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壁の向こうの君が  作者: 蓮太郎


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18/19

2つの口づけ。

「ゔ〜。」


「・・・。」


「ゔ〜。」


「うるさいぞー。」


「安藤〜。」


学校最終日。

クリスマスイブから、詩音は美琴と話していない。


「聞いたよ〜。詩音最低〜。」

安藤には見放され、反対隣りの席からは理乃が攻撃してくる。


「やめてくれ〜。」

詩音は机に伏せる。


「お前さ、早く謝れよ。」

「謝れよ。」

安藤と理乃は、詩音を詰める。


「だってよ〜。」

詩音は、チラッと美琴を見た。

「ふんっ。」

一瞬目が合ったが、美琴は目をそらした。

「ほら〜、今の見た?見ただろ?」

詩音は安藤に詰め寄った。

安藤は詩音の肩を押し、遠ざける。

「当たり前だろ。お前が悪いんだから。

悪い事したらなんて言うんだ?」


「ごめんなさい。」


「・・・俺に言うな。」

安藤は、呆れた様子で俯いた。


「あ〜!フラれて良かったわー。詩音がこんなに情けない男だったとは。」

理乃は、詩音をあおる。


「ホントにな〜。」


「もうほっといてくれ。」

詩音は机に伏せて動かなくなった。


「あっ、スネた。」

安藤と理乃は顔を見合わせ、少しやり過ぎたかなと、反省した。


詩音と美琴は、結局一言も話せないまま、冬休みがやってきた。


詩音は、毎日を憂鬱にすごしていた。

大晦日。

詩音は一人、ベッドで項垂れていた。

「何だよ。・・・美琴に嫌われて・・・安藤に見放され・・・理乃に馬鹿にされて。俺、カッコ悪いな・・・恋なんてしらなければ良かった。」


ブーブー。ブーブー。

スマホがなり、詩音は飛びついた。

「美琴?!」


「・・・安藤かよ。」

「もしもし。」


(お〜ぃ。高倉〜。お前電話出る前に安藤かよ。とか思っただろ?)


「・・・少し。」


(なんて奴だ。まぁいいや。今年もよろしくな!)


「あ、あぁ、こちらこそ。」


(でさぁ、今から出てこれるか?)


「はぁ?こんな真夜中にか?」

(こんな真夜中にだ。)

時計の針は4時を指していた。


「どこ行くんだ?」


(初日の出見に行こう!神社の奥の階段の上に展望台みたいのがあってさー、俺、毎年一人でそこにいってんだよ。)


「ま、まぁ初日の出見に行くなら親も許してくれそうだけど。」

(おっ!乗り気じゃん!じゃあ、30分後に神社の鳥居の前集合な!)

