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壁の向こうの君が  作者: 蓮太郎


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12/19

好き。

「なぁ、高倉。」


「何?」


「女子、遅くねーか?

早く来ないかなー。」


「浴衣着るって言ってたし、時間かかってんじゃないの?」


「分かるけどさー!」

神社の入り口で、詩音と安藤は待っていた。

神社の鳥居の向こう側には、夜店が立ち並び賑わっている。


「祭り、始まったとこなんだし、大丈夫だよ。」


「お前さ〜、たまに大人びてるよな〜。」


「それはどうも。」

詩音は、神社の石垣にもたれかかる。


「なぁ、高倉。」


「何?」


「俺、今日告白する。」


「はっー?だ!誰に?!告白ってあの告白か?」


「決まってるだろ?あ〜。堺さんじゃないから安心しろ。」


「い、いや、別に。

じぁ、佐藤さんか?」


「そうだ。なんかさ、好きとか分からなかったんだけどさ、最近、あいつといるとこう、胸の辺りが変な感じだってきづいたんだよ。でさ、気づいたんだ。これは好きって事なんじゃないかって。

渚、結構モテててさぁ。

気づいた以上は、誰にも渡したくない!だから俺は決意した!」


「そうか。頑張れ。」


「お前さぁ、ここはもっと盛り上がる所だろ?」


「じゃあもっと盛り上がってくれる相手に報告しろよ。」


「いや、なんでだろうな〜。他の奴らには言いたくなかったんだけど、お前には言いたくなった。」


「そ、そうか。まぁ、応援はしている。」


「ありがとよっ!」

安藤は、少し緊張が解れた表情をしていた。


(なるほどな。緊張してたからソワソワしてたんだな。好き・・・か。)

詩音は、自分の心の中をのぞいていた。

目を閉じると、美琴の笑顔、泣き顔、百貨店での水着姿。

「あー!いかん!これはダメだ!」

詩音は手で鼻を覆う。

(だ、大丈夫そうだ。)


「何がダメなの〜?」

声のする方を向くと、浴衣姿の美琴と、渚が立っていた。


「べ、別に。」


「今何か良からぬ事を思い出してたよね?鼻に手を当てて、あっ、大丈夫みたいな?」


「・・・。」

(美琴には敵わないな。見透かされているみたいだ。)


「おぃ。黙るなよ。」

美琴はふざけた様子で、ひじで詩音をつついた。

「それより、見てよ!浴衣どう?」

美琴と渚は、腕を広げて浴衣姿をお披露目する。


「・・・。」


「君たち、ダメだね〜。可愛いとか言えないの?」

渚は不満気に安藤を見つめる。


「あ、うん。」


「あぁーぁ。もういいや。行こっ!」

渚は、安藤の腕に絡むと、歩き出した。

「おっ、おい!渚?」

安藤は顔を赤くしながら引っ張られる様に歩き出した。


(わぁ〜!渚、積極的!)

「で、詩音くんは?どうですかこの浴衣。」


「か、可愛い。」


「ふふっ。無理やり言わせたみたいだけど、まっいいか。行こっ。」

美琴は照れくさそうに、詩音に腕を組むと、歩き出した。


(いつも以上に、距離が)

