友達。
「おはよう。」
(今日は、詩音くんと水着を買いにいく。試着して・・・見てもらう。
ドキドキが止まらない。)
「おはよう。」
(美琴、なんだかいつもと違うな。
何かあったのかな?)
二人は、百貨店へゆっくりと歩く。
「美琴、大丈夫か?」
「えっ?何が?」
「なんだかいつもと違うから。」
「えっ?そう?
大丈夫、大丈夫。」
「そっか。何かあったなら言ってくれよ?」
「うん。今は毎日楽しいよ!
だから心配しないで!」
「うん。良かった。」
「着いたー!先に詩音くんの水着見に行こっ!」
百貨店に着くと、美琴はいつもの美琴に戻った気がして、詩音は安心した。
美琴は、詩音の手を取り引っ張る様に水着売り場へと向かう。
美琴は、売り場に着くと、自分の水着を選ぶかの様に物色し始めた。
「うーん。これかな〜。あっ、これもいいかも!」
(これは俺に決定権は無さそうだ。
母さんと買物に来ている様だ。でも、美琴、楽しそうだな。)
そんな事を思いながら見ていると、美琴は水着を持って駆け寄ってきた。
「詩音くん!これにしよっ?」
「あ、うん。」
「・・・ごめん。私が選んじゃダメだよね。詩音くんも見てみて。」
「いいよ。これ気に入った。」
「そう?じゃあ一応、試着する?」
「試着?いいよ。これにする。」
「う〜ん。じゃあ、はいっ!」
美琴は、自分の選んだ水着を詩音に渡す。
詩音は、レジに向かい水着を購入した。
「買ってきたぞ。」
詩音は、ベンチに座る美琴に、嬉しそうに声をかけ、隣りに座った。
「うん。楽しみだな〜、海!」
(私の選んだ水着買って嬉しそう。
良かった〜。)
「そうだな。楽しみだ。」
「じゃ、次は私の水着だね。」
「うん。」
「行こっ!」
美琴は、立ち上がり詩音の手を取った。
詩音は、水着売り場の前で立ち止まる。
「どうしたの?」
「俺、ここに入るのか?ここで待ってていいか?」
「ダメー!私も男性の水着売り場入ったんだからね〜。」
「分かったよ。」
詩音は、渋々水着売り場へ足を進めた。
「詩音くん、これどう?似合いそう?」
「あ、うん。」
詩音は辺りをキョロキョロと見回し、不審者の様に落ち着きが無い。
(詩音くん、ちゃんと見てない。
よしっ、試着作戦結構だ。)
「じゃぁこれ試着しよ〜。」
「うん。」
「ここで待ってて。試着したら見てね。」
「うん。」
バタン。
美琴は試着室のドアを閉めると、服に手をかける。
(ドア一枚だけしかない。向こう側には詩音くんがいる。何だかドキドキする。)
美琴は、水着に着替えドアを開ける。
詩音は、背中を向けていた。
「詩音くん、どう?」
美琴が声をかけると、詩音が振り返った。
「わぁ!」
詩音は、美琴を少しみただけで、背中を向けてしまった。
(む、胸が!胸が半分出てますけど!
見れない。これはダメだろ!)
「詩音くん、ちゃんと見てよ!」
美琴は、詩音を追い詰める様に言う。
「いや、ちょっとその水着は!」
詩音は、背中を向けたまま言った。
「こっち向いて。」
美琴は、詩音の両腕に手をかけ、クルッと回した。
「どう?」
「・・・。」
詩音は、顔を赤くして黙っている。
「わぁ!大変!」
美琴は、詩音の顔を見て騒ぎ出した。
「な、何?」
「は、鼻血!」
「えっ?」
詩音は、鼻血を手で覆う。
美琴は、急いでカバンからティッシュを取り出すと、詩音の鼻に突っ込んだ。
「は、恥ずかしい。
水着売り場でティッシュを鼻に突っ込んでいる男。まずいだろ。」
「ふふっ。可愛いよ。」
「と、とりあえず、その水着はダメだ。」
「何で?」
「ほ、他の奴らに見られたくない。」
「何で?」
「何で?・・・・何で?」
「何それ〜。分かった。じゃあ違うの選ぶ。」
美琴はドアを閉め、服を着た。
(他の人に見られたくない。だってー!キャー!)
