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壁の向こうの君が  作者: 蓮太郎


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19/19

約束。

「卒業証書授与。」


「高倉 詩音。」


「はい。」


卒業式。

詩音は生徒代表で、舞台へと上がるり卒業証書を受け取った。


詩音と美琴は、初日の出の日から恋人として学園生活を満喫し、卒業の日を迎えた。


「詩音く〜ん!」

「美琴。」

卒業式も終わり、美琴は詩音に駆け寄った。

「・・・しばらくお別れだね。」

美琴は、俯いて詩音の胸におでこを当てた。

「俺、大学卒業したら、いい会社に入れるように頑張るよ。」


「うん。私もお仕事がんばるね!」


「おーい!高倉!写真撮ろうぜ!」

「そうだな。」

安藤と渚が駆け寄っきた。


4人は、仲良く並び写真を取る。

「ちょっと!私も入れてよ!」

理乃が写真に乱入する。


「5人揃ったね。」

美琴は、詩音を見て微笑んだ。


帰り道、5人は名残惜しそうに、歩いている。

「高倉はやっぱりすごいよな〜。ハンバーグだっけ?」

「ハーバードよ。」

渚は呆れた様に言う。


「別に、勉強くらいか取り柄ないし。」

「ダーメー!」

美琴は、詩音の頬をつねった。

「いつも言ってるでしょー、詩音くんはいっぱいいいとこあるから、自信持ちなさい!」

「う、うん。」


「あはははっ!美琴は詩音をしっかり尻にしいてるわね。」

理乃は楽しそうに笑っている。

「そう言うつもりはないんだけどな〜。三歩下って歩くのは嫌だけど。」


「いいと思うよー。」

あーぁ、結局私には王子様現れなかったな〜。

理乃は少し寂しそうにしている。


「理乃は素敵な女の子だよ。王子様には大学で出会うよ。きっと!」

美琴は、理乃を励ます様に、背中を優しく叩いた。

「ありがとう〜美琴〜。」

「ちょ、ちょっと〜!」

美琴は理乃に抱きつかれ、もがいている。


「でもさ〜、お前ら二人、しばらく会えないよな?」

安藤は心配そうだ。

「そうだな。帰ってくるのも結構お金かかるし、多分向こうに行きっぱなしになるだろうな。」


「・・・大丈夫!今は電話もできるし!」

美琴はすごく寂しそうに笑った。



楽しい日々ももう終わってしまう。

歩みを進めるごとに、安藤と渚とお別れをし、理乃を見送り、詩音は、美琴を家まで送っていた。


「美琴。」


「何?」

二人きりになった所から、二人は手を繫いでいた。

「俺、美琴を迎えに来るから。

待っててくれる?」


「うん。待つよ。ずーっと待ってる。」

美琴の頬には、堪えていた涙がつたっている。


「ごめんな。やっぱり地元の大学にすれば」

「ダメ。その話はいっぱいしたでしょ?寂しいよ。寂しいけど・・・絶対迎えにきてね。」


「うん。必ず。」


「着いちゃった。」

「だな。」

詩音は、電柱の影に美琴を引き寄せた。

美琴は、詩音を見つめて目を閉じた。

詩音は唇を重ねる。


「・・・しばらくお預けだね。もう1回して。」

美琴は、寂しそうに笑う。

「うん。」


「・・・・グスン。」

「俺、美琴の事泣かせてばかりだな。」

「大丈夫だよ。あっと言う間だよきっと!」

「そうだな。頑張ろうな。」

「うん。」

美琴は、詩音と繋いだ手を離した。

「行って!がんばれ詩音!明日、お見送り行けなくてごめん。」


「仕事だろ?美琴もがんばれ!

