第365話 リビング side
「あ~あ、逃げちゃった」
エリアスはアイルの消えて行ったドアを見ながらクスクスと笑う。
そんなエリアスにエンリケは呆れた様にため息を吐いた。
「はぁ…、逃げられる様な事言ったのはエリアスじゃないか。ビビアナのところへ行ったみたいだけど、ビビアナに知られたら同性だからこそ俺達より容赦無く聞かれるって思わないのかな?」
「あはは、そこがアイルの可愛いとこじゃないか、リバーシやっててわかるでしょ? 先の展開を読むのが苦手だって。素直に悔しがるからつい意地悪な手を使っちゃうんだよねぇ。エドガルドもそんなアイルが可愛くて仕方ないんじゃない?」
「確かにうっかりしてるアイルが可愛いのは間違い無いが…、娼婦も知らない閨の知識があるというのは予想外だった…! く…っ、私はそんなアイルを満足させる事ができるのだろうか」
肘を膝の上に置き、組んだ手の上に額を預けて俯いたまま真剣に思い悩んでいるエドガルドに3人は冷めた目を向け同じ事を思っていた、それは無駄な心配だろう、と。
[side アイル]
「でね、エリアスが私を変態扱いしてきたの! 酷いよね!?」
「ふふっ、そんな噂が広まってたなんて知らなかったわ、それであたしのところに逃げて来たのね」
ビビアナはベッドに腰掛け、お腹に抱きつく私の頭を撫でながら話を聞いてくれていた。
私もビビアナも私の娼婦転職説の噂はしっていたが、夜のテクニックの話は知らなかったのだ。
「だってあのまま居たら皆の視線に耐えられる自信は無いもん…」
「そうね、アイルは大胆な事をする割には恥ずかしがり屋なところがあるわよねぇ」
そう言ってビビアナはベッドヘッドに付いている魔導具へと手を伸ばした。
「ん? ビビアナ、どうして防音魔導具を起動させたの?」
「うふふ」
私の泣き言を聞かれない為だろうか、寧ろ聞かせてやっても良いくらいなのに。
しかし振り返ったビビアナの艶っぽい微笑みを見た瞬間私は悟った。
「み、皆落ち着いたかもしれないから様子を見てこようかな~…」
ソロリとビビアナに抱きついていた手を離し、身体を起こそうとしたら笑顔のままガシッと肩を掴まれた。
「うふふふふ、アイル? あたし今妊娠中でしょ? その間にセシリオが娼館に行って娼婦に夢中になった、な~んて事になったら悲しくて弱ってしまうと思わない? そんな事にならない為にもその娼婦に教えた賢者の叡智とやらをあたしに教えてくれるわよね?」
ほ、本気だ…!!
ビビアナの目は食材系の魔物を狩る時に弓を構えている目と同じだ、そんな目で見据えられて私はプルプルと小刻みに震えながら頷く事しか出来ず娼館で話した事を洗いざらい詳しく話させられ、最終的にSMやイメクラの話をしたら物凄く喰い付いて目を輝かせた。
「凄いわアイル、確かに聞いた事も無い技術が結構あったわ、しかもそんな楽しみ方をするなんて発想無かったもの。ふふふ、あたしならそのままセシリオの騎士の制服を借りてセシリオを罪人みたいに縛るってとこかしら。ベッドの上でお芝居する様なものよね、その内娼館に治癒院や牢獄みたいな部屋が出来ていたりして…。ここで聞いた事はホセ達には秘密にするから安心して良いわ、だから布団から出ていらっしゃい」
《《色々》》説明する度にビビアナの目が爛々として来て怖かったので、私は最終的に掛け布団に包まった状態で話していた。
今の私は顔が真っ赤になっていると自分でもわかるくらい顔が熱い、私がこんなにマニアックな性に対する知識を持っていると思われるのもそうだが、間違って体験談だと広まってたらどうしようと震えてしまう。
「あくまで知識…知識しかないの…。そりゃちょっとしたコスプレ…衣装を着て騒いだりした事はあるけど、それはお祭りみたいな時だけで…」
モソモソと顔だけ出して訴えるとビビアナは苦笑いを浮かべていた。
「今のアイル見たらわかるわよ、別にホセ達相手に話すくらいなら恥ずかしがらなくて良いんじゃないかしら?」
「いやいや! 寧ろ全く知らない人に話す方が恥ずかしくないよ!? 家族とそんな話をする方がよっぽど恥ずかしいもん!!」
「そう? これも文化の違いってやつかしら?」
「それじゃあビビアナは二度と会わない全く知らない人に裸を見られるのと、リカルド達に裸を見られるのどっちが恥ずかしい?」
「そんなの知らない人に決まってるじゃない、リカルド達なら見られても問題無いわ。アイルは違うの?」
まさかの答えにショックを受けた。
「だって…、これからも顔を合わす人達だと気まずくない? 二度と会わない知らない人でも嫌だけど忘れちゃえばいいし」
「「……………」」
お互い理解出来ないという顔をして見つめ合った、この考えはビビアナだけなのか、それともこっちの世界では一般的な考えなのか後でリサーチする必要がありそうだ。
「とりあえずアイルがそう思うって事はわかったわ、下に降りても問題無さそうだしリビングへ行きましょうか」
そう言ってビビアナが防音魔導具を停止させると、その途端に階下からホセの声が聞こえた。
どうやらどうしてエドガルドが来ているんだという騒いでいるらしい、私とビビアナはホセを落ち着かせる為にもリビングへと向かった。