美琴は、詩音が恥ずかしがりながら選んだ上下ともヒラヒラのついた、露出度の低い水着を買った。
水着を買い、二人は帰り道を歩いていた。
「あ〜、面白かったー!」
美琴は、満足そうだ。
「何だか疲れた。」
「だろうね〜。血を流してまで選んでくれたし、この水着は大切にするー。」
「血を流してって、鼻血だぞ。情けない。」
「ふふっ、そうだね。でも、色々嬉しい収穫がありました。」
「収穫?」
「べっつに〜!」
美琴は嬉しそうに歩く速度を速めた。
「何だよ収穫ってー。」
詩音は、美琴に追いついて問いかけた。
「ナイショ!」
「そうかよ〜。」
詩音はつまらなそうにしながらも、美琴といると楽しいと思いながら、美琴を見つめた。
そして念願の夏休み。
「わぁー海だー!」
詩音と美琴は、クラスメイト達と海に来ていた。
「早く気が選んて入ろうぜ!」
安藤は、大はしゃぎだ。
「じゃあ、私達着替えてくるね〜。」
(この子は〜佐藤渚だったかな?私、詩音くん意外と関わらなさすぎだな。男女4人づつの、8人。いい機会だし、今日は仲良くなりたいな〜!)
美琴は心の中で、そんな事を思いながら、更衣室に向かった。
「えっ?みんな下に水着着てきたの?」
美琴は、周りの女子生徒を見ながら言う。
「その方が楽じゃん?」
「確かに〜。私海って小さい頃にきた以来だし、思いつかなかったよ。
私、もう少しかかるから、先に行っててー。」
「分かったー。」
渚達3人は、先にビーチへ向かって更衣室を出て行った。
美琴が着替え終わり、ビーチに着くと、詩音は3人の女子に囲まれていた。
(しまったー!詩音くんが囲まれてるー!)
美琴は、焦りを隠す様にゆっくりと詩音の元へ向かう。
「ごめん。お待たせ〜。」
詩音は、美琴の水着姿を見て、顔を赤らめた。
「詩音ちゃん水着可愛いー!」
「えっ?本当に?ありがとう!詩音くんに選んでもらったのー!」
「えーいいなー!」
(この子、マウント取ってきた。
付き合ってはないらしいけど、やっぱり高倉くんの事好きすぎなんだろうな。
別にいいけど、ちょっと心配になる。)
渚は、まっすぐすぎる美琴が気になっていた。
「おっ!みんなそろったな!海入ろうぜー!」
安藤は、大はしゃぎで走り出した。
他のクラスメイトも、海に走り出す。
「詩音くん、何話てたの?」
「えっ?」
「女の子達と。」
「なんか・・・俺と美琴がどういう関係かとか?」
「な〜んだ。」
「何で?」
「何でもない。それはそうと、詩音くん私の体は他の人に見せたくないのに、他の女子の水着に鼻の下のばしちゃってさ〜。ずるくない?」
「べ、別に鼻の下伸ばしてないぞ!?」
詩音は、浮気を疑われたかの様な剣幕で美琴に弁解した。
「まぁ、男の人は仕方ないよね〜。
行こっ!」
美琴は、少し不満気に手を差し出した。
「待てよ!」
詩音は、美琴の手を取りながら真面目な顔をした。
「な、何?」
「た、確かに・・・正直に言うと見てしまった。で、でも鼻血も出てない!心臓も正常だった・・・えっ?何で?」
「バカ!しらなーい!
行くよ!」
美琴は嬉しそうに詩音の手をひいて、海に走り出した。
「わぁー!」
バシャーン!
「ゲボゲボ。」
「ごめん!詩音くん大丈夫?」
「水飲んだ。ゲボゲボ。大丈夫。」
「ごめんねー。」
バシャーン!
「おーい!二人の世界かよー!」
安藤は、詩音と美琴に水をかけた。
「やったなー!」
美琴は、安藤に水をかけ返した。
「ほらっ!詩音くんもー!」
バシャーン!
