第347話 説明再び
「ただいま~」
玄関で靴を脱いで角兎の毛皮を使ったモコモコスリッパに履き替えるとリビングに入った。
リビングでは男4人がまったりと寛いでいる、どうやらビビアナとセシリオは部屋から出て来て無い様だ。
もしも出て来た後なら搾り取られたとわかる様子のセシリオに何とも言えない顔をしているもんね。
「あれ? リカルドは?」
エリアスが私1人だけだと気付いて聞いてきた。
「えっとね、リカルドのお父さんにだけ転移出来る事話して実家に置いてきたの。1週間休養日だし、3日後に迎えに行くって言ってある」
「ふぅん、それでビールは買えたの?」
「んっふっふ、大樽で20樽も買って来ちゃったもんね。あとソーセージとサラミもバッチリだよ、それにバウムクーヘンも抜かりなく買って来たから1本は結婚式のパーティーで出すつもりなの。孤児院にはホールでしかあげてないから長いバウムクーヘン見たら驚くだろうなぁ」
「あはは、張り切ってるねぇ。午後は料理を作るのかい?」
「うん、その前に皆のお昼ご飯作るね!」
「アイル、俺シチューが食べたいな、さつま芋ゴロゴロ入ったやつ」
エンリケから昼食のリクエストが入った、タリファスが寒かったから身体が温まるもの食べたかったから丁度いい。
「わかった、じゃあシチューにするね」
「やった~!」
エンリケの嬉しそうな声を背に昼食作りに向かう。
結婚式のご馳走リストに入って無かったけどシチューも候補にしようかな。
寒いからおでんも良いけど、練り物と蒟蒻が無いんだよねぇ…。
この2つが無いとおでんとして成立しない、茹で卵と大根に餅巾着…他にもいくつかおでんの具はあるけど、やはり練り物が無いと良い出汁が出ないと思う。
白身魚のすり身と卵白が入ってるのは知ってるけど適当に作れるかな…?
棒にくっつけて焼いたら竹輪になるだろうか、それとも蒸して蒲鉾っぽく…、いやいや、それなら揚げてさつま揚げ擬きにした方が良いかな?
確かさつま揚げだとふわふわにする為に長芋が入ってたはず。
おでんの事を考えながらホワイトソースを作っていたら脳内は出汁の効いたおでんつゆなのに、漂う香りはバターで洋風で混乱してきた。
おでんの事は置いといてシチューに集中しよう、ホワイトソースだけ作り終わったら材料を切ってフライパンで炒めて寸胴鍋に放り込んでいく。
「よし、で~きた! あとはちょっと寝かせてから温め直せば良いかな、今の内にサラダくらい作っておくか…、パンも出すけどマカロニサラダにしちゃおっと。飾り用にゆで卵作って~、胡瓜スライスして塩もみもしておかなきゃ」
料理が完成して食堂へ行くと皆が揃っていた、どうやら匂いで完成したのがわかったらしい。
お肌が艶々のビビアナと満たされた顔のセシリオも一緒だ、久々の再会の翌朝恒例になってたグッタリした姿ではないので安心した。
「ビビアナ、セシリオ、ゆっくり休めた?」
「ええ、よく眠れたわ、うふふ」
「はい、おかげさまでゆっくりさせて貰いました」
寝る前に《《運動》》したからさぞかし熟睡出来たのだろう、疲れが残ってなくてなによりです。
「今日は1日ゆっくり過ごすと良いよ、リカルドも3日後に迎えに行くまで実家で過ごしてるし。1週間の休養日の間に結婚式の準備は出来るだけ進めたいから明日からは忙しくなるかもしれないしね」
「あら、アイルもリカルドの実家に行って来たの?」
「うん、午前中に教会本部へ連絡して、それからシドニア男爵領へ行ってビールとかバウムクーヘンとかソーセージとかサラミ買って来たよ、それでリカルドの実家に挨拶だけして帰って来たの」
「………ちょっと待って下さい」
「ん?」
ビビアナと話していたらセシリオから待ったが掛かった。
「今…リカルドの実家に行ってきたと言いました?」
「言ったね」
コクリと頷く。
「リカルドの実家はタリファスだったはずですが…」
「あら、そういえばそうよね。アイルがあまりにも自然に言うから変に思わなかったわ」
ビビアナは今気付いたと言わんばかりに瞬きを繰り返した。
そういえば朝説明した時に2人は居なかったもんね、私は女神様に言われた事を再び説明した。
「セシリオ、わかってると思うけど転移魔法の事は極秘だよ。間違っても王様に言っちゃだめだからね、リカルドのお父さんと私達しか知らない事だから」
「また陛下に言えない秘密が…!」
頭を抱えるセシリオの背中をビビアナは苦笑いしながら撫でている。
「一緒に住んでる以上隠し通すのは難しいっていうのもあるけど、セシリオの事を信用してるから話したんだよ? セシリオも家族の一員として認めてるんだから裏切ったら許さないからね」
「う…、はい」
信用してると言われ一瞬嬉しそうな顔をして、ガクリと項垂れる様に頷いた。
「でもまぁ、万が一黙ってた事がバレたら…」
「バレたら?」
「バラしたら私が大暴れするって脅されたって言えば良いよ」
「あはは、アイルが本気で暴れたら国のひとつやふたつ簡単に壊滅出来るから叱責される事は無いだろうね」
エンリケがさらりと恐ろしい事を言ったので、セシリオの顔色は更に悪くなった。
「本当にはそんな事しないから安心してよ。………やろうと思えば可能だけどさ」
悪ふざけが過ぎた私の最後のひと言のせいで食事が喉を通らなくなってしまったセシリオを宥めるのに私とビビアナはかなりの時間を要し、真面目なセシリオはあんまり揶揄っちゃいけないと学んだのだった、反省。




