が目の前に迫る。大地を蹴りぎらつく目で自分を捕らえる。

食われると、もう死ぬほか無いのだと諦めて目を瞑った。願い叶うなら、一息に。

それが最後の祈りだと信じて疑わなかった。


ただ、現実は少し違うらしい。

襲い掛かってくるはずの獣は、宙に浮いたときと同じ四肢を伸ばした状態で真下に落ちて宙に浮いて止まる。

無色ではなく、はっきり水色と認識できるその透明さを誇った鋭い槍が、獣を串刺しにしている。

獣もまた、体内に埋め込まれた核を貫かれたようでピクリとも動かない。

獣の形が徐々に小さくなり、最後核が残ってピキ…と、音を立てて砕けたと同時に槍も姿を消した。

そのとき初めて周囲に人の声がするのを知る。


遠くから人を呼ぶ声だ。

耳を澄ましていると、かすかにだが聞こえる。


『水……瀬………』


声が聞こえてくる方角がやや分かる。その方向にそういえば人里があったなと思い出す。

比較的近いところから返される声があった。


『今行くー!』

若い女の叫び声が響く。へたり込んだ腰を上げて立ち上がりその姿を見ようと気力で立ち上がる。

見てはっとした。纏った服装はブレザータイプの制服。この周辺では有名な学校のものだった。


人害たる異形の者達を葬るための術師育成機関の1つ。

私立永和学院。広大な敷地の中に学園都市として必要なものが建てられているため、永和学院都市と呼ばれる。

幼・中等部はセーラータイプを、初・高等部はブレザータイプを学院の制服として採用していることから

年齢の把握がしやすいとも言われている。確かにそうだ。

ブレザーということは小学生か高校生。つまり可能性としては彼女は永和学院の高等部所属ということだ。


水瀬。


それが恐らく彼女の名前。

彼女の姿が遠目にも確認できなくなってから、足元を見る。

槍があった場所に透明なものが落ちていることに気がつく。水ではないようだ。摘んでみると持ち上げることが出来る。

弾力があって崩れることのない不思議な物体だった。持ち物をあさってビニール袋に慎重に保存する。


一定の弾力があって、つまんだら壊れてしまいそうな外見なのに不思議な感触だった。

それはおそらく。



彼女が残した槍の欠片。

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