「分かった。」


プープープー。


「行動力のある奴だな。初日の出か。確かに見たいな。」

詩音は、重い体を起こし神社へと向かった。


「おっ、きたきたー!」

「すまん、待ったか?」

「いやっ、時間通りだ。」

「じゃあ行くか!」

詩音は初日の出が楽しみな様子だ。

「まだ揃ってないから、ちょっと待て。」


「えっ?誰か来るのか?」


「・・・渚」

「俺邪魔だろ?!やっぱり帰る。」

詩音は安藤を遮る様に言う。


「いいから!」

「三人とか意味分からん。帰るってー。」


「お待たせ。」

二人が揉めていると、後ろから渚の声がする。

詩音は振り向くと、大人しくなった。

「・・・美琴。」


「渚、詩音くん来ないって言ったよね?」

美琴は小声で渚に怒っている。


「ごめん、ごめん。なんでだろうね〜。ふっしぎー。」

渚はとぼけている。


「はぁ。別にいいけど。初日の出、見たかったし。行こ。」


詩音と美琴は、話す事なく、安藤と渚の後ろを歩く。


当たりはまだ暗い。

街灯と懐中電灯の明かりを頼りに、神社の階段を上がる。

「ハァハァハァ。ねぇ、安藤、これ、どこまで登るの?もはや登山よ、これ。」

「えっ言ってなかった?あと30分くらいは登るぞ。」

「嘘!・・・覚悟を決めるわ。」

「大げさだな。いざとなったら抱っこしてやるよ。」

「結構で〜す!」

安藤と渚は楽しそうだ。

その後ろを亡霊の様に詩音と美琴は黙ってついてきていた。



「わぁー高い!夜景もいい感じだね〜!」

目的地に着くと、嬉しそうに美琴がはしゃぎだした。


展望台には、誰もいない。

展望台の端と端にベンチが2つあるだけだ。

「じゃあ、俺たちはこっちのベンチ座るから、高倉たちは向こう。」

安藤は、向かいのベンチを指さした。


「えっ?」


「もう、空気よんでよ〜。邪魔邪魔〜。」

渚は、詩音と美琴をクルッと回すと、背中を叩いた。


二人は仕方なく少し離れた向かいのベンチに座った。


「・・・。」

「・・・。」

お互いに気不味い気持ちで、口をひらけないでいた。


しばらく黙っていると、雪が振り始めた。

「あっ、雪。」

美琴が、掌を空に掲げ、少し嬉しそうにしていると、雪は急激に強まり出した。

「いやいや!これっ!まずいよね?!」

美琴は立ち上がり、渚に訴えかける。

「残念だけど、帰った方がよさそうだね。」

渚も立ち上がる。


「キャッ。」

詩音は、コートを脱いで美琴を抱き寄せ、二人とも被る様にコートを頭から被り無理やり美琴をベンチに座らせた。

「な、何よ。」

美琴は不機嫌そうに詩音に言う。

「安藤、この雪多分視界が見えなくなる。動くと危ないから、やむまでここにいた方がいい!多分しばらくしたらやむと思う。」


「そ、そうか?」

立ち上がった安藤に詩音は叫んだ。

渚を抱き寄せ、安藤はベンチに座った。

「大丈夫なの?」

渚は心配そうにする。

「まぁ、ヘタレだけど勉強はできるからなーあいつ。気象予報士の問題集とか勉強済みです。みたいな感じじゃないか?」

「あり得る〜。」

渚は笑っている。



「ねぇ、詩音くん、私まだ許してないんだけど。」


「いいから!こうしないと二人とも雪を避けられないだろ?」


「そ、そう?」

(な、何?ズルくない?カッコいいんだけど。突然、雰囲気が変わったな〜。)

詩音の事はもう怒っていなかったが、怒っている設定で接していたのに、

詩音の雰囲気が変わり、動揺している。


「ねぇ、安藤、私もあれして。」

渚は、美琴を羨ましそうに指さした。

安藤は、コートを脱ぎ、頭から被った。

「コートちっちゃい。」

詩音の大きめのロングコートと違い、安藤はダウンジャケットだった。

「わがまま言うなよ〜。一応二人とも被ってるだろ?」


「だって安藤、肩出てるし。」


「お、俺はなんでもいいよ。渚が濡れないなら。」

「ありがとう。」

渚は顔を少し赤くした。


詩音の予想通り雪は急激に強まり、視界を奪う。

「美琴達見えなくなったね。」


「だな。本当に止むのか?でもこれで山下ってたら危なかったかもな。」

「そ、そうだね。」


「どうかした?寒いか?」

俯いた渚に心配そうに安藤が問いかけた。

「ねぇ。蓮。キスして。」


「えっ?!」

安藤は驚きながら、渚を見つめる。

「い、いいの?」


「うん。高倉くんもヘタレだけど、蓮も負けてないよ。もう、待つのやめた。」

渚は、恥ずかしそうに安藤を見つめた。


「悪かったな。大切にするってのが難しい。」


「大切に思ってくれてありがとう。」

ゆっくりと目を閉じた渚に、安藤は唇を重ねた。


「ふふっ。ファーストキスだ。」

「俺も・・・ちゃんとできてた?」

「うん。」

安藤と渚は寄り添い合い、幸せいっぱいになった。

「幸せ。安藤とずっと一緒にいたい。」

「戻ってるぞ。蓮、でいいよ・・・蓮がいい。」

「分かった。」



「・・・。」

猛吹雪の向こう側では、沈黙が続いていた。

「寒くないか?」

詩音は心配そうにする。

「寒い。でも大丈夫。」


「そっか。もう少ししたら止むと思うから。」


「うん。」


「・・・・その、美琴。」


「何ですか?」


「ごめん。クリスマスの日。」


「別にいいよ。」


「俺、美琴が誰でもいいからキスしてみたいと思ってるなんて思ってなかったから。そのパニックになって・・・美琴が傷つく事言ったよな。ごめん。」


「分かれば宜しい。」

美琴が少し笑うと、詩音は嬉しそうにした。

「で、詩音くんはあの時キスしたくなかったの?」


「・・・したかったけど、仮だし。

ちゃんとしてないのにキスしたらダメだと思った。」


「へぇ〜。したかったんだ。」


「うん。」


「じゃあ・・・できる様にしてよ・・・キス。」


「・・・美琴。」


「はい。」


「俺、考えてた。いつからか、正確ではないけど、正解か分からないけど、多分、教科書見せてって言われた時に美琴が笑う笑顔を見た時からだと思う。美琴の事、好きになったんだと思う。