詩音も、顔を赤らめながら歩き始めた。


「なぁ!射的しようぜ!」

安藤は目を輝かせて振り向いた。


「いいね〜!」

美琴も射的の夜店を見て、嬉しそうだ。


4人は、順番に射的を楽しんだ。

「あーぁ。取れなかった〜!」

渚は、悔しそうに歩き出した。

「これ、やるよ。」

安藤は、打ち落としたぬいぐるみを渚に渡した。

「えっ!いいの?妹にあげたら?」


「な、渚にもらって欲しい。」


「そ、そう?ありがと。」

渚は嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめた。


「俺も、これ。」

詩音も、ぬいぐるみを美琴に渡した。

「いいの?」

「うん。」

「ありがとう!」

美琴は、犬のぬいぐるみを高く掲げて見つめた。

「可愛い。」


「な、何だが美琴に似てるな。」


「何?詩音くんは私が犬に見えてるの?」

美琴は、頬を膨らませてスネている。


「いや、その、何だ?外見とかじゃなくてさ。」


「いいですよ〜だ。」

美琴は、照れくさそうにぬいぐるみを抱きしめた。



「痛っ。」

少し歩くと渚がしゃがみ込んだ。

「大丈夫か?」

安藤は、しゃがみ込み渚を覗き込んだ。

「足から血が出てるぞ!」

安藤は騒ぎ出す。

「下駄、履きなれないから。ごめん。」


「安藤くん、あのベンチまで渚を運んで!お姫様抱っこで!」

美琴はニヤニヤしながら言う。

「分かった!」


「ちょ、ちょっと安藤!」


「暴れるな!いくぞ。」


「は、はい。」

渚を抱きかかえた安藤の後ろを、美琴はニヤニヤしながらついていく。

安藤の腕の隙間から顔を出した渚は、目を細めて美琴を睨んでいた。

「こわっ!」

美琴は、笑いながら渚にウインクした。


「大丈夫か?」

渚をベンチに座らせた安藤は、しゃがみ込むと渚の足を自分の腿にのせた。

「ちょっと安藤、いいよ。足汚いよ。」

黙って安藤は、渚の傷を見ている。

「痛そう。」


「渚、はい。」

美琴は、バンドエードを渚に手渡した。

「あ、ありがとう。美琴って女の子だね。私、ガサツだから。」

渚は少し悲しそうにする。


「俺が貼ってやるよ。」

「い、いいよ!自分でやるから。」

渚は顔を赤くしている。

「いいから。」


「いいから〜。」

美琴は、渚の肩を優しく叩いた。

「私達は、もう少し見てくるから、ごゆっくり〜。」

美琴は、詩音の手を掴むと歩き出した。

「美琴、いいのか?」


「いいの、いいの。」

美琴は、ニヤニヤしている。

(こんないい雰囲気、今二人きりにしないでいつするのよ〜!キャー!)


「美琴!」

渚が叫んだ。

美琴が振り向くと、渚は少し照れた様な顔をしている。

「ありがとう。」

渚は小さく呟いたが、美琴には伝わった。

美琴は、胸の前に腕を上げて手を握り、

頑張れ!と伝えた。


「あいつら白状だな!歩けない渚をおいてくなんて。どんなけ祭り楽しみたいんだよ。」

バンドエードを貼り終え、安藤は渚の隣りに座った。


「違うよ。バカ。」


「えっ?」


「いい雰囲気だから、気をつかってくれたんだよ。まぁ〜それは美琴だけだろうけど。」


「どういう事?」

安藤は首をかしげている。


「私ね、安藤の事がずっと前から、その・・・す」

「ちょ、ちょっと待て!」

安藤は、突然、渚の口を手で塞いだ。


渚は、安藤の腕を持って口から話した。


「な、何?今私、真剣な話しているんだけど?」

(もしかして、安藤・・・気づいてて聞きたくないとか?)


「渚、お前・・・今。」


「そうだよ。だから聞いて。」


「聞かない。」


「・・・。」

渚の目尻には涙がたまっている。

涙が俯くと、一粒の涙が頬をつたって浴衣に落ちた。

「聞くのも嫌?」


「ち、違う!ごめん。泣かせて・・・俺・・・俺は!渚が好きだ!大好きだ!・・・・って・・・俺から言いたかった。」

安藤は、恥ずかしそうに俯いた。


「うぇ~ん!」

渚は泣き出した。


「な、なんで泣くんだよ!」


「だって、だってー!片思いだと思ってたから〜。」


「俺、好きとか分からなかったけど、気づいたんだ。ずっと前から渚が好きだったんだって!渚を誰にも渡したくたい。

俺の、俺の彼女になってくれないか?」


「はい、喜んで!」

渚は、安藤の胸に飛び込み強く抱きしめた。

安藤も、恐る恐る腕を回し渚を優しく抱きしめた。



「と、言う展開だったんだけど〜。」

新学期初日、美琴は、渚と屋上にいる。

ベンチに座り渚からの報告を、美琴は聞いていた。


「キャー!いいな、いいなー!

