表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壁の向こうの君が  作者: 蓮太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/19

キスって何?

ピンポーン。


「はぁーい!」


ガチャ。

「おはよう。」

美琴は、照れくさそうに詩音を見つめる。


「な、なんかいつもと違うな。」


「可愛い?気合入れてみた。」


「う、うん。」

(ダメだ。また心臓が。)


「言って。」

美琴は、頬を膨らませた。


「えっ?何を?」


「可愛いって、ちゃんと。」


「か、可愛い。」

詩音は、顔を赤らめて、目をそらした。


「ありがとう。」

美琴は嬉しそうに笑った。


「で、文乃ふみのはるりん。君たちは何をしてるのかな〜。」


美琴の後ろには、美琴がついでだからと作った、お弁当を入れたカバンと、水筒をぶら下げた弟達が立っている。


「いっしょにいく!」

三人は声を揃えて言う。


「今日はダメっていったでしょ〜。

あら、詩音くんおはよう。」

美琴の母は、三人をなだめるように、部屋の奥に引っ張る。


「おはようございます。

良かったら、連れて行きますよ?」

詩音は、美琴の兄弟達を見てニコニコしている。


「ダメダメ、この子達は私が連れて行くから、二人で行ってきて!」

バタン。

駄々をこねる弟達を引き留めながら美琴の母はドアを閉めた。


「良かったのか?俺は大丈夫だぞ?前に遊んだとき、結構楽しかったし。」


「詩音くんのバカ。そう言う問題じゃないの。」

美琴は、スネた様子で呟いた。


「えっ?なんて言った?」


「何でもない!行こっ!」

美琴は詩音の手をとり、歩き出した。


公園まで、二人はゆっくりと歩く。


(今日は、手をつないでいる。

そしてまた、心臓が。)

詩音は、心臓の音が気になり、黙って歩いている。


(詩音くん、またドキドキしてるのかな?何も話さないな〜。

私も、ドキドキしてる。

話したい事いっぱいあったのに、なんだっけ?)


「おー!お二人さん!相変わらず仲いいね〜!」

突然後ろから声をかけてきたのは、安藤だった。

「やっぱりお前ら付き合ってんの?

いいな〜。俺も手を繫いで歩く相手欲しいわ〜!」


「付き合ってないけど?」

詩音は平然と答える。


「えっ?それで?マジで?」

安藤は、頭の整理が付かない様子で、

美琴を見た。

「付き合ってないよ。」


「そ、そう。」

(この二人は何なんだ!意味が分からない!)

「あっ!そうだ!もうすぐ夏休みだろ?」


「そうだな。」

「そうだね〜。」


「クラスの奴らと、海行く計画たててんだけど、お前らも行く?」


詩音は、美琴を見た。

「詩音くん行く?」


「美琴が行くなら。」


「じゃあ行く!」


「了解!じゃあ、詳細決まったらまた言うわ!じゃあなー!」

(美琴が行くなら?ますます分からん。複雑な関係なのか?)

安藤は、首をかしげながらどこかへ行った。


「海かぁ〜!楽しみ!」


「俺は、小さい頃以来だ。」


「あっ!詩音くん、水着持ってる?」


「あっ。持ってない。」


「私も無い。今度一緒に買いに行こうよ!」


「うん。」


「海かぁ。楽しみだな〜。」

(ちゃっかり水着買いに行く約束しちゃった〜・・・水着試着してどう?とか聞くの?まずかったかな。詩音くんの心臓が爆発するかもー!どうしよ?

まっ、いっか。)

美琴は一人、盛り上がっていた。


「着いたな。」


「うん。」


「あそこにキッチンカー来てるぞ!

何か飲み物でも買うか?」


「本当だ〜!行ってみよ!」

美琴は、詩音を引っ張る様に駆け出した。


「わぁ〜!色々あるね〜。」


「そうだな。俺はアイスレモンティー。」


「詩音くんレモンティー好きなんだ。

じゃぁ私も同じの下さい!」


「かしこまりました〜。」

店員は、手際良くレモンティーを準備すると差し出した。


「ありがとうございます。」

二人は、レモンティーを手に持ち、公園を歩く。

(レモンティーのお陰で、手を離せた。心臓がおさまった。やっぱり、美琴が原因なんだな。何でだ?)

