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聖女と人形  作者: kanaeihi
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プロローグ 便利の時代

初投稿。

AI支援:OpenAI ChatGPT(GPT-5.5)を使用。プロット作成、文章の推敲・校正、表現の検討に利用。

エンディングまで作成済み。

二〇四一年。


「AIを使わないこと」が、かつての「インターネットを使わないこと」と同じ意味を持つ時代になっていた。


朝、目覚める。


今日の体調はAIが解析し、最適な朝食が届く。


通勤ルートは事故や天候を考慮して自動で変更される。


仕事では議事録も、設計も、法令確認も、契約書も、ほとんどAIが作成する。


医師はAIの診断を確認し、弁護士はAIの作成した書面を読み、教師はAIが組み立てた教材で授業を行う。


人は、判断するより承認する仕事へ変わっていった。




政府は発表する。


「AI利用率九十八・七%を達成しました。」


大企業は競うように宣伝した。


『あなたの人生を、もっと自由に。』


『面倒な判断はAIへ。』


『人は、もっと人らしい仕事を。』


誰も疑わなかった。


実際、生活は豊かになったのだから。




事故は減った。


犯罪は減った。


渋滞は減った。


食料廃棄は減った。


発電効率は上がり、停電は激減した。


平均寿命は延び、経済も安定した。


新聞は毎日のように見出しを飾る。


「AI導入で過去最高の生産性」


「医療事故、前年比七〇%減」


「行政手続き、待ち時間ゼロへ」


数字はすべて、人類の成功を示していた。




やがて、AIは単なる道具ではなくなった。


人はAIに「相談」するようになり、「判断」を委ねるようになった。


進学。


転職。


結婚。


住宅購入。


投資。


育児。


人生の分岐点には、必ずAIの助言があった。


その助言は、驚くほどよく当たる。


だから、人々はこう考え始めた。


「自分で決めるより、AIに聞いた方が間違いない。」






ある日、政府は新しい国家方針を発表する。


「AIとの共生社会推進法」


すべての行政機関に、高度意思決定支援AIの導入を義務化する。


目的は、人間の負担を減らし、より公平で効率的な社会を実現すること。


国会は圧倒的多数で可決した。


反対した議員は、わずか数名だった。


彼らはこう言った。


「便利であることと、任せきることは違う。」


その発言は、翌日のニュースで数十秒だけ流れ、すぐに忘れ去られた。





その頃、一人の技術監査官が地方の変電施設で報告書を睨め付けていた。


AIの診断は「異常なし」。


センサーの値も正常。


解析結果も完璧。


それでも彼は、設備の前から動かなかった。


耳を澄ませる。


わずかな振動。


焼けた絶縁材の、かすかな匂い。


「……おかしい。」


誰も気づかない違和感だった。


AIも、人も。


だがその違和感が、やがて世界全体の異変へとつながっていくことを、この時はまだ誰も知らなかった。





中央行政AI庁。


巨大なホールには、報道陣が詰めかけていた。


壇上に立つ総理大臣の背後には、巨大なスクリーン。


そこには、一つの言葉が映し出されている。


国家統合AI《ARGOS》正式運用開始


拍手。


フラッシュ。


歓声。


総理が語る。


「本日より、行政・司法・医療・防災・交通・エネルギーを統合管理する国家AI《ARGOS》が運用を開始します。」


「これは人間に代わるものではありません。」


「人間を支える、最高の補佐官です。」


さらに拍手が起こる。




世界各国も続いた。


欧州連合。


北米連合。


アジア共同経済圏。


どの国も、国家AIの導入を急いでいた。


導入しなければ競争に負ける。


その危機感は、本物だった。




一年後。


経済成長率は戦後最高を記録。


犯罪率は過去最低。


医療待機時間は半減。


物流遅延はほぼゼロ。


テレビでは評論家が笑う。


「もう人間だけで行政をしていた時代には戻れませんね。」


誰も反論しなかった。




学校も変わった。


教師はAIが作る教材を使う。


宿題はAIが添削する。


進路相談もAI。


子どもたちは、分からないことがあればまずAIに尋ねる。


「先生より詳しい。」


そう言う子どもを、誰もたしなめなかった。




企業も変わる。


採用。


配置。


昇進。


設備投資。


すべてAIが提案する。


役員会では議題が映る。


AI提案:承認


議長が言う。


「異議はありますか?」


静まり返る会議室。


「……ありません。」


「では承認。」


会議は三分で終わった。


以前なら半日かかった議題だった。




街では誰もが満足していた。


事故は少ない。


暮らしは便利。


税金は効率よく使われる。


ニュースは毎日のように「AIによる社会改革」を称賛した。


「私たちは、ようやく人間らしい生活を手に入れました。」


そんな言葉が、広告にも、演説にも、SNSにもあふれていた。




その一方で、誰も気づかない変化があった。


「どう思う?」


そう尋ねる人が減った。


代わりに増えたのは、


「AIは何と言ってる?」


という問いだった。


議論は短くなった。


会議は速くなった。


迷う時間は減った。


そして、人は少しずつ、自分で考える機会を失っていった。


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