約束。
「卒業証書授与。」
「高倉 詩音。」
「はい。」
卒業式。
詩音は生徒代表で、舞台へと上がるり卒業証書を受け取った。
詩音と美琴は、初日の出の日から恋人として学園生活を満喫し、卒業の日を迎えた。
「詩音く〜ん!」
「美琴。」
卒業式も終わり、美琴は詩音に駆け寄った。
「・・・しばらくお別れだね。」
美琴は、俯いて詩音の胸におでこを当てた。
「俺、大学卒業したら、いい会社に入れるように頑張るよ。」
「うん。私もお仕事がんばるね!」
「おーい!高倉!写真撮ろうぜ!」
「そうだな。」
安藤と渚が駆け寄っきた。
4人は、仲良く並び写真を取る。
「ちょっと!私も入れてよ!」
理乃が写真に乱入する。
「5人揃ったね。」
美琴は、詩音を見て微笑んだ。
帰り道、5人は名残惜しそうに、歩いている。
「高倉はやっぱりすごいよな〜。ハンバーグだっけ?」
「ハーバードよ。」
渚は呆れた様に言う。
「別に、勉強くらいか取り柄ないし。」
「ダーメー!」
美琴は、詩音の頬をつねった。
「いつも言ってるでしょー、詩音くんはいっぱいいいとこあるから、自信持ちなさい!」
「う、うん。」
「あはははっ!美琴は詩音をしっかり尻にしいてるわね。」
理乃は楽しそうに笑っている。
「そう言うつもりはないんだけどな〜。三歩下って歩くのは嫌だけど。」
「いいと思うよー。」
あーぁ、結局私には王子様現れなかったな〜。
理乃は少し寂しそうにしている。
「理乃は素敵な女の子だよ。王子様には大学で出会うよ。きっと!」
美琴は、理乃を励ます様に、背中を優しく叩いた。
「ありがとう〜美琴〜。」
「ちょ、ちょっと〜!」
美琴は理乃に抱きつかれ、もがいている。
「でもさ〜、お前ら二人、しばらく会えないよな?」
安藤は心配そうだ。
「そうだな。帰ってくるのも結構お金かかるし、多分向こうに行きっぱなしになるだろうな。」
「・・・大丈夫!今は電話もできるし!」
美琴はすごく寂しそうに笑った。
楽しい日々ももう終わってしまう。
歩みを進めるごとに、安藤と渚とお別れをし、理乃を見送り、詩音は、美琴を家まで送っていた。
「美琴。」
「何?」
二人きりになった所から、二人は手を繫いでいた。
「俺、美琴を迎えに来るから。
待っててくれる?」
「うん。待つよ。ずーっと待ってる。」
美琴の頬には、堪えていた涙がつたっている。
「ごめんな。やっぱり地元の大学にすれば」
「ダメ。その話はいっぱいしたでしょ?寂しいよ。寂しいけど・・・絶対迎えにきてね。」
「うん。必ず。」
「着いちゃった。」
「だな。」
詩音は、電柱の影に美琴を引き寄せた。
美琴は、詩音を見つめて目を閉じた。
詩音は唇を重ねる。
「・・・しばらくお預けだね。もう1回して。」
美琴は、寂しそうに笑う。
「うん。」
「・・・・グスン。」
「俺、美琴の事泣かせてばかりだな。」
「大丈夫だよ。あっと言う間だよきっと!」
「そうだな。頑張ろうな。」
「うん。」
美琴は、詩音と繋いだ手を離した。
「行って!がんばれ詩音!明日、お見送り行けなくてごめん。」
「仕事だろ?美琴もがんばれ!