詩音は戸惑いながら、ゆっくりと歩く。


「ねぇ、詩音くん!あそこのベンチ座ろ?」

美琴は空いているベンチを指さした。


「うん。」


二人はベンチに座り、空を見上げた。


「いい天気だね〜。」


「そうだな。」


「私ね、夏の空好き。青が濃くて、真っ白い雲が映えて、綺麗じゃない?」


「うん。確かに綺麗だな。

俺、暑いの苦手だからこんなゆっくり空を見たの初めてだ。」


「そっか。私は、弟達と良くお散歩してたからな〜。」


「弟達良かったの?」


「いいの〜。それにこの公園、遊具無いし。」


「あ~、確かに遊具は必須だな。」


「うん。すっごい元気に、ず〜っと遊ぶんだよ!すべり台なんてすべり出すと、終わりが来ないんだから。」


「大変そうだな。」


「大変だよ〜。あっ。」


「・・・。」

「・・・。」


二人は、胸の鼓動が周りの人達に聞こえるんじゃないかと言うくらいに、ドキドキして俯いた。

美琴は、詩音に近づき耳元で囁いた。

「あの人達すごいね。」


「あ、あぁ。」


向かいのベンチのカップルが突然いちゃつき出したのを見て、二人は急に胸の鼓動が高鳴った。


「あっ、キスした。」


「あ、あぁ。」


「いいな〜。私もしてみたいな〜。」

美琴は、わざと詩音の耳にギリギリまで近づいて囁いた。


「えっ?」

(まずい!心臓がもう、なんだ、口から出そうだ!)

「お、俺、ちょっとトイレ!」

詩音は立ち上がり、走り出した。

「詩音くん!」

美琴の呼び止められ、詩音は振り向いた。

顔がとても赤い。

「トイレは〜、あっち!」

美琴は、詩音が照れてくれたのだろうと思い、嬉しそうにトイレを指さした。


「あ、あ、ありがとう。」

詩音はトイレに逃げ込む様に走っていった。

(かっわいぃ〜!・・・でも、逃げられたな。あわよくばと思ったのに。)


美琴は、チラチラと向かいのベンチを見ている。

(いいな〜。幸せそう。

私もいつか・・・先は長そうだけど。)


詩音は逃げ込んだトイレの洗面台の前で項垂れていた。

「まずい。まずいぞ!キスしたいって、俺と?イヤイヤ、それは無い!そもそもキスって何だ!何でするんだ?今度調べよう。違う、違う!今はこの心臓をどうにかしないと!美琴を待たせるんだ!落ち着け俺の心臓!」

詩音は、不審者と思われそうなくらい、トイレで一人騒いでいた。



「ごめん、お待たせ。」


「大丈夫?」


「大丈夫だ。」

詩音は、向かいのベンチをチラッと見た。

(良かった、どこかに行ってくれたみたいだ。)


「ふふっ。カップルさん達、どこかにいったみたいだね。」


「そ、そうだな。」

(気にしてたのバレてたのか。恥ずかしい。)


「詩音くん、少し早いけど、お弁当食べない?」


「うん。いいぞ。」

(美琴の作った弁当、楽しみだな。)


「レジャーシート持ってきたから、芝生に移動しよ〜?」


「うん。あの辺りが空いているな。」


「うん!行こ!」


「あぁ。」


二人は、芝生に移動してレジャーシートを敷いて座った。


詩音は、前の方に座り弁当を食べている二人を見ている。

(しまった。あの二人、さっきのカップルだよな・・・移動しないと。)


「美琴!こ、ここ暑くないか?

あの木の下に移動しよう。」


「暑くないよ?それに、木の下だと虫とか葉っぱが落ちてくるかも。ここでいいよ。」

(さっきのカップルを警戒しているのね。可愛い。でも移動はしないよーだ!)


「そ、そうか。」

(仕方ない、そうだ!向こう側に背中を向けよう。)

詩音は、カップルに背中を向けて座った。

「詩音くん、こっち向いて座ろ?

そっちだと直射日光だよ。」


「そ、そうか。」

詩音は、仕方なさそうに座り直した。

(美琴、察しろよ〜!)


「じゃーん!」


「わぁ!美味そう!」

美琴が弁当を広げると、詩音はカップルの事を忘れ、興奮している。


「食べて、食べて!」


「いただきまーす!」

「いただきます。」


詩音は、卵焼きに手を伸ばした。

美琴は、ドキドキしながら見つめている。


「うまい!」


「ホント?良かった〜。」

美琴は嬉しそうに笑っている。


「これも、これも、全部うまい!

