七、赤ずきん少女と一寸法師
※ 前書きに失礼します。
お気に入り登録、そして評価を入れてくださった方へ、この場を借りてお礼申し上げます。
ありがとうございます。
すごく励まされました。このまま最後までお付き合いいただけたら嬉しく思います。
サラはアマゾン川の川上へと、再度指を向けました。
「見て、セレア。また変なのが流れてくる」
セレアが川上へと目を向けると、赤いお椀に乗った一寸……いや、六尺法師が どんぶらこーどんぶらこーと流れてきました。
「――って、ちょっとストップ」
セレアは話の流れを一旦止めると、お空に向かって話始めました。
「何なの? 六尺法師って」
まぁ、言ってしまえばフツーの成人男性ってやつですな。
「『ですな。』じゃないわよ。何その投げやり設定。しかも一寸じゃないのに姫様がさらわれてしまったわけ? その前に鬼退治とかできなかったの?」
聖剣を手に入れた六尺法師は、改めて鬼退治に――
「もういいわ。私が上手く話をまとめてあげるから地の文は黙ってて」
そう言って、セレアは六尺法師を手招いて呼びました。
「はい、そこの赤いお椀に乗った人。そのままゆっくりこっちに来なさい」
呼ばれた六尺法師は顔をしかめました。
「むっ! こんなところで検問とは。まことに運が悪い」
「――って、何か悪事でも企んでたわけ!?」
六尺法師はお椀のスピードを上げて逃走をはかりました。
セレアはサラに目配せました。
「あの逃走犯を確保して」
「了解」
サラは瞬時に黒のスーツにモデルチェンジすると、黒のサングラスをかけました。 そして機械的な動きで六尺法師の姿を捉え、構えると、一気にアマゾン川の水面を走り出しました。
――三秒後。
荒縄でス巻きにされた六尺法師が、サラとともにお椀に乗ってセレアのところにやってきました。
六尺法師は言いました。
「無抵抗の善良市民を縛り上げるとは。とんだ警察もいたもんだ」
「警察じゃないわ。私はただのいたいけな善良市民よ。検問を逃げ出すような市民の、どこが善良なのかしら?」
すると、六尺法師は悲しげに顔をうつむけました。
「実は……ここで捕まるわけにはいかなかったんだ。鬼にさらわれた姫を救いに行く為にはどうしても刀が必要だった。銃刀法違反で武器を没収されてしまったら、この先どうやって鬼と戦っていけばいいというんだ?」
セレアは六尺法師の頬を平手打ちました。
「甘ったれてんじゃないわよ! 世の中にはね、バナナボートで鬼ヶ島に単独で乗り込んで、オール一本で鬼と戦おうとしていた人だっているのよ! 武器の一本失ったくらいでお姫様救出諦めてんじゃないわよ!」
セレアは頭巾の中から一本の小さな針を出すと、六尺法師に差し出しました。
六尺法師は眉根を寄せ、不思議に尋ねました。
「……針?」
「そう。今のあんたに足りないのは背丈でも勇気でも武器でもない。どんな小さな事からでも活路を見出す努力よ」
へぇー、スポ根童話オチですかぃ。
「るっさいわね! いいでしょ、たまには!」
「セレア、誰と話しているの?」
サラは周囲を見回しました。
すると、六尺法師はフッと力抜けたように笑いました。
「針一本で鬼を倒せとは、まこと面白き女。よしわかった。家来になってやろう」
セレアに新しい仲間が加わりました。名前を決めてください。
「鬼退治ぐらい一人で行きなさいよ!!」
こうしてセレアはス巻きの六尺法師に蹴りを見舞って、アマゾン川の底へと沈め、無事この話を締めたのでした。
――次話へ続く。