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自由に生きようと転生したら、史上4人目の賢者様でした!?〜女神様、今の時代に魔法はチートだったようです〜【web版】  作者: 酒本アズサ


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第142話 少年の名前

「ははっ、見事な腰抜けだったな。アイル、黒猪(ブラックボア)臭ぇからサッサと血を落としちまえよ、今なら近くに誰も居ねぇし」



「うん、『洗浄(ウォッシュ)』、それにしてもやっぱりホセは分かってたんだね」



 逃走した男達3人を見送ったホセに促されて全身と武器を綺麗にし、問いかけるとホセは肩を竦めた。



「そりゃそうだろ。お前にあんなガキを斬りつけられる訳ねぇし、それだけ黒猪の血の匂いさせてりゃな」



「あ、だよねぇ~! さっきの子はどうしたの?」



 エリアスがあからさまにホッとした様に身体の力を抜いた、もしかして本当にあの子をヤっちゃったと思ってたんだろうか。



「木の上に隠れてる様に言って待たせてあるよ、…………まさか本当にさっきの血があの子のだと思ったの?」



 腕を組んでジトリとした目を向けると目を泳がせながら言い訳を始めた。



「い、いやぁ、故意にやるとは思って無いけど、アイルの事だからうっかり手が滑ってとか…本当に力加減間違えちゃったのかなぁって一瞬思って…一瞬だからね!?」



「ふぅ~ん」



 腕を組んだままエリアスから視線を外さずにいたら、ビビアナからエリアスに助け舟が出された。



「ふふっ、それよりあの子を見つけなくていいの? アイルの事だから助けたいんでしょ?」



 優しく微笑んではいるけどビビアナもさっき驚いていたからちょっと思ったのかもしれない、ジトリとした視線のままビビアナを見るが、鉄壁のポーカーフェイスで微笑みを崩さないので探る事は諦めた。



「はぁ…、そうなの。あの子をウルスカの孤児院まで連れて行く約束しちゃった…、事後承諾でごめんね。あ、首輪は解呪したから安心してね」



「「「「解呪!?」」」」



「え、う、うん。だって首輪さえ外れればあの子は自由なんでしょ? 家族も居ないらしいし、もう死んだと思われてるだろうから追手が来る事も無いだろうし…」



「そういえば元々は契約の魔法を使えない奴隷商人が魔導具を使い出してそれが主流になったが、昔は魔導師を雇って契約してたんだったな…。今は魔導具で契約するのが当たり前だからすっかり忘れてたな。まぁ…子供1人くらいなら隠して連れて行くのは可能だろう」



 リカルドが了承してくれたので皆で少年を迎えに行く事にした。

 あれ? でもあの子の近くに誰かが居るみたい、敵意は無いから気付いてないかもしれないけど、ちょっと急いだ方がいいかな。

 急ぎ足で少年の居る場所へ向かうと、言いつけ通り木の上に隠れていた。



「お待たせ、あの人達は君の事死んだと思って帰っちゃったから安心して」



 そう声を掛けるとスルスルと5mくらいの木から降りて来た、熊獣人なだけあって木登りは得意な様だ。

 木から降りると何故か私をジッと見てくる、どうしたのかと首を傾げると少年が口を開いた。



「血が…」



「血? どこも怪我なんてしてな……あ」



 そうだ、そういえばこの子の前で血塗れになったのに洗浄魔法で綺麗にしちゃったんだった、皆も「あっ」って顔してる。

 不思議そうに首を傾げる仕草は可愛いけど…ってちがーう! えーと、言い訳しなきゃ。



「さっき綺麗にしてきたの、ほら、仲間達が居るから周りを見張って貰って…ね。同じデザインの服に着替えたからどこも血が付いて無いでしょ?」



 く、苦しい言い訳だけど誤魔化されてくれるだろうか、8歳くらいに見えるけどしっかり者そうだし難しいかな。

 しかし予想に反して少年はあっさりと納得した様だった。



「ふぅん」



 それだけ言うと、私の言葉を待つ様にジッと見つめて来る。



「とりあえず名前を聞かせて貰おうか」



 あまりにも真っ直ぐに見られてたじろいでいたらリカルドが代わりに言ってくれた。

 少年は口を開いたが、すぐに口を閉じて俯いてしまった。

 そしてポツリと言葉を零す。



「名前は…ありません…」



「え? 今まで何て呼ばれてたの?」



「おい、とか…チビとか、熊獣人とか…」



「お父さんとかお母さんからは?」



「父さんはボクが産まれる前に死んでる…、母さんは私のぼうやって呼んでたし、名前を付ける権利はご主人様にあるけど付けられ無かったから…」



 私の質問にポソポソと答える少年、皆の方を振り返るとホセが顎をしゃくってきたが、その目はお前が責任を持って決めろと訴えている。

 名前か…、熊といえば黄色い熊かテディベア…、確か昔のアメリカ大統領の愛称からついたんだっけ? 

 ファミリーネームはわかるけど、ファーストネームが出てこないや。

 でもテディベアって作ってるのドイツだったよね、ここは賢者アドルフが住んでた国だし丁度いいかも。



「うん、賢者アドルフの故郷に関係あるし、テディでどうかな? 本来は愛称として呼ばれる名前みたいだけど…」



「いいんじゃないか?」



「素敵だと思うわ」



 リカルドとビビアナには好評の様だし、エリアスとホセも頷いているから良さそうだ。

 少年の方を見るとキラキラした目を私に向けていた。



「テディ…、それがボクの名前…?」



「そうよ、どうかな?」



「ボク…テディ…、えへへ、嬉しい…テディかぁ…」



 はにかむ様に笑いながら自分の名前を呟く姿はとても可愛くて思わず抱き締めて撫でくり回そうとしたら、その行動を読んだホセに肩を掴まれ止められた。


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