第203話 男の中には少年が居る
王宮に戻って昼食を食べた後、賢者について研究している人達が訪ねて来た。
サロンで話をするのだが、賢者の話を聞きに来たという事は当然『希望』の仲間達はする事も無く王都へ繰り出して観光へ…。
そんな仲間達を恨めしげに下唇噛み締めながら見ていたら交代で1人ずつ残ってくれる事になった。
わーい、ボッチで知らない人に囲まれてお話しするの嫌だったから嬉しいな。
とりあえず今日来るのは貴族らしく、一応粗相があっては面倒な事になるからとリカルドが残ってくれた。
明日は商業ギルドのギルマスが来るから腹の探り合いに対抗出来るエリアスが残ってくれる予定である。
「ほほぅ、では燃える石というのは本当にあるのですね」
「はい、私の国ではもう基本的に使われなくなってますが」
「何と! では代わりに何が使われているのですか!?」
研究者達が来て最初に質問したのは、賢者サブローが言った事が本当かどうかの確認作業だった。
どうやら蒸気機関車の話をしたらしく、こっちの世界では魔物が出るから実現出来なかったけど興味はあるらしい。
ひとつ答えるとそれに関連した質問が次々飛び出して来る、オタク特有の興味のある事には早口、と言う現象は異世界でも一緒の様だ。
今日訪問して来た研究者は所長と1番身分の高い人と1番家が資金提供しているという3人、今日来る為に熾烈な争いがあった事を仄めかしては他の人にも話を聞く機会が欲しいとチラチラ言ってくる。
明らかに好奇心の塊で言っているのがわかったので了承すると、いい歳したおじ様達が手を取り合って喜んだ、その姿はまるで子供の様に無邪気でちょっとほっこり。
既に決まっている面談が終わったら研究所に顔を出すと約束してその日の面談は終了、既に夕陽で部屋が赤く染まっている。
付き合わせてしまったリカルドを見ると目をキラキラさせていたので驚いた。
「アイルが居たところは凄いんだな、100年も経たない内に大勢が空を飛んで移動出来る様になるなんてアイルが言ったんじゃなきゃ信じられないところだぞ。それに…」
この後興奮したリカルドの話は出掛けた皆が帰って来るまで続いた。
考えてみれば地球の事をこうやって話したのは初めてかもしれない、リカルドは特に乗り物に興味を持ったらしく、バイクとか魔道具で作れたら喜ぶんだろうなぁなどと考えてしまった。
その日の夕食は王族との晩餐で、ホセとエリアスは作法に自信が無いからと辞退した、私も自信なんて無いのにズルい!
そりゃ…私と話す事が目的だろうから私が逃げる事は出来ないんだけどさ。
ちなみにビビアナは王族が食べる食事が出来ると普通に喜んでいた、きっと話し掛けられるのは私だからと気楽なのだろう。
とりあえず晩餐会でわかったのは王様一家は大家族だという事、名前なんて多過ぎて逆に1人も覚えられ無いよ。
5人の殿下だけで精一杯だね、そして今朝騒動を起こした2人の殿下は謹慎させたという報告が。
私としては実害が無かったからどうでも良かったんだけど、見せしめとしてケジメをつけないといけないらしいのでそのまま謹慎して貰う事にした。
そしてエウラリオ王子がちゃっかりカンデラリオ王子の事を話題に出して「弟の無作法のお詫びをしたいから個人的に会って欲しい」と言って来た。
弟を踏み台にするとはインテリ眼鏡はやはり腹黒の象徴なのだろうか。
ちなみにエウラリオ王子の言葉に他の王子達(王太子含む)も乗っかって来て面倒くさかったので滞在中の予定はもう決まっているからとお断りした。
だって王族と約束すると会う時はまたドレスアップさせられるから色々と大変なのだ。
実際今も食事を楽しみにしていたビビアナがコルセットのせいで普段の半分も食べられていない。
カタヘルナから移動中の食事は服装もそのままで殿下達と食べていたけど、流石に王宮でそれは許されない様だ。
食後にサロンでパーティメンバーだけで話す事になり、お茶を用意してくれる侍女達が側に控えているので遮音魔法を展開して言いたい事を皆で言い合った。
「とりあえずあたしはもう晩餐会には行くのやめるわ、コルセットしてたら全然食べられないんだもの。ごめんねアイル」
「ううん、気持ちは凄くわかるもん。それに今後の食事は王宮の料理人にレシピ公開して教えるって事で私が作った分は私達で食べる様に手配して貰おうか。軽くとはいえ私も締め付けられてるとあんまり食べられないもん」
「そういうの聞くと男に産まれて良かったなぁって思うよ。でも良かった、次からビビアナが一緒なら今日みたいな事も無くなるだろうし」
「今日みたいな事って?」
苦笑いするエリアスに聞くと、どうやらハニトラ要員が食堂に出現したらしい。
お城には行儀見習いで富裕層の平民の女性が居るらしく、エリアスとホセはそれぞれ誘われたとの事。
2人共見た目は文句無しな上、これからも活躍が期待されるAランクパーティという事でなかなかギラついたお嬢さん方が入れ替わり立ち替わり給仕してくれたとか。
私が殿下達に靡かないから仲間の誰かを引き留めてセゴニアに根を下ろさせる作戦なのだろう。
しかし給仕をしていたお嬢さん達に警告したい、この2人は普通に女慣れしてるから遊ばれるのはあなた達の方ですよ…と。




