十四、赤ずきん少女と……。【前編】
マーメイドの魔法で魔王城の門前に辿り着いたセレアと愉快な仲間たちは、
「なんで魔王討伐の流れになってんの……?」
と、言うセレアの呟きと共に、いざ乗り込みました。
桃太郎がセレアに言いました。
「先陣切って突入する家来がいないんだが、俺が行っていいと思うか?」
「だから、なんでいちいち私に同意求めてくるの!? 勝手に行きなさいよ! ――ってか、この先魔王以外に誰が居るわけ!?」
六尺法師が割り込んで桃太郎に言いました。
「あ。じゃぁ一緒行かないか?」
「あー、なら行く」
桃太郎と六尺法師が先陣切って駆け出しました。
「――って、何そのノリ! 真面目にやる気あるの!?」
桃太郎と六尺法師は同時に足を止めると、ふてくされた態度で振り返ってきました。
「だって鬼が居たら怖ぇーじゃん。武器ねぇーじゃん、俺ら」
「針一本で戦えとは捨てキャラもいいとこだな」
「ちょっとこっち来い! ヘタレ男子ども!」
セレアは二人を呼び寄せました。
すると白雪姫が突然セレアを横に押し退けて、浦島太郎から買い上げた爆弾を城に向けて投げつけました。
「――って、ちょっと!」
セレアの叫びも空しく、爆弾は城の壁のところで炸裂し、その衝撃で城に大きな穴が空きました。
白雪姫は「まぁ」と言って驚きました。
「あら。線香花火と思ったら打ち上げ花火だったんですね。た~まや~」
「って、火をつける前に分かるでしょ! 過激テロよりタチ悪いわよ、あんた!」
すると背後でシンデレラがにやりと笑って静かに抜剣しました。
「戦闘か。面白い。全員この剣の赤カビにしてくれよう」
「食べ物じゃないと発生しないからね、それ!」
無視してシンデレラは先陣切って駆け出していきました。
次いで桃太郎と六尺法師が雄叫びをあげながら、そのあとについていきました。
「なんで急にやる気出してんの、あんた達!」
それを見た白雪姫が手を叩き合わせて喜びました。
「では私は後方支援として宝を盗みに行ってきますわ」
「なんの支援それ!?」
白雪姫は宝箱の隠された倉庫を探しにパーティを離脱しました。
浦島太郎も離脱しました。
「ちょっと!」
そこに白馬に乗った全身白タイツの王子様が帰ってきました。
「ただいまー」
「あんたの家だったの!?」
マーメイドは魔法の杖を構えて言いました。
「仲間はみんなやられてしまいましたわ、お譲様。せめてお嬢様だけでも魔王の待つ最上階へ―─」
サラは言いました。
「あたし、いるんだけど。ここに」
「みんなまだ生きてるし! って、それ以前になんで魔王討伐の流れになってんのよ!?」
マーメイドは陰気くさい表情で、ぼそりと魔法の呪文を呟きました。
「墓標に花を」
「って、何そのカオス呪文! 絶対バット・エンドでしょ、これ!」
セレアとセレアに背負われた案山子、そしてサラの三人は魔法の光に包まれました。