美琴の事、好きだ。今は間違いなく、好きだ。俺の彼女になって欲しい。」


「ふふっ。いつからとかどうでもいいんだよ。詩音くんらしい告白だね〜。

私も、詩音くんが大好きです。

・・・これからもよろしくね。」

美琴の頬には涙が溢れていた。

色々とあった事を思い出しながら、気持ちが通じ合う嬉しさに、美琴は堪えきれなかった。

嬉しくて、嬉しくて、幸せだった。


「うん。」


「・・・これで、キス・・・できる?」


「いいのか?」

詩音は、親指で美琴の涙をふき取ったが、次々に涙は流れ落ちる。


「もちろん。」

美琴は、嬉しそうに目を閉じた。


二人が見つめ合う中、雪は突然止み、視界が開けた。

安藤と渚は、驚愕している。

視界の先には、涙を流しながら目を瞑る美琴に、ぎこちなく唇を重ねる詩音の姿があった。

「追いつかれたね。」

渚は、安藤に照れくさそうに言った。

「だな。良かった良かった。」

安藤は、満足気に何度も頷いた。


ゆっくりと離れる、詩音と美琴は、目を開けた。

「あれっ?雪、止んだね〜。」

「だな。」

二人はハッとした様子で、安藤と渚を見た。

『見た?』


『見た。』


同時に聞いて、同時に答えた4人は、顔を見合わせ、二人は俯き、二人は笑った。


「美琴!おめでとう!」


「ありがとう!」

照れくさそうに美琴は笑った。


「やればできるじゃん!」


「安藤・・・その、色々ありがとう。」

詩音は、申し訳無さそうにしながらも、嬉しそうだ。


「なー!高倉ー!日の出何時?」


「多分、あと15分くらいじゃないか?」


「そう。じゃあ、あと15分はごゆっくり〜!」

安藤は冷やかす様に言った。


「人前でするかよ!」

照れくさそうに詩音は俯いた。


「ねぇ、詩音くん。」


「何?」


「詩音くんの初恋は私?」


「う〜ん。気づかなかったんだけど、昔、一度だけ美琴への気持ちと同じ様な事があったかな。」


「な〜んだ。君は正直者だね。嘘でも初恋って言って欲しかったな〜。」


「ごめん。」


「その人は?どんな人?」


「知らない。」


「どういう事?」


「名前も知らないし、多分会う事もないと思う。」


「会っても浮気するなよ。」


「するかよ!・・・俺は美琴が好きだから。」


「ふふっ。宜しい。

・・・私がいつから詩音くんの事好きだったか聞きたい?」


「教えてくれるなら。」


「私が詩音君と出会ったのは、受験の時なんだよ?覚えてない?」


「・・・ごめん。」

美琴の金色の髪を見て、詩音は思考をめぐらすが、思い出せない様子だ。


「ぶ〜。」

美琴は頬を膨らませて少しスネた様子で口を開いた。

「受験の時さ、私の席、詩音くんの隣りだったの。でね、私、消しゴム忘れてパニックになってたの。そしたら、隣りの詩音くんが、消しゴムを半分に割って渡してくれた。そのおかげで、私受験受かれたんだ〜。あのまま消しゴム無かったらと考えるとゾッとする。その時、詩音くんの事、いいなって思ったの。入学式で詩音くん見つけた時すごく嬉しかったんだけど、詩音くんは女の子達から大人気で、でも壁があって。

高嶺の花だったから。あの日まで声はかけられなかったんだけどね。

それが私の初恋だったんだよ。」


「・・・美琴。」


「な、何?」


「美琴、昔は髪黒かったのか?」


「う、うん。バイト始めてから、地味だからもう少しがんばれって言われて、気は進まなかったんだけど・・・頑張ってみた。」

美琴は、金色の髪を指でくるくるしている。


「・・・そうか。さっきの、俺の初恋相手だけど・・・美琴だった。」


「えっ?どういう事?」


「消しゴム渡した時、笑いかけてくれただろ?その笑顔に心臓がすごい早くなって、しばらくその笑顔が頭から離れなかったんだ。多分・・・それが俺の初恋だ。」


「・・・。」

言葉が出ないほど、美琴は嬉しかった。

何も言わずに、美琴は詩音の胸にもたれかかる様に飛び込んだ。


「俺たち、ずっと前から思い合ってたんだな。待たせてごめん。」

詩音は美琴を抱きしめた。

「うん。待ったよ〜。これからいっぱい幸せになろっ。」

美琴も詩音の腰に腕を回し抱きしめた。

「そうだな。」


「お二人さーん!お熱いとこ申し訳ないけど、見てみろよー!」

安藤は立ち上がり叫んでいる。


太陽が水平線の向こうに顔を出している

「わあー!」

美琴は、立ち上がり、詩音の手を取った。

4人は並んで、初日の出を見つめる。


「今年もいい年になりますようにー!」

安藤が叫ぶ。


「ふふっ。最高の年明けだね。」

美琴は詩音に微笑みかけた。

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