第72話 新事実続々
「何だいその姿はッ!?」
帰って来て開口一番に私とラファエルの服を見たガブリエルが大きな声を出した。
「お帰りなさい兄さん」
「あ、ガブリエルお帰りなさい」
「お帰り~、ふふふ、可愛いでしょ。今日はこの格好で一緒に出掛けてきたのよ、あのマダムとは趣味が合うわ~」
ビビアナが何故か勝ち誇る様なドヤ顔をガブリエルに向ける。
「く…っ、お揃いだなんていつの間にそんな仲良しに…! ハッ、マダムの店なら私のサイズで同じデザインの服が置いてるかもしれない!」
「あ~、残念だけどそれは無理だと思うよ、店を出る時同じデザインの服に変えられてたマネキンが帰りには違う服を着てたから売り切れたんじゃないかな」
エリアスの言葉に膝から崩れ落ちるガブリエル、オーダーで作ったら時間かかるもんね。
私《《に》》嫉妬したのかラファエル《《に》》嫉妬したのかわからないけど、今回は両方な気がする。
「まぁまぁ、そんな事より王都滞在中の予定の目処は立ったの? 私出来れば港町に一回遊びに行きたいんだよね、新鮮なお刺身食べたいし」
「そんな事…」
何故かガブリエルがショックを受けた顔をしたが、今後の予定と比べたら「そんな事」でしょ。
結局夕食の時間になったので食堂で話す事になって移動した。
「とりあえず滞在はひと月くらいだと思っておいてくれる? どれだけ短くても半月は掛かると思うんだよね、今回見つかった魔導具の概要通信で伝えておいたのに資料を探そうともしてなくてさぁ…、あの膨大な資料を調べるだけでも1週間は掛かるとして…ハァ…。とりあえず腹いせに研究所員の怠慢を陛下に報告してやったけど資料探し嫌いなんだよね…」
ラフな格好に着替えたガブリエルがため息を吐きながら報告する。
ん? 今何かおかしい言葉が聞こえた気がした。
「ガブリエル、今陛下にって聞こえた気がしたんだが…」
気のせいじゃなかったみたい、リカルドのツッコミにあっさりとガブリエルが頷いた。
「そうだよ、今日は謁見して報告もしてきたからね。暫く会ってなかったけど苦労してるのかえらく老け込んじゃって…、あの子は結構細かい事を気にしちゃうタイプだからねぇ」
「あの子…」
フォークに肉を刺したまま口に入れる事を忘れてエリアスが呟いた。
「先代も今の陛下も幼い頃に教育係として教えてたからね、小さい頃は可愛かったんだよ~! 大きくなってきたら権力大好きな人達がしゃしゃり出て来て教育係が変わっちゃうんだ。しかも今の陛下の教育係やってる間に王立研究所の所長だったのに所長じゃなくなってたし、色々面倒になってウルスカの支所長になったのさ」
色々な新事実にラファエル以外は開いた口が塞がらない。
「……はぁ、今日は色々驚かされたなぁ、ガブリエルが伯爵だなんて知らなかったし、よもや王様の教育係なんてやってたなんてよぉ」
「あれ? 伯爵だって言ってなかったっけ? まぁそんな事気にしなくていいよ、私を他所に行かせない為に押し付けられた爵位な訳だし、あはは」
ガブリエルの「そんな事」の基準がおかしいと思うのは私だけだろうか。
デザートを食べ終わった時を見計らってメイドの1人が食堂に入って来た。
「ガブリエル様、本日お召しになっていたローブに封筒が入っていましたが、こちらは如何なさいますか?」
「あっ、忘れてた! 騎士団から渡す様に頼まれたんだった。君、リカルドに渡してくれるかい?」
「はい。リカルド様どうぞ」
「ありがとう」
リカルドはメイドから封筒を受け取ると礼を言って懐に仕舞った、食堂で手紙を読むのはマナー違反なのかな?
「じゃあリビングで手紙の内容を教えて貰おうかな、ちょっと頼みたい事もあるし、あのヘルマンとかいう騎士が言っていた指導に関してだったらそれを考えて予定を組まないとね。ちょっと面倒な予定も入りそうだし…はぁ」
ガブリエルは面倒臭そうにため息を吐いて立ち上がるとリビングへと移動した。
リビングでリカルドにペーパーナイフ代わりに投擲用ナイフを貸して手紙の内容を読んでもらうと、4日後から1週間魔物との戦闘を想定した講習をして欲しいという要請だった。
1週間って事は半月くらい自由に出来るって事かな!?
だったら港町に行ってこれるって事だよね!?
「ガ「アイル、君達は私の護衛依頼中だった事忘れてないよね? 騎士団の要請は陛下の許可印があったみたいだし受けるとしても勝手な行動は困るよ?」
「えぇ~、じゃあ港町に行けないの!?」
テンションだだ下がりでへにょりと眉が下がってしまう。
そんな私をチラリと見てガブリエルは態とらしく咳払いをした。
「んンッ、でもまぁ…、私が研究所に通う間何もせずに待っているのも暇だろうから…私の頼みをひとつ聞いてくれるなら講習が終わった後の1週間は自由にしていいよ」
「本当!? あっ、でも無理難題とかじゃないよね…?」
「もちろん、私からしたら面倒な事だと思うけど、むしろ喜んでやりたいと言ってくる人はいくらでも居るんだよ、私としてはアイルが1番適任だと思うから頼みたいんだ。あ、時間も半日と掛からないから安心して」
にこにことイイ笑顔で話すガブリエルに嫌な予感がする、やりたい人がいくらでも居るのならその人達でいいんじゃないの?
さっきの面倒な予定が入りそうって言った事と関係あるのかな。
「そのお願いって…何?」
「それはね…」
続くガブリエルの言葉に私は頭を抱えた。




