幼なじみは最強の恋敵。
キンコンカンコーン。
二学期の始まりを告げる鐘が鳴る。
ガラガラ。
「みんな座れー!」
美琴は席に座り、詩音をチラッと見た。
(詩音くん、あの日から何だか変なんだよね〜。話しかけてくれないし・・・何でだろ?嫌われたのかな。)
美琴は俯いた。
(ダメだ。心臓がうるさい。
・・・俺は・・・多分・・・美琴が。)
「おい!そこの二人!」
先生は、俯く二人を呼んでいた。
『は、はい!』
詩音と美琴は我に帰り、教卓の方を見た。
「転校生だ!仲良くしろよ〜!」
先生に言われて、二人は、黒板の前に立つ転校生に目を移した。
「って!理乃?!」
詩音は、思わず叫んだ。
「ひっさしぶりー!詩音、元気だった?」
先生は、二人を交互に見ている。
「なんだ、知り合いか?」
「はい、幼なじみなんです。」
「そうか、それは心強いな。
高倉、今日の放課後にでも小林を連れて校内を案内してやってくれ。」
「分かりました。」
「小林、とりあえずあの空いてる席に座れ。」
「はぁ〜い。」
理乃は、窓際の一番後ろの席座った。
「よーし!今日は、お前たちの好きそうな席替えだ!」
「おー!」
クラスは、大盛りあがりだ。
「手っ取り早くやるぞー。」
先生は、作ってきたくじを出すと、席番号の書いた紙を黒板に貼った。
「よし、安藤から順番に引いて、番号の席に移動だ。」
クラスメイト達は、ワクワクした表情でくじをひき、席を移動していく。
美琴は一人、浮かない顔をしていた。
(あ〜ぁ。今日バイト休みだし、詩音くん誘いたかったのに、幼なじみと学校デートか。しかも席離れたらどうしよ。)
美琴の番が回ってきた。
俯いた顔を上げて立ち上がると、席が隣り同士になり、楽しそうに話す詩音と理乃が視界に入った。
(嘘?詩音くんと理乃ちゃん隣り?無理、やだ。)
美琴は、トボトボと教卓へ向かいくじを引いたが、席は詩音から離れていた。
席に座ると絶望感が襲ってくる。
(私の席から黒板見たら、楽しそうな二人が視界に入る。嫌だな。)
美琴は、机に伏せると、窓の向こうの空を見た。
「みーこと!」
美琴は、声の方を見た。
「渚〜。渚が隣りか。せめてもの救いです。」
美琴は今にも泣き出しそうだ。
「大丈夫だよ。頑張れ。」
幼なじみなんかに負けるな!と言わんばかりの気迫のこもった表情で、渚は美琴の肩を叩いた。
「ありがと〜。」
覇気の無い小さな声で美琴は答えた。
休み時間も、理乃は詩音にべったりで、美琴は、近づく事ができなかった。
「あーぁ。」
机に伏せて、空を見る事の多い一日だった。
キーンコーンカーンコーン。
一日の終わりを告げる鐘が鳴る。
詩音は立ち上がり、美琴の方を向いた。
(あっ、詩音くんこっち見たー!)
「詩音!案内してよー!」
理乃は詩音の腕に絡みついて、教室から引っ張る様に出て行った。
「あ〜ぁ。私の居場所。」
その日、美琴は一人で帰りベッドでやさぐれていた。
「ゔ〜。詩音くんと微妙な感じになってる時に限ってこんな事ありますか〜。
神様は意地悪なんですか〜。」
「ちょっと、美琴どうしたのよ。」
母が心配そうに話しかけた。
「なんでもな〜い。」
美琴は上の空だ。
「詩音くんとケンカでもしたの?」
「ケンカはしてない。」
「まさかふられたとか?あのイケメン思わせぶりな態度を!」
母は一人で怒っている。
「違うよ。なんか微妙な感じになってる時に幼なじみとか言うライバルが出現して席替えで席離れただけ〜。しかも、詩音くんと幼なじみ、席となりになるし。今頃仲良くしてるんじゃない?」
「あらら〜。珍しくやさぐれちゃって〜。行かなくていいの?」
美琴は枕に顔を埋めた。
「今日は無理ー!疲れたよー!」
「はいはい。」
母は優しく美琴の頭をなでた。
「じゃあ今日はちょっと豪華な夕食にしましょ。」
「お母さん、ありがとう。」
美琴は立ち上がり、母とキッチンに向かった。
「文乃ー。ごはん運んでー。」
「はぁーい!」
突然、ピンポーン。
インターホンがなる。
外はもう暗い。
「誰だろ?」
母とキッチンに立っていた美琴は、玄関に向かった。
ガチャ。
「えっ?」
そこには、憎い恋敵が立っていた。
「こんばんわ。ちょっといい?」
「う、うん。」
美琴は、気が進まなかったが外へ出た。
「堺美琴ちゃんよね?」
「うん。」
「私、せっかく帰ってこれたのに、詩音の奴、あなたの話ばっかりするの!ムカつく!」
美琴は、少し嬉しそうにした。
「嬉しそうにして・・・今日は、宣戦布告に来た!」
「えっ?やっぱり・・・そんな気がした。」
「そうよ!私と詩音は小学生の時に結婚の約束したんだから!」
「私・・・負けないよ。」
美琴は、静かな闘志を燃やしながら理乃を見つめた。
「私も負けないから!」
理乃は、そう言い捨てると走り去って行った。
「ややこしい子が現れたな。」
美琴は落ち込んだ表情で家に入った。
「美琴、負けるな!」
「お姉ちゃん負けないでー!」
ドアの向こうには、聞き耳をたてていた母と弟達が立っていた。
「もぅ、盗み聞きとかやめてよ。」
「ごめん、ごめん。」
母は、美琴を抱きしめた。
「頑張れ、美琴。」
「・・・うん。」
美琴は小さく呟いた。




