第342話 変化と報告
「ふわぁ…、おはよ~ホセ」
朝食を作る為に階段を降りようとしたらホセが居たので欠伸をしつつ挨拶した。
「……………おはよう」
妙に間があったな、首を傾げたら何故かホセも首を傾げていた。
「どうしたの?」
「いや…、お前…何か…いつもと違わねぇ?」
「そう…?」
玄関に姿見があるので階段を降りて覗き込んだ、目も髪も黒い、身長も伸びてない、胸も…っ!
しかし、一緒に姿見を覗き込んだホセと並んだ時に気付いた、いつもよりコントラストが強めだと。
「んん? もしかして肌が白くなってる…? そのせいで唇の色がいつもより赤く見える様な…。コレが女神様の化身になった副作用なのかな…?」
マジマジと鏡に映った自分の姿を眺め、他に変わったところが無いかチェックしていると、ガシッと頭を掴まれた。
「ひゃうっ!?」
「ちょっと待て、お前今何つった? オレの聞き間違いだよな? 女神の化身になったとかなんとか聞こえたんだけどよぉ」
鏡の中には顔を引き攣らせたホセが見えた、そういえば夜だったからまだ誰にも報告して無かったっけ。
「わ、私のせいじゃないもん! 女神様が勝手にやったんだもん!! 怒られるのは理不尽だよ!?」
今にも指先に力を込めそうなホセに焦って弁明する、だってただ報告しただけなのに魔改造されるなんて思わなかったもん!
「どうしたんだ? 大きな声を出して」
階段の上からおじいちゃんが声を掛けて来て、ビビアナとセシリオ以外が集まってしまった。
「朝ごはん食べながら説明するよ、食堂で待っててくれる?」
魔導具のオーブンを使って昨夜から冷蔵庫で寝かせておいたパン生地を焼き、サラダとベーコン、目玉焼きに果物というシンプルな朝食を準備してテーブルに並べた。
「いただきまーす! パンの焼ける匂いって格別だよね~、アイルのパンってふわふわだし凄く美味しいから好きだなぁ。ところでアイルの雰囲気が変わってるけど、どうしたの? 昨夜まで普通だったのに…ホセと昨夜の内に恋人になったから…とかじゃないよね?」
「「ブフ…ッ」」
エンリケがとんでもない事を食事の話題と同じテンションで言い出したせいで、私とホセが思わず吹き出した。
「ゲホゲホッ、何を突然言い出すの!? そんな訳ないでしょ! 全く…、何でそんな考えになった訳!?」
「確かに…、昨日とアイルの雰囲気が変わった気がするな」
「妙に色気があるというか…、ああ、急に色気が出たからエンリケは熱い夜を過ごしたとおもっぐむむ」
リカルドの言葉に頷きながらエリアスが馬鹿な事を言い出したので、目の前のロールパンを掴んでエリアスの口に突っ込んだ。
コッチはホセの裸見た事あるんだから想像しちゃうじゃない!
だけど色気が出てきたというのは朗報だ、これで子供に間違われる事も無くなるって事だもんね。
「もぐもぐ…ごくん。ヘタすると娼館の見習いと思われる様な雰囲気だよね、大人っぽくなったって言うより凄く色気のある子供って感…じッ」
再びエリアスの口にパンを突っ込もうとしたが、今度は避けられてしまった。
「ぐぬぬぬぬ」
「ふふふふふ」
「……せっかく出てきた色気も行動で台無しだな、しかし何が違うと言われてもよくわからないくらいなんだが…」
睨み合う私とエリアスに呆れた目を向けながらリカルドが肩を竦めた。
「さっきアイルが自分で色が白くなったって言ってたぜ、《《女神の化身になった副作用》》かもってな」
「「「「ゴフッ」」」」
4人が各々食べていた物を吹き出し、咽せて大変な事になっている。
「そうだ、その話をしないといけないんだった。早く話さないと忘れちゃいそう、夢の話だし」
「夢って事は《《また》》女神様に会ったの!?」
「《《また》》なのか!?」
エリアスの言葉におじいちゃんが驚く、そういえばおじいちゃんは知らなかったっけ。
「え~っとね、私を通じて女神様が奉納される魔力を受け取れる様になったから、今度から産まれて来る子供達は適性があれば魔法が使えるんだって。あ、その前に女神様がこっちに居た時は産まれると同時に少しずつ女神様に魔力を奉納する為に魔力が引っ張られて魔力の出口が出来るから魔法が使えてたみたい。今の人達は女神様が近くに居なかったから出口が作られなくて魔法が使えないんだって、だけど私の身体を弄って魔力を集める様にしたから大人でも適性があればいつか魔法が使える様になるかもねって…、これで全部だったかな? コレって教会に知らせておいた方が良いよね? あ、そういえば神託も出来る様になるって言ってたっけ、だったら連絡しなくていいかな?」
「「「「「…………………」」」」」
覚えている事を話していたら全員食べるのを止めて黙ってしまった。
「あはは、女神の化身になったっていうのにそれだけ落ち着いてるアイルって凄く大物だよね。普通聖女認定されただけでも村や町をあげてのお祝いをして本人も大喜びなのにさ」
「だって…(胸も身長も)何にも変わってないもん。ちょっと色が白くなっただけだもん…」
エンリケの言葉にムッツリとして答える、1度期待してしまっただけにガッカリしたし。
「とりあえずカリスト大司教に伝えたら大喜びするんじゃないのか? むしろ神託で知ったらどうして教えてくれなかったのかって泣かれるだろうな」
ニヤリと笑うリカルドの言葉に、おじいちゃん以外が頷いた。
「あ、そうだ。転移魔法の練習に教会本部に行って報告すればいいじゃない!」
名案を思い付いた私はポンと手を打った、そして同時にガシリとホセに頭を掴まれる。
「ぜ・ん・ぶ・吐・け! お前さっき『これで全部』って言わなかったか!? 女神と話した内容全部吐け! 転移魔法なんて御伽噺でも聞いた事ねぇよ!」
「ええ~!? 今度こそ本当に全部話したと思うよ?」
「あはは、これは僕達も夢の内容最初から最後まで聞いておいた方が良さそうだね」
引き攣った笑顔を浮かべるエリアスの言葉により、結局夢の始まりから最後まで覚えている限り全て話しなおす事になった。
尚、ビビアナとセシリオは肌艶が良くなって昼食の時間に部屋から出て来た、セシリオは体力をビビアナの為に向上させたらしい、良かった良かった。




