第172話 秘密の晩酌
今回は三人称です。
4人がアイルの部屋で話していたらドアがノックされ、ドアを開けるとビビアナを連れたアルトゥロが立っていた。
「皆様こちらにいらしたんですね、夕食の準備が整いましたので食堂へご案内致します」
「わかった。皆、夕食だって。アルトゥロ、コレ手土産のお酒」
「わざわざありがとうございます」
手土産にタリファスで買った高い酒を手渡すと、アルトゥロは愛想笑いとわかる笑顔でお酒を受け取った。
「ビビアナの部屋は夕食後に見せて貰おうか」
「だな」
エリアスとホセが勝手に決めつつ皆でアルトゥロの後をついて行くと、1階の食堂には既にエドガルドが待っていた。
促されて全員席に着く、当然の様にエドガルドの隣はアイルだ。
「改めてようこそ我が家へ、部屋は気に入って貰えたかな?」
皆が頷く中、アイルだけは素直に頷けなかった。
「エド…、あの部屋私には可愛過ぎない?」
「いやいや、そんな事無いよ、街で見かけてアイルにぴったりだと思ってつい買ってしまったんだ。私の為にもあの部屋を使ってくれると嬉しい」
ニッコリと微笑んで言われてアイルは何も言えなくなってしまい、素直に頷くしかなかった。
そして食前酒が運ばれて来た、アイルの物だけほぼジュースの若いワインで、飲ませる前にリカルドに軽いものだと確認させるという気遣いを見せた。
食事は全て高級宿に負けない味で、皆もりもりと食べるくらい気に入った様だ。
ただ、アイルだけは少し不満があった、何故ならとてもお酒に合う料理ばかりだったので食前酒以外飲ませて貰えない身としては軽い嫌がらせかと思う程だった。
食事が済む頃にはアイル以外の皆は足にキてるレベルで酔っていた、最初はエドガルドの屋敷という事もあって警戒していたが、酒に合う美味しい料理についつい飲み過ぎてしまったのだ。
「僕もう寝るよ、ビビアナの部屋見せて貰うのは明日の朝にするね」
「そうね、あたしもちょっと飲み過ぎたみたい、おやすみ~」
ビビアナは給仕の男性が終わり頃には顔を引き攣らせるくらい飲んでいた。
アイルは食べれば食べる程お酒が飲みたくなったので腹八分程度に抑えており、早くお風呂に入ってコッソリ部屋で独り酒しようかと企みつつ皆が部屋に戻って行くのを確認する。
部屋の鍵を閉め、お風呂で高級バス用品を堪能し、お風呂から出ると食事の時のエドガルドの言葉に背中を押されたので、覚悟を決めて用意されていたナイトウェアを身に付けた。
「う…っ、あんまり違和感が無い…」
姿見の前で確認すると、デザインが少し大人っぽいせいか他の人が見ても似合うと言われそうなくらいだった。
しかし1枚だけだと肩が出てる事もあってガウンを羽織るとおもむろにテーブル席に座った。
「鍵よーし、お風呂も入った、1杯くらいなら飲んでも赦されるよね?」
ストレージからワイングラスと冷やしたボトルを取り出し、白ワインを注いだ。
夕食に食べた食事の味を思い出しながらグラスを傾ける。
「美味し~い、だけど食事しながら飲みたかったよぅ…」
グラスが空になり、2杯目を注ごうとした時、部屋がノックされた。
アイルは息を呑んでテーブルの上の物を全てストレージに収納し、ガウンの前を合わせて平静を装いつつドアを開けると、明らかにお酒だとわかる瓶とグラス、そしておつまみの乗ったトレイを持ったエドが居た。
「ああ! やっぱり凄く似合うじゃないか、…っと、さっき1人だけ飲めなかったから寝酒を差し入れに来たんだ。それくらいなら仲間達も煩く言わないだろう?」
「あ~…、う~ん、どうかなぁ…」
