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或る茶会にての噂話

ねぇお聞きになって?


何って、ラルエット家のレベッカ様のご婚約よ。


ほら、あの通りの派手な外見でいらっしゃったでしょう。


高慢な態度と傲慢な言動は凄まじいらしいわよ。ええ、あれは魔女よ、魔女。


淫らで不埒な悪女なんて、本当に不潔ですわね。


あんな性悪は百年に一度だって聴きますわ。恐ろしい。


まさに『宿命の魔女』ね。

ご存知ありません? 男をたらしこんで骨抜きにする魔女のことですわ。


レベッカ様がどちらに嫁がれるかって?

あら、ご存じありませんの?

最近のお茶会ではこの話題で持ちきりでしたのに。


それが、あの、ヴァレリアン公爵のシャルル様なのですわ!


ええ、あの『凍った血』の!

加虐・暴虐の限りを尽くすというあの裁判官ですわ!

貴族や神官、王族にさえも恐れられている血も涙もない方!


判決は冷酷無比で、情も涙も通用しない。


大きなご自宅のお屋敷ではメイドとして雇った貴族の令嬢たちを毎日のように泣かせていらっしゃるとか。

使用人を靴の爪先の動きひとつで働かせるとか。

ああ、恐ろしい。


いくら公爵とは言っても、普通なら恐ろしくてとても婚姻など……。


普通の貴族令嬢は横に並ぶだけで恐ろしいですわ。


そして、公爵閣下は何よりもあの、お見た目でしょう?


ええ、美しいを通り越して畏怖してしまいますわね。


見ているだけでもぞくぞくしてしまいますわぁ……。


そうそう、見ているだけなら良いのですけれど。えっ、私はそんな趣味はありませんわ! いくら美しい方でも鞭打たれるなど……もう……冗談は嫌ですわよ、皆様。


いくら美麗な殿方でも、絞め殺されたりしたくありませんものね。


ええ、裁判官の身分をかさにきて、黒い噂もあるとかないとか。きっと女の一人や二人、いなくなったところで、揉み消してしまうのではなくて?

怖いですわ。


それならシャルル様に『魔女』をあてがうのはピッタリですわね。


ええ、まさに神の采配ですわね。


それが、ご実父のラルエット伯爵の鶴の一声だったそうですわよ。


レベッカ様は裸も同然の露わな格好で、公爵領に乗り込んで行かれたとか。


あら、本当に? 破廉恥ですわ……!


でもどうして、そんな悪女を娶ることにされたのかしら?


躾け直そうと思われたのでは?


公爵様ご自慢の鞭の使い所ということ?


オホホホホ、いやぁだ、皆さん下世話だわ。


ご母堂が嘆いてらしたわ。

そんな娘に育てた覚えはないって。

妹と同じようにお育てになられたのに、どうして姉だけがあのような悪女に、と。


お可哀想ね。


おいたわしいわ。

何しろレベッカ様は金子を湯水のように使うらしいの。ラルエット家も貴族とはいえ限度があると言ってらっしゃったわ。


あちらのお家では妹様もいらっしゃるのにねぇ。エミリー様もお可哀想に。


姉が好き放題、放蕩の限りを尽くしているのならば、私もとなりそうなものだけれど、身も心も貞淑で清楚な持ちよう。

さすが聖女候補は違いますわね。


ほら、ご覧になって?

あちらにいらっしゃるわ。

白の清楚なドレスを身にまとっていらっしゃる姿はまるで妖精のようよ。

ティアラにつけられているのはパールかしら。


お可愛らしいわね。


ええ、そうそう、レベッカ様といえば、今日のパーティーもご欠席だそうよ。


まあ! あの、もしかして、男のお友達とやらの『ご歓談』に勤しんでいらっしゃるって噂……。


本当だったのかしら。


確かに、年に何度かしか社交の場にお出になりませんものね。


そうよ、あの趣味の悪い派手なドレスと華美な宝石!


一度見たら忘れられませんわ。


そうそう、それに、絶妙に古くさいデザインなのですものね。


レベッカ様は男を眺めて、たらし込める相手がいないと分かったらすぐにご帰宅なさるそうよ。


あら、妹のエミリー嬢がいらっしゃるわ、皆様……。


ごきげんよう、エミリー様。

胸元のブローチが素敵ですわね。太陽の光のよう。

えっ、集まって何を話してたのか、ですって?

いえ、そんな……ただ、今日も姉君はいらっしゃらないのかしらと思いまして……。


ええ……あら、おっしゃりたいことは分かります、だなんて、エミリー様……。

まあ、おほほほ……。


貴方様も大変でいらっしゃるのに、淑女としてご立派ですわぁ……。


そうそう、ご婚約なさったのでしたわね、レベッカ様。

おめでとうございます……。




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