十三、赤ずきん少女と愉快な仲間たち
聖剣を手に入れたセレアと重症の案山子、そしてお供のサラは砂漠を越えて浜辺に辿り着きました。
セレアは浜辺に立ち止まると目の前に広がる海を見つめたまま、ぼう然とつぶやきました。
「なんで海……?」
「これが海……」
サラは初めて見る光景に衝撃的な感動を覚えました。
セレアは急に何かを思い出して顔を渋めました。
「あ……。何か嫌な予感してきた……」
すると『ざっぱーん!』と、いきなり波と共に浦島太郎が流されてきました。
「ぎゃぁ! ――って普通に登場してきなさいよ、あんた!」
「♪じゃ~ぱ、ふんふん、じゃぱふんふん、夢のじゃぱふんふん太郎~」
「真顔で歌わないでよ!」
「セレア、知り合い?」
と、サラが尋ねてきました。
セレアは言いました。
「あー、第一弾でちょっとね。……あれ? たしか浦島太郎って、あの時お爺さんになったんじゃ――」
浦島太郎はむくりと起き上がると、
「特殊メイクに予算が足りなかったので今回はスッピンでの出演です。なお返品は行っておりませんのであらかじめご了承下さい」
「何の事情!?」
浦島太郎は気をとりなおして商売を始めました。
「さて、今日ご紹介しますのは、海の生物学に詳しいこの人――」
「お久しぶりでございます、お嬢様!」
ざぱーん! と、波とともに浜辺に押し流され転がってきたものは満面の笑みを浮かべたマーメイドでした。
「――って、どんな登場の仕方してんのよ! あんた達!」
マーメイドはむくりと起き上がって言いました。
「お嬢様! 魔王オズの討伐にはぜひともわたくしめをお供ください!」
「いつから魔王討伐になったの!? この話!」
「凶悪な魔法使いに対抗できるのはやはり魔法使い。魔法のことならわたくしめが全力でサポートいたします。だから――」
「って、まともなこと言ってるけど、会話噛み合ってないからね!」
するとセレアの後ろから聞き覚えのある女の声が聞こえてきました。
「セレアのサポートができるのはライバルであるこの私――シンデレラと決まっている」
「なんで使用済みキャラが再登場!?」
セレアは予想外の展開に驚きました。
次いで、海中から桃太郎が上陸してきました。
「ウサギに騙され、泥舟に乗って沈没してしまったんだが、あれって結局ウサギを信じて良かったと思うか?」
「出てきて早々何なの、それ! 突然そんな心理学を投げかけられても答えられないんだからね!」
すると重症の案山子は答えました。
「つまりウサギも罪を重ねてしまったというわけだ」
「何なの、あんた達! 裁判員にでも選ばれたわけ!?」
そこに偶然通りかかった六尺法師がセレアに声をかけてきました。
「あれ? まだ魔王を倒してなかったんだ。ほら、聖剣をあんたに貸したままだし、その流れでついでにこっちの姫様も救出してくれると助かるんだが……」
六尺法師の後ろから、ひょこりと白雪姫が顔を出しました。ニコッと笑って、
「宝は山分けだからね。最近小人さん達が『お前も働け』ってうるさくて」
セレアは頭を抱えて空をあおぎ、半狂乱になって叫びました。
「なんでツッコミが私だけなのぉー!?」
すると、ちょうどそこに白馬にまたがって散歩していた全身白タイツの王子様がやってきて、セレアに言いました。
「いや、だってもう最終話直前スペシャルだし」
もうツッコむ気力もなく、セレアは白んだ思考のまま、その場に固まってしまいました。
――次話、最終回。