友情。
ガヤガヤとうるさい教室。
昼休み。
詩音は、美琴と出会う前の様に小説を呼んでいた。
(理乃は休みか。大丈夫かな。)
詩音は隣りの誰もいない席をチラッと見た。
「なぁ、高倉。」
安藤が声をかけて近づいてきた。
「お前さ、堺さんの事どう思ってんの?」
「えっ?!ど、どうって。」
「好きなんだよな?」
「・・・う、うん。」
「そっか〜。今日は理乃ちゃんいないんだし、堺さんとこ行ってこいよ。」
「・・・あ、安藤。」
「何?」
「ちょっと場所変えて話さないか?」
「何?相談か?いいぞ。」
安藤はニコニコしながら立ち上がる。
二人はベランダに出た。
「で?どうしたんだよ。」
「俺、気づいたんだ。美琴が・・・その、好き?って。」
「・・・それで?」
「緊張して近づけない。」
「あはははっ!」
「笑うなよ。」
「いや、すまん。お前見た目度胸ありそうなのに意外と小心者なんだな。」
「始めてなんだ。人に緊張したり、近づくのが怖かったり・・・苦しい。
それに、最近美琴からは近づいて来なくなったし、嫌われたのかもしれない。」
「う〜ん。そうだなー、俺も渚が好きだって気づいた時はいつもみたいに話しかけられなくなったかな。」
「安藤もか?」
「まぁな。でもさ、そんな気持ちは頑張って声をかけたら吹っ飛んだ。なんだろうな〜。まずは話しかけたらいいんじゃない?」
「話しかける・・・か。
この気持ちは?伝えた方がいいのか?」
「それは・・・分からん!
お前が伝えたいなら伝えれば?」
「・・・伝えたい。でも、俺なんかの事。」
「それは伝えてみないと分からないだろ?」
(こいつは重症だな〜。俺が見てても堺さんの気持ち分かるぞ。)
重症者を見て、重症者は、心の中で呆れていた。
キーンコーンカーンコーン。
昼休みの終わりを鐘が告げる。
「授業始まるな。安藤、ありがとう。」
「いつでも話聞くくらいはしてやるよー。」
この日も詩音は、美琴と話す事なく帰宅した。
「疲れた・・・苦しい。」
詩音は、ベッドで項垂れていた。
「ただいま〜!」
「お姉ちゃんお帰り〜!」
「美琴、お疲れ様。」
美琴の母は、労う様に美琴を出迎える。
美琴が玄関で靴を脱ごうとしていると、
ピンポーン。
インターホンが鳴る。
「誰だろ?」
美琴は玄関のドアを開けた。
「えっ?大丈夫?ひどい顔よ?」
玄関の前に立っていたのは理乃だった。
「そ、そりゃあそうよ。ちょっといい?」
「う、うん。」
美琴が玄関を出ると、理乃は歩き出した。
「ねぇ、どうしたの?」
「あそこの公園で話そう?」
「う、うん。」
美琴は、黙って理乃の後ろを歩いた。
公園のベンチに座ると、理乃は美琴を見つめた。
「座れば?」
「・・・。」
美琴は、理乃の隣りに少し距離を開けて座った。
「遠くない?まぁ、そりゃあ〜そうなるよね。」
「で、何?」
美琴は、理乃が何を言い出すのか警戒している様子だ。
「最近詩音に話しかけないのはなんで?」
「・・・。」
「詩音の事、諦めた?愛想がつきた?」
「・・・そんな事ない。ただ。」
「ただ?」
「私、争ったり、競ったりするの苦手なの。詩音くんは好き。大好き!
・・・でも理乃と取り合うのとかはもう疲れた。だから何もできない。」
「なら、私がもらっていいの?」
「それは嫌!」
「あ〜ぁ。」
理乃の頬に涙がつたう。
「こんな、争う事もできない子に私は負けたんだ〜。」
「えっ?」
「私、ふられたー!詩音にふられた。
美琴が詩音をまだ好きで良かった。
邪魔してごめんね。」
理乃は、涙をながしながら微笑んだ。
「・・・理乃。」
思わず美琴は理乃を抱きしめた。
「なんで?なんでわざわざそんな事言いにきたの?」
「グスン。」
理乃の体は小さく震えている。
「だって・・・好きな人には幸せになって欲しいから。」
「理乃、ホントはいい子なのね。」
美琴は、弟達をあやす様に理乃の頭を撫でた。
「ムカつく〜。」
「うん。」
「美琴のバカ。」
「うん、うん。」
美琴は、謝るのは違うと思った。
ただ、ただ頷いた。
しばらくの間、二人は抱きしめ合った。
「あー!スッキリしたー!美琴、あなたいい奴ね!私、詩音の事はキッパリ諦める!美琴、色々あったけど、友達になってよ。」
「喜んで。」
美琴は、理乃に優しく微笑んだ。




