表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/45

9.ダンジョン

 ダンジョン。

 遥か昔、偉大な魔術師たちが作った宝物庫であり、終生を共にした安楽の地。

 彼らは自らが残した功績や成果物を他人から隠すため、侵入者を迷わせ阻む巨大建造物を作り上げた。

 というのが、現代に伝わるダンジョンのお話。

 実際のところは未だ解明されていない。

 一説には人ではない者が作ったものだとか、神から逃げるために悪魔が作り上げた隠れ家だとか。

 様々な説が提唱されている。


「まさかこんな近くにダンジョンがあったなんて」


 おそらく未発見のダンジョンだ。

 この森は街から非常に近く、多くの冒険者にとって絶好の狩場となっている。

 しかし近年、ここでダンジョンが発見されたという報告はない。

 

「おそらく周囲の木々のせいだと思います」

「木々?」

「この木々からわずかに魔力を感じます。近づく者を遠ざける天然の結界になっていますね」

「異様な雰囲気はそのせいか……」


 だから誰にも見つからなかったのか。

 近づきたくても無意識に身体が避けてしまうから。

 俺たちが見つけられたのは、ここに彼女の妹……デルタがいるから。

 その気配を辿ったおかげか。


「だけではありません。こういう結界は、魔力が多い者には効果が薄いんです。私はもとより、ラスト様だから平然と入って来られたんですよ?」

「そう……なのか」


 俺だから、そう言われるのは悪い気分じゃなかった。

 自分が特別な存在だと言って貰えている気がして。

 優越感というのだろう。

 今まで感じられなかったからか、どこか面映ゆい。


 俺は大きく深呼吸をする。


「ふぅ……行こうか」

「はい」


 こうして俺たちはダンジョンの階段を下りていく。

 前のパーティーにいる時に、数回だがダンジョン攻略に参加した。

 その時はすでに発見済みのダンジョンで、先人たちが作った地図のおかげで迷わなかったけど……。


「ひ、広いな」


 階段を降りてすぐ、まっすぐ続く廊下あった。

 どこまで続いているのか肉眼ではわからない。

 軽く手を叩いてみたら、綺麗に音が通り抜けていくのがわかった。

 おそらくかなり先まで続いている。


「迷わないようにしないと」

「その心配は必要ありません。私は一度来た道を記憶できます。行くべき方向も、デルタの気配を追えばいいですから」

「そうなのか。じゃあ、道案内は任せていいか?」

「はい! 私にお任せください」


 頼りになる相棒のおかげで、幾分気持ちが楽になった。

 未発見のダンジョンほど恐ろしい場所はない。

 本来なら、大規模な調査隊を編成して慎重に探索するのだが……。

 今回はその必要もなさそうだ。


「こっちです」


 迷路になっている道も、彼女の案内があれば迷わない。

 ダンジョンの中はとても静かだった。

 普通は侵入者を阻むため、様々なトラップや障害物が用意されているものだけど……。


「ここにデルタがいるってことは、このダンジョンは博士が作ったものなのか?」

「それは……わかりません」


 歯切れの悪い返事だった。

 彼女は申し訳なさそうに語る。


「実は、どうして自分が眠っていたのか……前後の記憶がないのです」

「そうだったのか?」

「はい。ですからなぜ彼女がここにいるのか、私がラスト様のおじい様から送られてきた理由もわかりません。申し訳ありません」

「謝らなくていいよ。むしろ平気? そういうのがわからないって不安になるんじゃないか?」


 自分のことがわからないなんて、俺だったら不安で夜も眠れない。

 だけど彼女はニコリと微笑み、首を振る。


「こうして目覚めることができた。妹とも会える。何の不安もありません」

「……そうか。強いな、アルファは」

「そんなことありません。ただ、私が不安に思うことがあるとすれば……ラスト様に捨てられてしまわないか、だけです」

「それは絶対にないから安心してくれ」

「はい。だから不安はありません」


 彼女は花が咲いたように笑う。

 この笑顔を守りたいと、俺はひそかに思う。


「止まってください! 何か来ます」

「なんだ?」


 ギギギギと何かが蠢く音が聞こえてくる。

 俺たちは身構える。

 そして――


 正面から一体のゴーレムが出現する。


「先手をとります」


 アルファがかける。

 ゴーレムの動きは緩慢だ。

 彼女の速さなら容易に不意をつける。

 瞬く間に接近し、腹部に向けて打撃を加える。

 トロールの腹を抉った一撃を喰らったんだ。

 これで――


「なっ……」


 破壊できない?

 彼女の打撃が通じないのか?


「アルファ!」


 ゴーレムが反撃する。

 見た目のわりに素早い動きで彼女を腕で叩きつける。

 一瞬だけ回避が遅れた彼女は、衝撃で俺の元まで転がる。


「っ……」

「大丈夫か?」

「はい」


 そう言いつつも怪我をしている。

 額からは血が流れていた。


「頭を打ったのか」

「大丈夫です。私たちドールには自動再生が備わっています。魔力が枯渇しない限り傷は治ります」


 話している間にも血は止まっていた。

 どうやら軽い傷なら一瞬で治癒してしまうらしい。

 一先ず安心だが、問題は目の前にある。


「君の攻撃が通じなかったのか」

「おそらく打撃の衝撃を吸収するようです」

「打撃……だったら!」


 俺は刀を抜く。

 意図を察してくれたのか、先にアルファが飛び出し、ゴーレムの注意を引いてくれた。


「今です!」

「おお!」


 その隙に背後に周り、刀で両断する。

 予想通り、打撃は吸収できても刀の鋭い一撃は対応できなかったようだ。

 ゴーレムの核ごと両断したからもう動くことはない。


「お見事でした。ラスト様」

「アルファもありがとう。注意を引いてくれて」

「いえ」


 俺は刀を鞘に納める。

 その様子をアルファはじっと見ていた。


「ラスト様のその剣、刀というものですよね?」

「うん。爺ちゃんが昔使ってたものを貰ったんだ。昔から見様見真似で練習してたんだけど、中々上手くなれなくてね」

「そうですか? 今は凄く様になっていますよ?」

「ありがとう。それもたぶん、アルファと出会えたおかげだ」


 俺がそういうと、アルファは嬉しそうに微笑んだ。

 その直後、再び異音がする。


「またゴーレムか。しかも今度は複数」

「この魔力……もしかして」

「アルファ?」

「いえ、今は突破しましょう!」


 迫るゴーレムを前に、俺たちは武器を構える。

ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります。

現時点でも構いませんので、ページ下部の☆☆☆☆☆から評価して頂けると嬉しいです!

お好きな★を入れてください。


評価欲しいです!!!!


よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
連載版始めました!
悪役令嬢に転生した田舎娘がバッドエンド回避に挑む話
https://ncode.syosetu.com/n7604hy/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

最後まで読んでいただきありがとうございます!
もしよければ、

上記の☆☆☆☆☆評価欄に

★★★★★で、応援していただけるとすごく嬉しいです!


ブクマもありがとうございます!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