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壁の向こうの君が  作者: 蓮太郎


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16/19

彼女(仮)。

「おっはよ〜美琴!」


「おはよう。元気そうね。」


「げっ、理乃。」

美琴に元気に挨拶する理乃を見て、渚は不機嫌そうにする。


「そんな顔しないでよ。」

理乃は渚に悲しそうにうったえた。


「何が?こうなるでしょ普通。美琴に何の様なのよ?」

渚は変わらず、不機嫌そうだ。


「渚、まだ授業始まらないし、ベランダ行こ。」

美琴は、渚と理乃を引っ張る様にベランダに出た。


「と、言うわけなんだけど。」

美琴は、昨日の夜の事を渚に話した。


「そう。美琴もお人好しよね〜。」


「別にそういう訳じゃないけど、詩音くんの事が無かったら、理乃とは言い関係を気づけそうな気がする。」


「はいはい。美琴がそう言うなら、私は気にしないけど。」

「渚!ありがとう!」

理乃は、嬉しそうに渚の手を取り、強く握った。

「はいはい。でも、理乃。ホントに諦められるの?美琴といると、詩音と関わる事が多くなると思うわよ?」


「う〜ん。まぁ、諦めなくても、諦めても詩音の気持ちは変わらないし、それなら別の人の事、好きになりたい。」


「そ、そう。」


「安藤くんとか?」


「・・・りーのー!」

美琴と渚は恐ろしい剣幕で理乃を睨んだ。

「ごめん、ごめん。冗談だよ。」

理乃はこんなに怒られると思っていなかったとばかりに、焦っている。


「ふふっ。」

美琴と渚は顔を見合わせて笑った。

「高倉くんと安藤以外なら応援するよ〜。さっ、そろそろ教室戻ろ。」

渚は、理乃の肩を優しく叩き教室に入った。


「美琴、ありがとう。これからよろしくね!」


「うん!」


二人は、微笑み合って教室へと入った。


理乃は、休み時間のたびに美琴と渚の所へやって来た。

美琴の思った通り、三人は気が合った様で、打ち解けるのに時間はかからなかった。


詩音と美琴は、あまり話さないまま時間が過ぎて行く。

変な感じでできた距離はなかなか縮まる事はなかった。

学校では、詩音が美琴と理乃両方ふったとか、もて遊んで捨てたとか、噂は面白おかしく広がった。


「あ、あの。高倉くん!」


「何?」


「す、好き。私・・・高倉くんの事が好きです。彼女にしてください!」

ここは学校の屋上。

詩音は、名前も知らない女子に呼び出されて、今に至る。


「ご、ごめん。」


「なんで?お試しでもいいよ?私の事好きになってもらえる様に頑張るから。」


「ごめん。」


「好きな人がいるとか?」


「・・・まぁ、多分。」


「多分・・・って。あ〜ぁ。そっか。分かった。聞いてくれてありがとう。」

女子生徒は、走り去って行った。


「はぁ。今月4人目か。疲れるな。」

詩音は、俯きながら教室へ向かった。


学校の高嶺の花だった詩音だったが、美琴と、理乃の一件以来、もしかすると!と思った女子達がこうして思いを伝えてくる様になってしまっていた。


「おっ、高倉。終わったか?」

教室に戻ってきた詩音に安藤が話しかけた。


「うん。ゔ〜。」

詩音は、机に伏せて項垂れた。


「お前さ、すごいよな?」


「何が?」


「もう今月4人目だっけ?」


「そうだよ。疲れた。」


「告白されるの嫌なら、早く彼女作れば?」


「幸せな奴は簡単に言うよな〜。」


「いつまでそうしてんだよ。いい加減美琴ちゃんに気持ち伝えないと誰かに取られてもしらないぞ?」


「そうだな。」

安藤は、この長すぎる微妙な空気に、詩音に呆れていた。


季節は冬。

もうすぐクリスマス。


「あー。ゔ〜。」


「もう、うるさいぞ。」

項垂れる美琴に渚が一喝する。


「だって〜。」


「だって〜何?!」


「もうすぐクリスマスだよ〜。」


「あんたさ、いつまでそうしてるつもり?詩音くんがあんなんだったら美琴が頑張るしかなくない?」


「うん〜。でも女の子としては、向こうから来て欲しいのよ〜。」


「そんな事言ってて、知らないよ〜。

詩音くん、結構告白されたりしてるみたいよ?」


「・・・う、うそ?そうなの?」


「安藤情報だから確かよ。確か先月から4人くらい。

・・・断るの面倒になって付き合っちゃうとか、高倉くんならあり得そうじゃない?」


「そんなに?!・・・確かにあり得る。」


「少しは焦った?」


「うん。」

屋上で、寒さに耐えながら美琴と渚は話ていた。


ガチャ。

屋上のドアが空いた。

美琴が振り向くと、詩音と女子が出てきた。

詩音はこちらに気づいてないようだ。