・・・じゃあ行くな。」


「うん。」

美琴は、詩音に手を振り詩音が見えなくなっても立ち尽くしていた。

「卒業すのに3年〜5年はかかると思うって詩音くん言ってたな。ダメだな。私。・・・ちゃんとしないと。」

美琴は、気合を入れる様に空を見上げた。



「美琴ー!これどう?」

「わぁー!すごく可愛い!」

卒業から2年、美琴は洋服のデザイン会社に就職し、少しづつ仕事を任される様になっていた。

「早ければ・・・あと、1年か。」

美琴は、ふと窓から空を見上げた。

「あの日も私、空見てたな。この空は、詩音くんとつながってるかな?

・・・ダメダメ!がんばるぞ〜!」


詩音と美琴は、時差があったりそれぞれ忙しく、中々連絡を取れなくなっていた。

美琴は、それでも、詩音を信じて待っていた。

忙しい毎日に、クタクタになる。

それで良かった。

忙しさが、不安な気持ちも、寂しい気持ちも和らげてくれたから。


「それでも・・・たまになる。詩音レスに・・・詩音くん、会いたいよ。」


美琴は、涙が溢れ出して、泣いている自分に気づく。

「定期的にこうなるんだよね・・・グスン。」

街灯に照らされた夜道をトボトボと歩いていた。


「美琴!」


「ダメだな・・・私。ついに幻聴?

詩音くんの声が聞こえる・・・ダメだよ、もう。会いたいよ〜。」


バサッ。

「えっ?」


「お待たせ。」

詩音は俯いて歩く美琴を抱きしめた。


「・・・詩音・・くん?なんで?」

美琴の視界は涙でボヤケていた。

それでもそこに写ったのが詩音だと、確信した。

「この声、抱きしめられた温もり、匂い・・・忘れられなかったよ。ずっと、ずっと、毎日、毎日思い出してた。

・・・詩音く〜ん。」


「また泣かせてしまったな。」

詩音は、美琴の涙をぬぐった。

「もう、これからはずっと一緒だ。」


「なんで?」

(君が流させた涙、やっと拭ってくれるんだね。私のボヤケてた世界は、今はすごく綺麗に見えるよ。詩音くんがちゃんと見える。ありがとう。)

「でも、詩音くん、お帰り。」


「ただいま。」


二人は強く、強く抱きしめ合った。


「美琴、落ち着いたか?」

「うん。詩音くん、ずっと一緒って、もう向こうには行かないの?」

詩音は美琴の手を引き、近くにあったベンチに座った。


「うん。俺、頑張ったから。」


「でも、卒業まで3年はかかるんじゃ?」


「先輩にさ、理論上は2年で卒業可能だって言われて、2年で卒業するって決めて頑張った。」


「すごいね〜。さすが私の王子様。」


「勉強だけじゃないぞ。コミュニケーションも取れるようになったし、バイトも頑張った。」


「大丈夫だったの?無理しすぎだったんじゃない?」


「あ〜、何回か倒れた。でも、それでも早く美琴に会いたかったから。」


「・・・ありがとう。」


「でさ、オンラインで就職活動もして、この近くに就職決まってるんだ!

だから・・・・あっ。」


「えっ?何?」


「いやっ。」


「何?言って。」


「もっとちゃんとした時に言いたかったんだけど。」

詩音はポケットに手を入れながら、美琴の左手を取った。

「美琴、俺と結婚して下さい。」

詩音は、美琴の薬指に指輪をはめた。

「・・・う〜。うわぁ~!」

「な、なんで泣くんだよ。」

「うれしいの〜!」

美琴は泣き顔を隠すように、詩音の胸に顔を埋めた。

「末永く、よろしくお願いします。」

「うん。よろしく。」

詩音は、優しく美琴を抱きしめた。


詩音と美琴は手を繫いで、街灯に照らされた夜道を歩く。

「あ〜ぁ。夜景の見えるレストランとか予約するつもりだったのにな。」


「いいよ。今日はね、私の人生でいーちばん、幸せな日。絶対忘れないよ。」


「これからもっともっと幸せになるよ。」


「そうだね〜。これからは毎日が幸せだ。」


「うん。」


二人は立ち止まり、微笑み合った。



       「完」


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