美琴、本当に料理うまかったんだな!」


「疑ってたの?ひど〜い。」


「ごめん。でも、本当に美味しい!」


「ふふっ。ありがとう。」

美琴は、美味しそうに食べる詩音を幸せな気持ちで見つめていた。


「ごちそうさま!」


「ごちそうさま。」


「うまかった!ありがとう!」

詩音は、満足そうに美琴に言った。


「ありがとう。またいつでも作るよ!」


「・・・楽しみにしてるよ。」

詩音は照れくさそうに言った。


「お腹がいっぱいになったら眠たくなってきたな〜。」

美琴は、小さく呟く。

二人は、並んで座り、空を見上げている。

「そうだな。ちょうどいい気温で眠気を誘うな。」


「・・・また、始まったね。」

「そうだな。」


二人の視線の先では、さっきのカップルがいちゃついている。

男が足を開き、その中に座る女を、男が抱きしめた。


「わぁ!すごい。」

「なぁ、美琴。」


「何?」

「冷静になると、疑問が生まれた。」


「どんな?」


「何であんなにベタベタするんだ?」


「えっ?なんで?う〜ん。」

「美琴も分からないのか。」

詩音は、目を閉じて考えている様だ。

詩音は、後ろに手を付き、少し足を開いて空を仰ぐ様に座っている。

「・・・やってみたら分かるんじゃない?」

美琴は、口を開くと同時に、詩音の足の隙間に移動した。


「ちょ、ちょっと待て!」

詩音は体を起こし、おどおどしている。

「ほら、ぎゅってしてみて。」


「わぁ!」

美琴が、詩音に体を預ける様にもたれると、そのまま後ろに倒れた。


「ふふっ。楽しい。」

美琴は、詩音の上に仰向けに寝転び、笑っている。

「なんとなく分かる。

恐怖のマラソンの後みたいに、心臓がすごい事になってるのに、苦しくないし、しんどくない。でも、何だが心地いい。

そうか!脳から何かが分泌されて」

美琴は、詩音の上でうつぶせになり、詩音の口を手で塞いだ。

「今日は、勉強は無し、でしょ?」

顔と顔の距離が近い。

(心臓が。息をさせて下さい。)

「ハァハァハァ。」

美琴が、詩音の口から手を話すと、詩音は、苦しそうに息をした。

「ごめん。苦しかった?」

「だ、大丈夫。」


「詩音くん、ペラペラだと思ってた。意外とガッチリしてるね。」

美琴は、詩音の胸の辺りに耳を押しつけながら言う。

ドクドクドクドク。詩音の鼓動が聞こえる。

(こんなにドキドキしてくれてる。

・・・私のは聞かれない様にしないとな。)


「あぁ。人体解剖学の勉強してた時に、筋肉の事が書いててさ、自分の体を鍛えて色々実証してみてたんだ。」


「ふふっ、何それ。そのうち自分の体を解剖しだしそう。」


「それは流石に踏みとどまった。」


「ふふっ。ちょっと考えたんだ。」


「ちょっとだけ。」


「ダメだよ〜。」


「うん。」


「重くない?」


「重くない。昔飼ってた秋田犬のケンが良くこんな感じで、俺の上で寝てた。」


「私、犬じゃない。」


「すまん。」


「いいよ〜だ。」

美琴は、小さく呟く。


カァカァカァ。

カラスが鳴きながら飛んでいる。

夕暮れ時。

まだ、朝、晩は少し冷える。


クシュン。

美琴は、肌寒さと自分のくしゃみで目を覚ました。

顔を上げると、詩音が見つめてくる。

「ごめん。私寝てたんだ。」


「うん。」


「ずっと待っててくれたの?」


「いゃ、俺も寝てた。さっき起きた所だ。」


「そっか。何だか冷えるね。」


「そうだな。そろそろ帰るか?」


「明日も学校だし、仕方ないね。」


美琴が立ち上がると、詩音もゆっくりと立ち上がる。

「うっ。」


「どうしたの?」


「少し背中が。」


「ご、ごめん!私がずっと乗ってたからだよね?」


「大丈夫!」

詩音は、体を伸ばしたり、ひねったりしながら、言う。


「ホントに?」


「うん。もう大丈夫だ。」


「よかった。」


もうすぐ夏がやってくる。

そんな夕暮れ、夕日に照らされながら、

二人は家へ向かいゆっくりと歩き出した。


「ねぇ、詩音くん!夏休みまでに水着買いに行こうね!約束だよ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