凄く嬉しそうなエドの顔と酒瓶をチラチラ見ながら悩むアイル、お酒を飲んだ事がバレたら怒られるだろうと言う事は予想がついている。
しかしトレイに乗っているおつまみはさっきの食事にも出されたスモークされたお肉、1番お酒が飲みたくなった1品だった。
「前に宿でアイルが気に入っていた酒を他の酒とブレンドして更に美味しくなる様に開発したんだ、だから1杯だけでも試しに飲んでみてくれないか?」
懇願する様に眉尻を下げるエドガルド、アイルがこんな風に下手に出てお願いされると弱いとわかった上で言っているのだが、アイルはそれに気付かない。
「う~ん…、1杯だけね…?」
「飲んでくれるのかい? ありがとうアイル! ではコレをどうぞ」
手渡されたのでトレイを受け取りテーブルへと運ぶアイル、エドガルドはそのまま戻ると思っての行動だったが、テーブルに置いた時点でグラスが2つだという事に気付いた。
エドガルドはアイルが背を向けた瞬間部屋へと身体を滑り込ませ、音を立てずに鍵を掛けた。
この辺りの行動は昔受けた訓練の賜物と言えよう、テーブルにトレイを置いてアイルが振り返ったと同時にエドガルドは椅子に座った。
「エ、エド? もしかして一緒に飲むの?」
バレたら怒られる、ほんの少し酔った頭でもそんな予想は出来た。
「はは、感想を聞かせて欲しいからね。アイルが《《眠る時には》》出て行くから安心して欲しい」
「まぁ…それなら…」
アイルの返事を待たずしてエドガルドは既にグラスに氷とお酒を入れていた。
おつまみにはピックが刺さっており、すぐに食べれる状態だ。
「さぁどうぞ」
「ん、いただきます…コクン…コクコク…お、美味しい…!」
以前飲んだライチベースのお酒が更に後味スッキリで飲みやすくなっていた。
おつまみとの相性も抜群で危うく自然にお代わりしそうになった。
「おや、お代わりはいいのかい? もう寝るだけなんだし、もう1杯くらい大丈夫だろう?」
「でも…、だけど…、美味しいし…、怒られる…、まだ2杯…、あと半分だけなら…」
辛うじて保っている理性がやめろと言っているが、欲望がまだ2杯目だから大丈夫と甘く囁いた。
エドガルドはそれを見逃さず氷だけになったアイルのグラスを手に取る。
「じゃあお代わりは半分だけにしておこうか、それくらいなら大丈夫だろう?」
「あ…っ」
「ほら、もう注いでしまったから」
「しょ、しょうがないなぁ…」
ニッコリ微笑むエドガルドを見つつ、注がれてしまったんだから仕方ないと自分に言い訳しながらも内心ニヤつきながらお代わりを口にした。
「そう言えばアイル、前に言ってた…私を酔わせて…なんだったかな?」
「はぁ、美味しかったぁ。 あぁ、私を酔わせてどうするつもり?」
アイルは飲み干したグラスをテーブルに置き、エドガルドが言いたかったであろうセリフを口にした。
その瞬間エドガルドの眼付きが変わり、アイルをベッドに運ぶと四つん這いの状態で覆い被さった。
「こうするつもりだと言ったらアイルは怒るかい? 本当はずっと一緒に居たい、側でアイルの笑顔を見ていたいんだ、アイルが愛しくてどうにかなりそうなくらい…」
お酒が回って働かない頭でアイルが何とか状況を理解した時には、首筋を唇で優しく喰まれて腰から背中にかけて痺れる様な快感が走り甘やかな声がアイルの口から漏れる…はずだった、川底に沈んだ以前の愛留の身体であれば。
しかし今は愛撫などされた事もなければ快感を拾うという経験の無い真っさらな身体故にアイルの口から出たのは…。
「ぁひゃひゃひゃひゃひゃ! うひひひひ、くすっ、擽ったいよぅ! ぃひゃひゃひゃひゃ」




