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壁の向こうの君が  作者: 蓮太郎


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14/19

恋。

美琴は、いつもの通学路をトボトボと歩いていた。

「足が重い。」

通学路の途中に詩音の家はある。


「詩音くん。」

美琴は、詩音の家を見て小さく呟いた。

詩音の家を見ながら歩いていると、ドアが空いた。

「チャンス!」

美琴が走り出そうとした時、隣りの家から理乃が出て来た。

理乃は、詩音に飛びついて引っ張る様に歩き出す。


「家隣りとかあり?しかも、絶対あの子、詩音くんが出てくるの待ってたよね?あー!もう!」


美琴は走り出した。

「詩音くん!おはよう!」

美琴は、沈んでしまっている心を隠す様に、声をかけながら、理乃の反対側の腕に絡みついた。


「美琴、おはよう。」

詩音は照れくさそうにする。

(顔赤い。まだ私にも・・・?)

「一緒に学校行こっ?」

美琴は、理乃を無視する様に詩音に話しかけた。

「うん。」

詩音は、嬉しそうだ。


(何よ!詩音!嬉しそうにしちゃって!宣戦布告はミスったかな。)

「詩音、今日も一緒に帰ろうよ〜。」

理乃も負けじと、詩音に話しかける。


「別にいいけど。」


詩音は両腕に美琴と理乃がくっついた状態で登校する。

その日中に、詩音争奪戦が始まったと、面白おかしく学校では噂がひろがった。


「おはよう渚。」

教室に着くと、美琴は疲れた表情で席に座った。

「美琴、おはよう。どうしたの?えらく疲れたご様子で。」


「登校の時、理乃と詩音くんを取り合う感じになってさ〜。疲れた。」


「まだ授業始まらないし、高倉くんの所いってきたら?」


「無理ー!疲れました。私、争い事とか向いてないんだよね〜。」


「あの子、まだまだ元気よ。」

渚は、理乃を見て呆れる。

「頑張れー。」

渚は美琴の耳元で、小さく呟く。


「とりあえず、昼休みくらいまで充電させて〜。」

美琴は机に伏せながら、渚を見つめた。


「はいはい。

私も安藤も協力するからね〜。

幸い、高倉くんの反対の隣は安藤だし。」


「ありがとう〜。」

美琴は、力無く答えた。

美琴が詩音をチラッと見ると、勝ち誇る様に理乃がこちらを見ていた。

「ムカつく〜。」


「めっちゃこっち見てるね。」


「あ〜ぁ。所でさ。」


「何?」


「渚は、ずっと安藤って呼んでるの?」


「えっ?安藤で慣れてるから。」


「二人きりの時に、れんくんって呼んだら燃え上がるかもよ?」

美琴は、机にふせながらニヤニヤしている。


「い、いいよ安藤で。」


「たまに顔を出す女の子な渚、たまりませんな〜。」


「美琴ー。」

渚は冗談まじりに怒っている。


「ふふっ。でも、安藤くんは渚って呼んでるんだし、呼んでみたら?」


「か、考えとく。」


「あー!いいな〜。」

美琴は、机に伏せて視界を遮った。


「まぁ、がんばりましょ。」

渚はもう一度、美琴の肩を叩いた。



美琴のがんばったり、がんばらなかったりそんな日常がしばらく続いた。

ずっと理乃がベタベタくっついているのもあったが、詩音からは、美琴の所に来たりしたない。美琴は戦意を失い始めていた。


「美琴、大丈夫?」


「渚〜。私はもう疲れたよ。」

いつもの様に机に顔を伏せた。


「そうだね。諦める?」


ガラ。

美琴は体を起こした。

「やだ。諦めるのは。」


「なら、いっそう告白したら?」


「う〜ん。今の状態じゃきっとうまく行かないよ。」


「・・・確かに。理乃恐るべしだわ。」


「理乃は疲れないのかな。」


「あの子、メンタル強そうよね〜。」

渚は、楽しそうに詩音と話す理乃を見つめていた。


「こんな毎日がダラダラと過ぎてくのやだ〜。詩音くんはどう思ってんだろ〜。」


「ホントにね。美琴も他の男の子と仲良くしてみたら?」


「それはいい。興味無いし。」


「あら〜、バッサリと。」


「うん。でも、渚、ありがとう。」


それから美琴は、しばらく詩音に近づくのをやめた。

学校では、詩音争奪戦の勝者は理乃だとか、詩音と理乃が付き合ったとか、噂が飛び交った。


「ねー!詩音。」


「何だ?」


「ちょっと寄り道したい。」


「別にいいけど。」

いつもの学校帰り、理乃は詩音を公園に連れて行った。

(詩音、最近元気ないな。)

理乃は、わざと明るく演じていたが、詩音の心の中に美琴がいる事は分かっていた。


「ベンチ座ろっ!」

理乃は詩音の腕を引く。

二人はベンチに座った。

理乃は、詩音を見つめている。

「何だ?顔に何か付いてるか?」


「何も。」


「そう。・・・見すぎじゃない?」


「詩音。私達が付き合ってるって噂になってるの知ってる?」


「えっ?」

詩音は困った表情をする。


(あからさまにそんか顔しないでよ。)

理乃は、涙がこぼれそうなのを堪えていた。


「詩音、私ね、詩音が好き。付き合って下さい。」

理乃は詩音を、顔を赤くして見つめる。


「・・・ごめん。それはできない。」


「何で?私の事嫌い?」

理乃は、詩音の腕を掴んだ。

詩音は、理乃の腕をつかんで優しく払いのけた。

「俺、好きとか分からないし、ずっと分からないままでいいと思ってたんだ。でも、俺・・・人を好きになったみたいだ。」


「あ〜ぁ。どうせ美琴ちゃんでしょ?」


「えっ!?」

詩音は顔を赤くした。


「ふふっ。分かりやす。」


「すまん。だから付き合えない。」


「じゃあ、私の事ふったんだから、ちゃんと美琴ちゃんに気持ち伝えなさいよ!」

理乃は立ち上がり、少し離れると、手を振った。

「邪魔してごめんね。」

理乃は小さく呟くと、走り去って行った。

理乃の頬を、涙が絶え間なく濡らしていた。


「理乃・・・ごめん。

でも俺、緊張して美琴に近づけなくなった。どうしたらいいんだろう。

恋なんてしたくなかったな・・・苦しい。」

詩音は立ち上がり、トボトボと家に向かって歩き出した。

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