第381話 依頼受注
夕食時、まるで出来を確認して欲しいとばかりに私が登録したレシピの料理が並んでいた。
「ねぇ、全部上出来なんだから私が教える必要無いと思うんだけど」
火の通り加減や味付けも文句無く美味しい、むしろ私のより美味しいよね?
「いやいや、ここにある料理は完璧になったからと出したんだ。他にも登録されているレシピはあるだろう? 料理人達に指導して欲しいレシピを書き出しておく様に言っておいたから明日確認して貰えるかい? ギルドの方には依頼として出しておいたから、そちらを確認してからでいいよ。指導の間リカルド達は他の依頼を受けると良い、暇だろう?」
確かに何だかんだ登録してるレシピって増えてるんだよねぇ。
皆も他の依頼受けて時間潰せるなら良いかな、そう思っていたらエリアスがニヤリと笑って口を開く。
「ふぅ~ん? そうやって僕達を外に出しておいてアイルに近付く…なんて事しないだろうね?」
「ははは、アイルの仕事を邪魔する様な事はしないよ」
あっさりと答えるエドの態度は本心で言っている様にしか見えない。
「エドガルド様はそんな暇がない程仕事が溜まっているのでご安心下さい」
「………」
壁際に控えていたアルトゥロの言葉にエドは無言でワインを口に運んだ、僅かに動揺している様に見えるのは気のせいだろうか。
その日は皆移動で疲れていたのか、早々に寝む事になった。
ビビアナ達の夕食はロールキャベツを鍋ごと置いて来たのでセシリオが温めてくれているだろう。
明日はリカルドと一緒に冒険者ギルドへ行って依頼を確認してから料理指導する事になっているが、私を帰さない方便だと思うんだよね。
しかしここの料理人達は熱心だし、良い人ばかりなので一緒に料理するのは楽しい。
そんな訳で料理指導依頼に文句は無いのだ、ちょっと楽しみにしつつベッドに潜り込む。
翌日、朝食後に『希望』全員で冒険者ギルドへ向かった。
ギルド内に足を踏み入れると、私が来たのは久々なせいか一瞬騒ついたかと思ったらシンと静かになる。
最初に依頼掲示板に向かうと人垣が割れた。
「ククッ、ウルスカ以外のギルドだったらアイルが居ると楽だな」
リカルドが割れた人垣を見て笑った、ウルスカだと皆私に慣れてるから遠慮も敬遠もしないもんね、こんな人の多い時間に掲示板に近付こうものならもみくちゃにされてしまう。
依頼札を2つ選んで手に取ったリカルドと2人でカウンターの列に並ぶと、前に並んでいた冒険者が大氾濫で治癒した相手だったのか先を譲ってくれた。
Aランクの冒険者が先を譲る相手なせいか、他の冒険者達も順番を譲ってくれたので結局待たずにカウンターに到着。
ギルド内は騒めきが戻っているものの、どんな依頼を受けるのかと聞き耳を立てているのがわかる。
リカルド達が受けるのは討伐採取系が2つ、掃除屋は私の嫌がり具合を知っているので避けてくれている。
私が討伐に参加しなくても、《《アレ》》に触れた仲間達に近付ける気がしないのだ。
「この2つを受ける、あとアイル個人に指名依頼が入っているはずだが」
そう言ってリカルドは自分と私のギルドカードを依頼札と共にカウンターに出した。
「はい、星商会のエドガルド商会長から使用人指導の指名依頼が入ってます」
「へぇ、エドの商会ってそんな名前だったんだ、知らなかった」
「星商会は店舗によって名前が違いますから商人でないと知らない人は多いんですよ。こちらの依頼は受けますか?」
受付嬢のお姉さんが教えてくれた、確かに服飾中心だけど色んな分野にお店があるって言ってたから全部同じ名前だと混乱するもんね。
「依頼札を確認していい?」
「はい、こちらになります」
差し出された依頼札をじっくり読む。
「日数は応相談、使用人に調理などの指導1日毎の契約更新で1日大銀貨1枚…か。受けるけど報酬が多過ぎじゃない?」
「エドガルドの本気が感じられるな…、とりあえず依頼は受けるんだろう?」
「うん、受けるよ。一緒に受注手続きよろしくね」
「ではお2人の冒険者証をお預かりします。………お待たせしました、星商会の指導依頼と素材採取の大猪が2件手続き完了しました」
「ありがとう、アイル行くぞ」
「うん!」
手続きを済ませて壁際で待っていた3人の元へ戻り、受けた依頼の事を報告した。
ついでに私の指名依頼で貰える報酬の話をすると、エリアスが納得した様に頷く。
「きっとコレがアイルに依頼する時の基準になるから他の商会や店から指導依頼が簡単に出せなくなると考えているんだろうね、アイルの労力を安売りさせない為にエドガルドが考えたんじゃないかな?」
「エドガルドって時々自分の事をアイルの下僕だとか恋の奴隷とか言ってるけど、こういうの目の当たりにすると本気で言ってるんだなぁって思い知らされるよね」
エンリケの言葉に言い返せないのが恐ろしい、確かにその言葉に偽り無しって思うくらいには金銭的にだけじゃなく色々してくれてるし。
だけどしっかり下心もチラ見えしてるんだよねぇ、アレは態となんだろうか。
「あいつの事なんざ考える時間が勿体ねぇよ、サッサと山に向かおうぜ。アイルは敵地に居る様なもんなんだから油断すんなよ」
そう言ってギルドから山に向かう乗り合い馬車へとホセが歩き出した。
「うん、皆も気をつけてね、いってらっしゃい」
皆と離れて1人というのは少し寂しいが仕方ない、和気藹々と話しながら歩いて行く仲間達に後ろ髪を引かれながら走ってエドの屋敷へと戻った。