・・・じゃあ行くな。」
「うん。」
美琴は、詩音に手を振り詩音が見えなくなっても立ち尽くしていた。
「卒業すのに3年〜5年はかかると思うって詩音くん言ってたな。ダメだな。私。・・・ちゃんとしないと。」
美琴は、気合を入れる様に空を見上げた。
「美琴ー!これどう?」
「わぁー!すごく可愛い!」
卒業から2年、美琴は洋服のデザイン会社に就職し、少しづつ仕事を任される様になっていた。
「早ければ・・・あと、1年か。」
美琴は、ふと窓から空を見上げた。
「あの日も私、空見てたな。この空は、詩音くんとつながってるかな?
・・・ダメダメ!がんばるぞ〜!」
詩音と美琴は、時差があったりそれぞれ忙しく、中々連絡を取れなくなっていた。
美琴は、それでも、詩音を信じて待っていた。
忙しい毎日に、クタクタになる。
それで良かった。
忙しさが、不安な気持ちも、寂しい気持ちも和らげてくれたから。
「それでも・・・たまになる。詩音レスに・・・詩音くん、会いたいよ。」
美琴は、涙が溢れ出して、泣いている自分に気づく。
「定期的にこうなるんだよね・・・グスン。」
街灯に照らされた夜道をトボトボと歩いていた。
「美琴!」
「ダメだな・・・私。ついに幻聴?
詩音くんの声が聞こえる・・・ダメだよ、もう。会いたいよ〜。」
バサッ。
「えっ?」
「お待たせ。」
詩音は俯いて歩く美琴を抱きしめた。
「・・・詩音・・くん?なんで?」
美琴の視界は涙でボヤケていた。
それでもそこに写ったのが詩音だと、確信した。
「この声、抱きしめられた温もり、匂い・・・忘れられなかったよ。ずっと、ずっと、毎日、毎日思い出してた。
・・・詩音く〜ん。」
「また泣かせてしまったな。」
詩音は、美琴の涙をぬぐった。
「もう、これからはずっと一緒だ。」
「なんで?」
(君が流させた涙、やっと拭ってくれるんだね。私のボヤケてた世界は、今はすごく綺麗に見えるよ。詩音くんがちゃんと見える。ありがとう。)
「でも、詩音くん、お帰り。」
「ただいま。」
二人は強く、強く抱きしめ合った。
「美琴、落ち着いたか?」
「うん。詩音くん、ずっと一緒って、もう向こうには行かないの?」
詩音は美琴の手を引き、近くにあったベンチに座った。
「うん。俺、頑張ったから。」
「でも、卒業まで3年はかかるんじゃ?」
「先輩にさ、理論上は2年で卒業可能だって言われて、2年で卒業するって決めて頑張った。」
「すごいね〜。さすが私の王子様。」
「勉強だけじゃないぞ。コミュニケーションも取れるようになったし、バイトも頑張った。」
「大丈夫だったの?無理しすぎだったんじゃない?」
「あ〜、何回か倒れた。でも、それでも早く美琴に会いたかったから。」
「・・・ありがとう。」
「でさ、オンラインで就職活動もして、この近くに就職決まってるんだ!
だから・・・・あっ。」
「えっ?何?」
「いやっ。」
「何?言って。」
「もっとちゃんとした時に言いたかったんだけど。」
詩音はポケットに手を入れながら、美琴の左手を取った。
「美琴、俺と結婚して下さい。」
詩音は、美琴の薬指に指輪をはめた。
「・・・う〜。うわぁ~!」
「な、なんで泣くんだよ。」
「うれしいの〜!」
美琴は泣き顔を隠すように、詩音の胸に顔を埋めた。
「末永く、よろしくお願いします。」
「うん。よろしく。」
詩音は、優しく美琴を抱きしめた。
詩音と美琴は手を繫いで、街灯に照らされた夜道を歩く。
「あ〜ぁ。夜景の見えるレストランとか予約するつもりだったのにな。」
「いいよ。今日はね、私の人生でいーちばん、幸せな日。絶対忘れないよ。」
「これからもっともっと幸せになるよ。」
「そうだね〜。これからは毎日が幸せだ。」
「うん。」
二人は立ち止まり、微笑み合った。
「完」