「どうだ安藤!」
「ニ対一は卑怯だろー!おい!渚!手伝え!」
「えー。面倒くさいわー。」
バシャーン。
渚は、そう言いながらも、楽しそうに参戦する。
「あはははっ!」
楽しい時間が過ぎて行く。
美琴は、詩音がいなければ自分はここにきっといない。
そう思いながら、詩音を見つめた。
「あー!食べた!」
海ではしゃいだあと、海の家で昼ごはんを食べた。
「次はビーチバレーしようぜー!」
安藤は、ビーチボールを手に立ち上がった。
「私、ちょっと休憩。」
渚は、疲れた様子だ。
「ごめん私も。」
美琴も疲れを隠せない様子だ。
「何だよ〜。じゃあ、高倉は強制参加な!人数足りなくなるし!」
「えっ?・・・分かったよ。」
詩音は渋々、安藤に腕を引かれビーチに歩いて行く。
「みんな元気だね〜。」
美琴は、渚に話しかけた。
「私、佐藤渚。渚でいいよ。」
「あっ、私、」
「美琴。でいい?」
「う、うん。私の名前知っててくれたんだ。」
「嫌でも覚えるわよ。あなた有名人よ。」
「何で?」
「みんなのアイドル高倉くんを独り占めしてるって。あっ、今日来てる私を含めた三人は、高倉くんの事はかっこいい以外、何とも思ってないから安心して。」
「そっか。そうだよね。私、嫌われ者だよね。」
「まぁね〜。」
「バッサリだね。」
「私、包み隠すとか無理だから。
美琴、あなた一学期の最初の方、ずっと寝てたよね?何か訳あり?」
「う〜ん。」
美琴は、ほとんど話した事のない渚だったが、何だが信用できる相手だと思った。そう思うと、次から次に家の事、雨の日の公園の事、詩音がいないと頑張れない。そんな事が口から勝手に出て、話してしまった。
「なるほどねー。」
「な、なんか私ばっかり話してごめん。」
「気にしないで。私が聞いたんだから。」
「ありがとう。」
「家の事とか、高倉くんに話して楽になるならいいけど、高倉くんに話せない話は、私が聞いてあげるわ。」
「えっ?それって恋バナ?」
「そう。私、安藤が好きなんだ。」
「えっー?!そうなの?
・・・恋バナ、もう楽しい!」
美琴は、嬉しそう微笑んだ。
「高倉くんもそれっぽいけど、安藤も同じ系統なのよね〜。」
「好きとか分からん!みたいな?」
「そうそう。」
「・・お互い、苦労しそうだね。」
「これからは、相談のるし、のってね。」
「もちろん!よろしくね。」
「こちらこそ。」
そんな感じで、美琴と渚は、連絡先を交換した。
「あー!疲れたー!ジュース買おうぜー!」
美琴と渚の話が一段落すると、安藤達が戻ってきた。
美琴と渚は、安藤を見ると顔を見合わせて笑った。
「なんか二人仲良くなってない?何の話してたんだ?」
安藤は、不思議そうに首をかしげた。
『秘密〜。』
美琴と渚は、声を合わせて笑った。
駅からの帰り道。
美琴と詩音はゆっくりと歩いていた。
「ねぇ、詩音くん!」
「どうした?いつになく嬉しそうだな。」
「友達できた!」
「佐藤さん?」
「そう!連絡先も交換したー。」
「良かったな。なんか良く分からんが、俺も安藤と、交換させられた。」
「ふふっ。そうなんだ。」
「うん。強引だった。」
「でも、安藤くんと、渚は信頼できそうだよ?仲良くなれるといいな〜。」
「そうだな。」
「そうそう、夏祭り、4人で行かない?さっき渚から誘われてさ。」
「いいけど。」
「じゃあ決まりねー!楽しみが増えた。」
美琴は、嬉しそうだ。
「そうだな。今日も何だかんだ楽しかった。友達っていいものかもな。」
「そうだね!」
街灯の光が、二人を優しく照らしていた。