渚!おめでとう!」


「ありがとう。」

渚は珍しく照れている。


「照れちゃって!可愛いー!」


「もぅ!やめてよ。で?そっちは?」


「こっちはね〜。」

美琴は俯いて立ち上がった。

屋上の手摺に手をかけた。

「詩音のバカー!」


「・・・あースッキリ!」


「始業式終わって生徒ほとんどいないと思うけど、大丈夫?誰かに聞かれたんじゃない?」


「いいの、いいの。私はどうせ嫌われ者ですから。」

美琴は、ベンチに座り口を開いた。

「あの日ね、あー!あの思わせぶりな態度、今思い出してもムカつくー!」


「どこ行くんだ?」


「そうだね〜。あの階段の上のベンチから星が綺麗に見えるらしいよ。」


「そこに行きたいのか?」


「そうだね〜。行ってみよ?」


「うん。」


二人は神社の階段を登る。


「ハァハァハァ。結構きついね。」


「あぁ。きつい。美琴は足大丈夫か?」


「私は大丈夫。」


「痛くなったら言えよ?」


「痛くなったらどうするの?」


「おんぶしてやる。」


「あれは恥ずかしいからもう嫌で〜す。」


「そ、そうか。」


「着いたー!」

美琴は、ベンチに向かって走り出した。


「転ぶぞー。」

詩音は、美琴を心配そうに追いかけた。


「キャッ。」

美琴は石に躓いて、体制をくずした。


「ほら、言っただろ。」

転びそうになった美琴を詩音は受け止めた。

(まただ。心臓が。)

(ドキドキする。このまま時間が止まればいいのに。)


「ご、ごめん。ありがとう。」

美琴は詩音から離れると、空をみた。

「詩音くん!空見て!綺麗だよ。」


「本当だ。ベンチ、座るか?」


「うん。誰もいないね〜。」


「そうだな。」

詩音はベンチに座り、のけぞる様に空を見上げた。


「あっ!あれ北斗七星!」


「詳しいのか?」


「全然。北斗七星だけ知ってる。」


「そっか。」


美琴も空を見上げながらベンチに手をつく様に座った。


「あっ。」

「ごめん。」


美琴の手が、詩音の手に触れた。


「・・・。」

二人は見つめ合ったまま、しばらく沈黙が流れた。


詩音は、目をそらして俯いた。

「美琴、好き・・・。」


「えっ?」

美琴は聞き間違えたのかと思いながらも、顔を赤くした。

涙腺が熱くなるのを感じて、今すぐ詩音の胸に飛び込みたい気持ちを抑えて、次の言葉を待った。

「好きってさ、どういう感じか分かるか?」


「はぁ。」

美琴は、夢から覚めた様にため息をついた。

「好きはね。この人とずっと一緒にいたいとか、会いたいとか、会えない時にずっとその人の事考えたりとか。とりあえず、胸の中が、その人でいっぱいになる。そんな感じじゃない?」

(私に聞くなー!)


「そうか。」


(そして今考え込むなー!)

美琴は、スネた。


「美琴?」


「何よ。」


「なんか怒った?」


「知らない。」


「・・・。」



「そこからは当たり障りの無い会話して、帰りましたー。」

美琴は珍しくイライラした様子だ。


「ふふっ。高倉くん、重症ね。」


「笑い事じゃないよー!乙女の心をもて遊ぶ鈍感男よ!」


「そうね。でも、あと一息じゃない?好きって感情に気づき始めてないと、そんな事聞かないよね?」


「だといいけど。」

美琴は不満気にスマホをみた。

「まずい!バイト行かないと!」


「忙しいのにごめんね。」


「全然!いい話聞けたし、愚痴もきいてもらえたし!」


「なら、良かった。気をつけてね。」


「うん!ありがとー!」

美琴は、早足で百貨店へ向かった。

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