表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壁の向こうの君が  作者: 蓮太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/19

親の心子知らず、子の心。

美琴は、疲れきっていた。

これまでの疲れを、睡眠不足を解消するかのように、夕方から眠りについた美琴が目を覚ましたのは、次の日の朝だった。

日も高く上がり、外は明るい。


美琴は、バイトも休むと連絡していた。

今日はゆっくり休める。

そう思いながら、隣りに眠る詩音の寝顔を見つめていた。

(可愛い。詩音くんも私の事好きになってくれないかな。)

幸せいっぱいの気持ちで、美琴はスマホを手に取る。


「わぁー!」


「ん?どうした?」

美琴の叫び声に、詩音が目を覚ました。


「お母さんから着信が。」


「なんでそれで騒いでるんだ?」


「・・・32件。」

美琴は怯えるようにいった。


「それは・・・まずいな。」


「あっ!またかかってきた!」


「でなよ。」


「うん。・・・もしもし。」


「美琴!どこにいるの!?なんで電話出ないのよ!」


「ごめん・・・色々あって友達の家にいます。」


「友達って・・・まさか男の子じゃないわよね?」


「えっ?男の子・・・です。でもね、」


「すぐ帰ってきなさい!バカ!心配したのよ!今すぐ帰ってきなさい!

プー、プー。」


「・・・まずい。お母さんめっちゃ怒ってたよ。」


「俺も一緒に行く。説明するから。」


「・・・助かる。」

美琴は、幸せの絶頂から奈落の底へと突き落とされた気分だった。


美琴と詩音は身支度を整え、階段を下りる。

「あら、おはよう。朝ごはん食べるでしょ?」


「母さん!それどころじゃない!」

俯く美琴の隣りで、思い詰めた様に詩音が叫んだ。


・・・・・。


「なるほど。で、詩音も一緒に行くって事ね。」


「そう。」


「よし!お母さんも一緒に行くわ!」


「余計にややこしくならないか?」


「大丈夫、大丈夫。さっ、いきましょ!」

詩音の母は先陣を切る様に、玄関へ向かう。


「あの!」

美琴は、詩音の母に叫んだ。


「どうしたの?早く行かないと。」


「迷惑ばかりかけてごめんなさい。」


「いいのよ!さっ、いきましょ!」


「未来のお嫁さん。」

母は嬉しそうに呟いた。


楽しそうな母の後ろを、俯きながら二人は歩いていた。


「お母さん、あそこです。」


「よしっ!」

母は気合を入れる様に言った。


「美琴!」

アパートの前で美琴を待っていた美琴の母が駆け寄ってきた。


「なんなんですか!うちの子を!」

美琴の母は、美琴の友達が詩音で、その母親が一緒に来たのだと理解している様で、詩音の母に怒鳴る様に言った。


「ごめんなさい。私も、連絡しておく様に言っておくべきでした。

ただ。」


「ただ、何ですか?」

美琴の母は不機嫌そうに言う。


「美琴ちゃん、すごい熱で寝込んでたので。」


「美琴!だからって何でうちにいないの?」

美琴の母は、心配でおかしくなりそう。

そんな雰囲気だった。


黙って聞いていた詩音だったが、こらえきれずに前に出た。


「美琴のお母さん!」


「な、何?」


「説明する。

美琴は学校で倒れた。

俺が保健室まで運んだ。

美琴は少し寝たけど、よくならなくて、美琴を背負って家まで連れてきた。

そしたら家には誰もいないし、鍵は教室に忘れるし。

俺の家、近くだから俺が連れていった。

美琴は泥のように眠ったよ。

美琴は・・・美琴は疲れ切ってるんだ!電話なんかで目が覚めないくらい!

美琴のお母さん!美琴に甘えすぎだろ!俺、席隣りだけど、どんどん疲れていく美琴の事、もう見ていられない!」


「待って、詩音くん!もういい、いいから!私しかいないの・・・だから。」

美琴は詩音の服の裾をつかみ、訴えるように言うと、張りつめた糸が切れたかの様に、一粒の涙が頬をつたった。


「で、でも。こんなに頑張ってるのに、何も知らないのに、頭ごなしに叱って。

耐えられない!」


「もう、分かりました。

今日はお帰り下さい。」

美琴の母は、俯くとアパートへと歩いていった。


「ありがとうごさいました。

うちの母がすいません。

いつもは、優しくて、素敵なお母さんなんです。本当にごめんなさい。」

美琴は頭を下げると、母に駆け寄り腕を組んだ。


「美琴。」

母の頬には、涙がつたって流れて落ちていた。


「お母さん、ごめんね。

今度、詩音くんの家に謝りに行こうね。」


「そうね。ごめんね美琴。」


美琴の母は、自分も、美琴も限界だと感じていた。

実家に帰り、母親に相談したが、母親は歳を重ねていて、自分と暮らしたら余計に負担になるかもしれない。

今は入る施設を探し始めていると、期待には答えてもらえなかった。

美琴が心配でもあり、泊まるつもりだったが、その日のうちに帰ってきた。

美琴はいなくて、電話にも出ない。

母は頭がおかしくなりそうだった。

と、美琴に謝りながら、話したそうだ。


「詩音、やるじゃない!見直した。」

母は嬉しそうに歩き出した。

「別に。」


「出た、別に〜。」


「美琴と同じ事言うなよ。」


「美琴ちゃんにも別に、別にって言ってるの?嫌われるわよ〜。」


「何だよ。

・・・母さん、その。

色々、ありがとう。」


「いいわよ。私も、美琴ちゃんの力になれる事があれば何でもするから、言いなさいよ〜。」


「うん。ありがとう。」

美琴の事を心配しながらも、詩音は母と一緒に帰路についた。


詩音は、家につくなり、美琴にメッセージを送った。


「大丈夫だった?」


メッセージに既読は付かない。


「心配だな。お母さんと話してるのかな。」

ベッドに横たわり、詩音は天井を見上げた。

「慣れない事するもんじゃないな。

美琴のお母さんにひどい事言ったな・・・なんか疲れた。」

勉強する気にもなれず、詩音はぼーっとしていた。

まぶたが自然に重くなる。

そして、眠った。


ブーブー。

ブーブー。

ブーブー。


スマホが鳴り、詩音は目を覚ました。

外はもう暗い。


「寝てたのか。」

スマホを手に取り、メッセージを開いた。



(詩音くん、ありがとう!)


(お母さんと話した。また話すね。)


(元気になったから、明日からお仕事がんばります!)


「まったく。少しは休めばいいのに。」


(良かったな。あんまり無理するなよ)

っと。


ブーブー。

(ありがとう!明日に備えて寝るね。)

ブーブー。

(また月曜日!)


「寝るの早いな。やっぱり疲れてるんじゃ。」


(うん。おやすみ。)


ブーブー。

(おやすみなさい。)


「あぁ、この湧き上がる感情は何なんだ・・・明日、様子見に行くか。」


詩音は一人呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