イヤなゆめを見ちゃった日
※ 公式企画「冬の童話祭2024」参加作品、テーマは『ゆめのなか』です。
一家4人そろっての朝ごはん。でも、今朝のゆんちゃんはなんだか元気がありません。
ママが心配して聞いてきます。
「ゆんちゃん、どうしたの? 具合でも悪いの?」
「あのね、ゆうべ、イヤなゆめを見ちゃった。
ママとかずや兄ちゃんが、ちょっといじわるだったの」
『──はぁ?』
ママとかずや兄ちゃんはぽかんと口をあけて、パパがなんだか楽しそうに聞いてきます。
「夢の中で、二人はどんな風に意地悪だったんだ?」
「ママはね、こわい顔で『かけいぼ』とにらめっこしてるの。ゆんちゃんが話しかけても『あっちに行ってなさい』って──ちょっとこわかった」
「なっ──!?」
ママがだまってしまい、かずや兄ちゃんとパパがふきだします。
「あ、でも、僕はゆんに意地悪なんてしたことないよな?」
「お兄ちゃんはスマホばっかり見てて、ゆんちゃんがなにを言っても『ああ』とか『うん』とか、てきとうなへんじしかしてくれなかったよ?」
「うっ──」
今度はかずや兄ちゃんがだまってしまう番です。
パパがけらけら笑いながら言います。
「二人とも、普段の言動には気をつけないとダメだぞ。
その点、パパはいつだってゆんのことを大事にしてるからな。夢の中でも、そんな意地悪なんて──」
「あ、でも、パパはゆめに出てこなかったよ」
からん──。
パパの手からおはしが落ちました。おしゃべりのとちゅうで時間が止まったみたいに、ぴたっと固まったままです。
するとかずや兄ちゃんが、あわてたようにごはんをかきこんで、せかしてきました。
「ほら、ゆんもそろそろ急がないと」
「そ、そうね、ゆんちゃん、さっさと食べちゃいなさい」
ママも急にせかしてきたんだけど──パパは、なんでうごきが止まったままなのかな?
その日の夜。
ゆんちゃんはみんなと『おやすみなさい』をして、ベッドに横になりました。
でも、なんだかいつもと感じがちがいます。なんか、まくらの下がガサガサするような──。
「あれ? なにこれ」
まくらをどかしてみると、そこには家族で遊びに行った時の写真がいっぱいありました。
ママがおそうじの時にでもおき忘れたのかな。でも、なんでこんなところに?
それに、ふだんはあまり写真のプリントアウトなんてしないのに。変なの。
ちらっと見ると、ゆんちゃんとパパだけが写った写真が多いようです。でももうねむいので、ゆっくりと見てなんていられません。
このままだと寝ごこちが悪そうなので、ゆんちゃんはその写真のたばを横にどかして、まくらをおき直しました。
これでよし、と。
さあ、今日はいいゆめが見られるといいな──。