第21話 初護衛
あれから3日依頼をこなして1日休むといったペースで過ごし、食事作りもビビアナ以外には手伝ってもらっている。
ビビアナに手伝ってもらうと材料が無駄になるというか、私の心臓に悪いというか…。
休養日には出来るだけ食事の作り置きをまとめて作ったりしていたら毎日作る必要が無くなったりと生活のペースも掴めてきた。
そして食事作りと洗濯で節約出来た分は私への報酬として貰っていいとのこと!
食費はエンゲル係数高めだけど食べに行く回数は少ないので結構節約出来てるし、洗濯屋の分はまるっとお小遣いになっている。
貯金箱ならぬ貯金袋を作って貯めているところだ、この世界には保険なんて無いし病気になったらその間無収入だもの。
ストレージで素材を全て持って帰れるからパーティの収入自体も前の3倍になっているらしくて皆ウハウハだ。
「そろそろ門の前に向かおう、もうすぐ依頼人との約束の時間だ」
リカルドが皆に声を掛けた、今日はこれから商人の護衛依頼に向かう。
この町、ウルスカから王都へ向かう街道と繋がっている交易都市トレラーガまで1週間の道程らしい。
野営用のテントなどはマジックバッグに入れてる体で私のストレージに。
マジックバッグ自体は魔導期に作られた物が結構な数あるので容量によって値段は違うものの、冒険者が持っているのは成功者の証の様なものらしい。
門の前の広場に同じマークの入った馬車が2台あった、依頼人に関しては既に何度か『希望』が護衛した事もあり、挨拶に向かうとそこにはステテコなパンツを履いていそうな口髭をたくわえたおじさんが居た。
ドロテオと名乗ったその商人はトレラーガに本店を構えており、各地で商売をしているらしい。
「いやぁ、良かった、指名依頼にしようかと思ってたら冒険者ギルドでは討伐で帰りはいつになるかわからないと言われてしまってね。こちらのお嬢さんは初めましてだね」
「はい、アイルといいます。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げて挨拶した。
「おや、アイルさんは商家の出かな?」
「いえ、……あ。この国の出身じゃないから文化が違うだけなの」
「ほぅ、他国の出身でしたか、どうりでこの辺じゃ見ない顔立ちなはずですな」
ドロテオさんは納得した様に頷いた。
内心ホッとしている私に皆が呆れた目を向けてくる、だってドロテオさん45歳は超えてそうだからつい敬語が出ちゃったんだもん。
出発の時間になり、リカルドとエリアスは用意された馬に乗って前と後ろに付き、私とビビアナは各御者台で御者の隣に座り、ホセはドロテオと共に1台目の商品と売り上げの乗った馬車に。
2台目の馬車はトレラーガから運ばれた荷が売れて空いた場所にトレラーガに行きたい人達を乗せている、自分達で護衛を頼んで旅をするより安く済むので人気があるらしく満員の12人だ。
2台目の御者台にはビビアナが乗っているが、何だか乗客の中の2人連れの男女が凄く嫌な感じがする。
少なくとも悪人、もしかすると盗賊の引き込み係だと思う、コレって鑑定のお陰でわかるんだろうな。
既に出発してるし、証拠は無いから言い掛かりだって言われてしまえばそれでおしまいだからなぁ。
最近盗賊が出るのは3日目に通る辺りらしいのでそれまでは大丈夫かな?
とりあえず野営の時に確証は無いけどって事でメンバーには話しておこう、この2週間ちょっとの間に鑑定持ちなんて聞いた事ないから言わない方がいいよね。
私の隣で御者をしているのはドロテオの5番目(!)の息子だった、15歳という私と同い年で名前はミゲル、オレンジの髪にドロテオと同じ茶色い目をしている。
ミゲルには同い年と言ったら凄く驚かれた、いいもん、もうそのリアクションには慣れたもん。
ところがどっこい、ドロテオは同い年と見抜いていたらしい、驚いたミゲルの声を聞いて荷台から話し掛けて来て判明した。
なんとドワーフの歳すら大体当てる事が出来るとか、流石交易都市で店を構える商人、人を見る目があるなぁ。
雑談しつつ意識を逸らしていたが、段々限界が近づいて来た。
何の限界かって? 私のお尻です。
ずっと寝袋用の枕をクッション代わりにしていたけど、御者台のには申し訳程度のサスペンションしか付いてないらしく2時間もすればダメージは蓄積される。
休憩になったらお花摘みの振りして治癒魔法で元通りって出来るのに、後ろの馬車に子供も居たよね、休みたいって言わないかな、護衛が言ったらアウトだけど乗客ならきっと許されるから!
あ、そんな事考えてたら本当に尿意が…。
「あ、あの、ミゲル…、私…お花摘みに行きたいな~なんて…」
「え? 花摘み? こんなところで?」
キョトンとされてしまった、お花摘みじゃ通じなかったか…。
しかしそこで救いの神ドロテオからの指導が入った。
「ばかもん、本当に花を摘みに行くわけじゃないぞ。まだまだ勉強不足だな、もう少し行けば開けた場所があるから休憩にしよう」
「ハッハ~ン、わかったぜ、他の冒険者達との合同依頼の時にビビアナが言ってたからな、小便したいんだろ?」
「ホセ! 言い方!! せめて用を足すとかにしてよ!」
私達の言葉を聞いてミゲルは真っ赤になってしまった、折角ボカして言ったのに意味ないじゃない!
しかも離れた時に何しに行くのかバレてるなんて行き辛いっての!
休憩で停車した時にこの事をビビアナに報告して教育的指導を入れてもらった。




