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壁の向こうの君が  作者: 蓮太郎


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心配なだけじゃない?

「だんだん日が長くなってきたね〜。」


「そうだな。」


「詩音くん、無口だね〜。」

美琴は、2つの伸びる影を見ながら不安そうにする。


「人と関わらない様にしてきたから。」


「そう。私といるのつまらない?」


「俺さっ。」

「別に」

美琴はまた、詩音のマネをした。

「あれっ?ハズレたね。続きどうぞ!」

美琴は、詩音の前に出て振り向き、上目遣いで続きを待っている。


「もぅいいよ。」


「えっ?怒った?」


「怒ってない。」


「じゃあ続き。」


「・・・分かったよ。」

(美琴といるとペースが乱される。)

「俺さ、現実世界から逃げたいとずっと思ってた。勉強も小説も現実から解放されるから。だから好きなんだ。

でも、空想ゼロのお前と出会って、」


「ブー!」

美琴は話の腰を折る様に、詩音の前で腕をクロスさせて、バツを作った。

「お前じゃないでしょ〜。言い直し。」

頬を膨らませて美琴はスネている。


「はぁ。美琴と出会って・・・ここ数日の俺は、現実世界に引き込まれる。

おまっ・・・美琴に。

それは、不快じゃないし・・・少し楽しい。

現実世界に壁を作ってる事に不安もあったし、この壁を平気ですり抜けて俺を現実世界に引き戻して、楽しさを少しだけ教えてくれた美琴に感謝している。」


「ふふっ。難しいなぁ〜。とりあえず詩音くんの中では私はが雑な印象なのね。」


(笑ったり、落ち込んだり忙しい奴だな。)

「が雑な印象ではないぞ。非現実的な俺に対して、現実的で・・・あとは、喜怒哀楽が激しいとか?」


「何それ〜。褒められてる気はしないよね〜。」


「ほ、褒めてる!

・・・つまり、だ。おまっ・・・美琴は、俺と正反対なんだ。

最初は苦手だと思った。

でも、話してみると楽しい。

刺激をもらえるというのか・・・

そうだ!うどんに七味をかけるみたいな感じだよ!」


「あはははっ!分かりませ〜ん!」


「な、なんでだよ!優しい味のうどんはそのままでも美味しいけど、七味をかけたらまた違う美味しさに変わるだろ!?そう言う事だ。」

これで伝わったとばかりに、詩音は満足気だ。


「・・・私は七味・・・刺激物。」

美琴は下を向いて、進行方向へ向き歩き出した。


「おぃ、美琴。なんで落ち込むんだよ。

褒めてるんだぞ?」


「だって、私はうどんに七味かけないし。私は詩音くんにとって、あっても無くてもいい七味なんでしょ?」


「待て!お前がどうかは知らないけど、俺は、うどんに七味は必須だ!」


「もぅ〜。分かったよ。

じゃあ、まとめよう!」

美琴は、再び足を止め詩音の方を向いた。

「結論!詩音くんはもう、私無しでは生きていけない!って事ね?」

美琴はイタズラな顔をしている。


「かもな。」


「えっ?」

照れくさそうに答える詩音の返答の返答に、美琴は少し困った。

「宜しい!じゃあ私を七味扱いした事は許そう。」


「それはどうも。」



二人はまたゆっくりと歩き出した。


「あっ!後、さっきまたお前って言った〜。」


「はいはい。ごめんなさい。美琴さん。」


「次からはペナルティーだからね〜。」


「それは困るな。」


二人を後ろから照らす夕日。

二人の影は長く長く伸びていた。


美琴は足を止めた。

「ここがうち。」


「近いな。うちは5分くらい先だ。」


「知ってる〜。始業式の日に詩音くんが家から出てくるの見た。」


「そう。もしかして、小学校から一緒だったのか?」


「違うよ。ここに引っ越してきたのは最近だから。」


「そっか。」


「うん。あがってく?」


「忙しいだろ?それに、仕事だったんだから疲れてるだろ?」


「うん・・・まぁ。」

美琴は少し俯いた。


「またさ・・・辛くなったらいつでも呼んで。・・・俺でよければ。」


「ありがとう!じゃあ!また明日。」


「うん。また明日。」


美琴は、詩音が見えなくなるまで後ろ姿を見つめていた。

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