第24話 交易都市トレラーガ到着
「もう見えてきますよ、ここまで来ると帰って来たと感じますなぁ」
ドロテオがしみじみと呟きながら息を吐いた。
あれから3度魔物と遭遇し、野営地で5人組の盗賊が夜中に盗みにやって来たが被害はゼロ。
井戸がある野営地はどうしても盗人や盗賊が出やすいんだとか。
見張り番がホセだったから気付くのも早くて対応が楽だったというのもある、もちろん盗賊は最寄りの町に突き出して報奨金も貰った。
そして今は何も無い小高い丘を登っていて、頂上を過ぎるとトレラーガの街が一望できるらしい。
「アイル、ほら、あれがトレラーガだよ」
「うわぁ凄い、ウルスカの5倍くらいありそう」
この1週間ですっかり仲良くなったミゲルが前方を指さした、交易都市の名に相応しい大きな街だった。
ウルスカと同じく街を外壁が囲んでいる、トレラーガの向こうに見える山が冒険者の活動の場となるくらいに魔物が出るので防衛がしっかりしているとのこと。
ウルスカの門と違って行列が長い、1時間以上かかりそうな列を横目に馬車は並ぶ人達追い越して門に向かった。
「あれ? ミゲル、並ばなくていいの?」
「僕らはトレラーガの住人だからね、住人専用の列でいいんだ。ウチの馬車でトレラーガに来る利点の1つにこの待ち時間短縮があるんだよ。ちゃんと申請してあるから乗客も一緒に入れるんだ、もちろん身分証の確認はされるけどね」
「なるほど~、じゃあ個人で出入りするのは大変なんだね。冒険者とか依頼受ける度に並ぶの大変そう」
「この街で冒険者ギルドの依頼を受けていれば冒険者専用の出入り口でギルドカードと依頼札を見せてすぐ通して貰えるよ、ただ冒険者専用は山側の門にしか無いけどね」
「そっか、良かった。せっかく来たから暫くここで活動しようって決まったの、1週間くらいの予定だけどね」
「本当!? じゃあこっちに居る間に一緒に食事でもしない? 美味しい店もたくさんあるからアイルに食べさせてあげたいんだ、温かいスープ分けてくれたお礼したいし」
「あはは、気にしなくていいのに。あの日は雨で身体が冷えたもんね」
「宿は決まってるの? 誘いに行くから!」
「私ここに来るの初めてだから…、ホセ知ってる?」
耳のいいホセなら荷台にいても私達の会話は聞こえているだろうと振り返ると、やはり聞こえていたらしく答えてくれた。
「いつも月夜の雫亭だから今回もそうじゃねぇか?」
「だってさ」
「わかった!」
そんな話をしていたらすぐに順番が来て確認された、出発の時の書類と人数が違うせいで説明したりと少々手間取ったが無事に全員入れた。
門を潜ってすぐの広場で乗客達は解散となり、ファビオとその両親は私にもお礼を言って街に消えて行った。
そしてドロテオのお店であるデスティーノ商会に到着して依頼札に完了サインを貰って依頼完了となった、依頼料はウルスカのギルドで受け取るが道中の盗賊を突き出した報奨金とストレージに入ってる魔物を売れば中々の収入になる。
「アイル、もし月夜の雫亭以外に泊まるんだったらちゃんと教えてね! 忘れないでよ!」
「うん、美味しいお店期待してるね」
月夜の雫亭に向かいながら、きっとミゲルは商会の仕事で忙しくて歳の近い友達が居ないのかな、私という同い年の友達が出来てとても嬉しそうだったし。
そう言ったらホセがため息を吐きながら頭を撫でてきた、もしかして私の事を好きだとでも言いたいのだろうか、そんなのホセ達みたいな美形だったらわかるけど、私だよ?
月夜の雫亭に到着して部屋をとる時リカルドが戸惑っていた、どうやら4人部屋と大人数の相部屋しか空いて無いらしい。
近々大きな市場が開かれるらしく、商人が各地から早めに来ているせいで埋まっているのだとか。
「じゃあとりあえず4人部屋を借りて長椅子を入れてもらうか、ビビアナと私が同じベッドで寝るか、獣化したホセと私が一緒に寝れば良いんじゃない?」
「あの、長椅子を入れるスペースはありませんが、ベッドの大きさ的にそちらのお嬢さんでしたら2人で寝ても大丈夫だと思います」
宿屋の受付のお姉さんがそう言ったので、とりあえず4人部屋を借りる事にした。
部屋に入るとベッドとベッドの間に小さなサイドテーブルはあるものの、普通の冒険者が荷物を置いたら移動する為の動線しか無いレベルで狭かった。
「確かに長椅子入れるスペースは無いね、ビビアナより獣化したホセの方が小さいよね?」
空の時は母に許されなかった動物と一緒に寝るという夢を叶えるチャンスだったので期待を込めてホセを見る。
「お前…、それでいいのか? 見えなくても一応お年頃の娘なんじゃないのか?」
凄く呆れた目で見てくるけど安全だとわかってるなら問題無いと思う、なぜなら…。
「だってホセ、9歳に見える私に妙な気を起こすなんてありえないでしょ? それに獣化して撫でさせてくれるって言ったのにまだモフってないし…」
じとりとした視線を向けるとホセは諦めた様にため息を吐いた。
「わかったよ、アイルがそれでいいなら」
「決まりだね!」
その後ベッドの場所取りをしてから夕食を食べに出かけるんだけど、そこにはなんと…。




