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想走のシュトーレン

朝から降り続く雨のせいで、

実家に帰るのがさらに億劫になった。


それでも用事があり、

夕方から電車に揺られて帰ることになった。


用事を済ませ、

晩御飯の準備を手伝う。


我が家では、晩ごはんと一緒に

次の日のお弁当も作るのが習慣だった。

久しぶりに見るそれは、

私が家にいた頃より少しだけ豪華に見えた。


晩ごはんを食べ終えたあと、

母が言った。


「これ、お皿に乗り切らへんから」


そう言って差し出されたのは、

シュトーレンの端切れだった。


毎年、

街が赤と白と緑に彩られる頃、

母はよくこれを焼いていた。


あれば食べるけれど、

わざわざ作ってほしいと頼むようなものではなかった。


というより、

実家にいた頃から、

「これが食べたい」と口にすること自体が少なかった。


幼少期、

出されたハンバーグを食べたくないと駄々をこね、

両親にこっ酷く叱られた記憶がある。


それ以来、

作ってもらった料理には

前向きな感想だけを言うようになった。


シュトーレンをひと口かじる。


晩ごはんで満腹になった私のお腹は、

新たな空間を作り出し、

皿の上の半分を吸い込んでしまった。


食べる様子を見ていた母の嬉しそうな顔が、

しばらく忘れられそうになくて、

小っ恥ずかしかった。


帰りの電車は、

窓の外の景色だけが先へ先へと走っていった。


向かいの窓に写る私の膝の上には、

阪神百貨店の紙袋。

きれいに包まれたシュトーレンが入っている。


シュトーレンというパンは、

毎日少しずつ食べ進め、

味の変化を楽しむものらしい。


だが、

家に着くなり、

「毎日少しずつ」という作法は守れなかった。


口にいれるたび、

甘さの奥からなぜか塩味が強くなっていく。


その理由を、

深く考えないことにした。


作者の芝生ななです。

読んでくださり、ありがとうございました。

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