十、赤ずきんちゃんと、帰ってきたウルトラ天然白雪姫。
――前話の回想。
「しなくていいから先に進めて」
…………。
前話の回想ができないということは、3分でこの話を締めなければなりません。
「何のルール!? それ!」
シンデレラの胸のタイマーがピコピコと鳴り始めました。
シンデレラは言いました。
「そろそろ帰る時間か」
「はぁ!?」
セレアはとても驚きました。
「ちょっと待ってよ! この物語に隠された本当のテーマっていったい何!? 前話を途中で放り投げ――」
シンデレラは言葉半ばで「とぅ!」と言って、お空に飛び立ってしまいました。
そして入れ替わるように木の影から白雪姫が現れました。
「ごめん、待たせちゃったね」
「――って、どんだけぇー!?」
白雪姫はわざとらしく惚けました。
「皆さんおそろいで、何かあったんですか?」
「あんた一体何しに出てきたの!?」
「あ、そうそう」
と、白雪姫は何かを思い出して胸の前でパンと手を叩き合わせました。
「ちょうど良かった。あなたに手伝ってもらいたいことがあるの」
「……手伝い?」
白雪姫は豊かな胸の谷間から一通の手紙を取り出しました。
セレアは膨らみの少ない胸を両手で隠して叫びました。
「なんかすごくムカつくんだけど! 見せつけられてるみたいで不快なんですけど!」
白雪姫は無視して話を進めました。
「アリソン教授、この手紙を見てください」
「――って、誰それ!?」
白雪姫はセレアに手紙を渡しました。
セレアはしぶしぶその手紙を読みました。
手紙にはこう書かれてありました。
『僕をこの世界に召喚してください。お願いします』
セレアは「あ」と言って、自分宛に届いていた手紙のことを思い出しました。
「そういや私もこれと同じ手紙を持っているわ」
白雪姫は「あら」と驚いた顔をして口に手を当てました。
「あなたもその手紙を?」
セレアは「えぇ」と頷いてポケットから同じ手紙を取り出しました。
「ねぇ、『召喚』って食べ物を探しているんだけど、何か知らない?」
「そういえばもうすぐ御中元の季節ですものね」
「え? これって贈れってこと? 何の義理で?」
すると、横からサラがセレアの服をツンツンと引いて言いました。
「セレア。『召喚』は食べ物じゃなくて『魔法』の一種よ」
「えっ!? そうなの!?」
セレアはとても驚きました。
白雪姫は突然感動に目をうるませて言いました。
「まぁ。もしそれが本当なら、なんて切ない手紙なのでしょう」
「え? なんで?」
と、セレアは尋ねました。
白雪姫は言いました。
「その手紙はきっと幼い少年が書いたものに違いありません。そして魔王に捕まって、あなたに助けを求めているのです」
セレアは軽く疲労感を覚え、眉間に指を当ててうなりました。
「ちょっと待って。あなた、さりげなく私を何かの騒動に巻き込もうとしてない?」
「主人公=勇者です」
セレアは露骨に嫌な顔をしました。
「何その数学式。『実に面白い』とか言わないからね」
白雪姫は言いました。
「その少年を助けに行った方がいいと思うわ。もしかしたら世界を滅ぼすほどの巨大な力を持っていたせいで誘拐されたのかもしれないから」
「――って、何そのいきなりトンデモ設定。どっから持ってきたの? どこまで大風呂敷を広げるつもりなの? あくまでこれ、童話ベースだからね。簡潔に話をまとめないといけないんだからね。シリアスなんて無理だからね」
すると突然、森の妖精がポンと手を打ってひらめきました。
「そういえば、魔法使いオズがそういう男の子を……」
…………。
森の妖精は突然全力で走り出しました。
セレアはそれを全力で追いかけました。
――次話へ続く。
※ 九話からおよそ一ヶ月ぶりの更新。サボってたわけじゃないですよ、えぇ。ただちょっと……。
…………。
どんな理由であれ、すみませんでした!(深謝)