「高倉くん、好き。付き合って下さい。」

「ごめん。」

いつものやり取りが、美琴の視線の先で行われている。


「・・・詩音くん。」

「だから言ってるの。高倉くんも高倉くんだけど。」


「あっ、女の子帰ってく。」

「今回はセーフみたいね。」

「うん・・・ちょっと私、話してくる。」


「いってらっしゃい。私、教室戻るわ。あー寒い。」


「うん。」

美琴は、渚を見送ると詩音の所に駆け出した。

「詩音くん!」


「えっ?美琴?こんなとこでどうしたの?」


「ちょっと渚と話てた。そしたら、詩音くん告白されてるし〜。」


「あ、うん。最近多くて困ってる。」


「なんで断ったの?さっきの子、かなり可愛かったけど?」


「可愛かったけど、付き合うとかは別だし。」

「ふーん。可愛かったんだ。」

「い、いや、その、一般的な意見としてだな、」

「はいはい。なんで?なんで断ったの?」


「・・・そ、それは。」


「好きな人がいる。とか?」


「まぁ・・・多分。」

「多分って。さっきの子にも同じ事言ってないよね?」


「・・・言った。」


「・・・言ったんだ。傷ついたよ〜きっと。」


「えっ?何で?」


「そりゃあ、多分って。適当に答えられたって思うし。」


「な、なるほど。」


「仕方ない!私が彼女になってあげようか?」


「えっ?」

詩音は、顔を赤くして美琴を見つめる。


「カッコ仮!だよ?告白されるの疲れるんでしょ?私、詩音くんに沢山助けてもらったし、次は私が助けてあげる。」


「仮・・・か。」

詩音は俯いた。


「嫌?」


「えっ?いやっ、助かる。」


「よーし!じゃあ今日から私は詩音くんの彼女(仮)ね。」


「よ、よろしく頼む。」


「うん!よろしくね!」

美琴は、詩音の手を握りドアへと向かう。

「なぁ、美琴。手、繫いだままか?」


「そりゃあ〜私が彼女って学校中に広めるには、これが一番手っ取り早いよ?」


「そ、そうか。」

(久しぶりに心臓が。美琴。このままずっと一緒にいたい。)


「そうよ!」

(久しぶりに詩音くんに触れた。

ドキドキがやばい。彼女になれそうな気はしたけど・・・やっぱり、詩音くんから言って欲しい。)


二人は手を繋ぎ、教室まで歩いた。


「じゃあ、また。」

「うん、また。」


二人は自分の席に戻った。


「美琴、今の何!?まさか?」

手を繫いで教室に現れた二人の姿を見て、渚は嬉しそうだ。

「う〜ん。半分。」


「半分?何それ?」

「また後で話すね。」

「あー!早く聞きたい!今教えて!」

渚は興奮ぎみだ。


キーンコーンカーンコーン。

ガラガラ。

「みんな座れー!」

先生が教卓に向かいながら、着席を促した。


「ふふっ、時間切れ。また後でね。」

美琴は、渚に微笑みかけた。



「何それー!」

そして、放課後のバルコニー。

渚と理乃は呆れていた。

「余計な事言わずに彼女になりなさいよー!」

理乃は、少し苛立っていた。

「・・・だって。」

美琴はわがままかもしれないと思いながらも、詩音から告白して欲しい気持ちでいっぱいだった。

「詩音くんから告白したくなるくらい好きになって貰える様に、彼女(仮)、頑張るから〜。」

美琴は、理乃の腕に絡みつき許しを請う。

「まったく。好きにすれば〜。で、詩音は?」


「日直だから職員室みたい。」


「そっ。じゃあ、渚〜帰りましょう。」

理乃は教室に入りカバンを持つと、渚に腕を組んだ。

「そうね〜。まぁ、彼女(仮)頑張って〜。」

渚は呆れながらも応援した。


「はい。」

美琴は俯きながら答えた。


「美琴、あんまり長引くと(仮)から抜け出せなくなるかもよー。」

理乃は釘を刺すように言い捨て、渚と教室を出て行った。

「ゔ〜。二人とももう少し優しくしてよ。」

美琴は席に座り俯いた。


「お待たせ。」

渚達と入れ替わる様に、詩音が教室に戻ってきた。

「美琴、何か元気ない?」


「大丈夫だよ。帰ろっ!」

(あなたのせいでーす!なんて言えない。)


「そっか。」


帰り道。

二人は手を繫いで歩いていた。

美琴は、詩音の耳元に近づいた。

「えっ、何?」

詩音は顔を赤くした。

「見られてますよ〜。」

「そ、そうだな。」

詩音は、久しぶりに美琴の距離感の近さに、ひどく動揺していた。


周りを歩く生徒達は、二人に注目しながら、コソコソと話ている。


「作戦成功だね。」

美琴は詩音に微笑みかける。

(可愛い。間違いない。これは・・・恋という奴だ。・・・美琴。)

詩音は確信した。

自分が恋した事を。


美琴の思惑通り、二人が付き合ったと言う噂はすぐに学校中にひろがった。


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