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【二章完結】世界でただ一人の自動人形『ドール』使い  作者: 日之影ソラ
第三章

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45/45

45.真実

「ドールの制作者か?」

「いかにも、お前さんがワシの娘たちを目覚めさせてくれたんじゃな。礼を言わせてくれ」


 慈愛に満ちた優しい声が響く。

 姿は見えないが、その声からは本当の喜びを感じられた。

 不思議と驚きは緩やかだった。

 予感があったわけじゃない。

 ただ、この見たことのない研究室と、なぞの装置から聞こえる声。

 この異様な光景こそが、彼が制作者であることを証明しているように思える。


「にわかに信じられないわね。この声はどこから聞こえているのかしら?」

「見えとるじゃろ? お前さんらの目の前じゃ」

「この浮いてる塊がそうだっていうの?」

「うむ、正解じゃ」


 なぞの液体の中で浮かぶ結晶。

 確かに声はそこから聞こえている。

 姫様は訝しむ。


「彼女たちの生みの親だというなら、千年も昔の人物でしょう? そんな人が生きているなんて信じられないわ」

「生きておるわけではない。お前さんらが見ているそれは、生前のワシの意識をコピーしたもの。いわば魂の複製じゃ」

「魂の……コピー? そんなことができるの?」

「できたようじゃな。どうじゃワシはすごいじゃろ! ガッハッハッハッ!」


 博士は大声で笑う。

 清々しい自画自賛に、姫様も呆れている様子だ。

 この陽気なテンションは、少しだけデルタに似ている。

 マイペースさはシータにもか。

 アルファに似ている部分も……どこかにあるのだろうか。

 

「やっぱりドールの性格は作成者に似るんだな」

「それは当然じゃろう? あの子たちはワシの娘じゃからのう」

「娘のように可愛がっていたのね」

「いや、比喩ではなく事実じゃ」

「「え……?」」


 驚き、俺と姫様の声が揃う。

 比喩ではない?

 それはどういう意味だろう?

 同じ疑問が頭に浮かんだ時、博士は答える。

 

「あの子たちはワシの血を引く娘たちじゃった。ドールになる前の話じゃがのう」

「……どういう意味だ?」

「説明してもらえるかしら?」

「もちろんじゃ。そのために……お前さんらを通したのじゃからのう」

 

 表情は見えない。

 だけど確実に、暗い雰囲気は流れる。

 感覚的にわかる。

 これから知る話は、きっと暗くて悲しいお話なのだろうと。


「あの子たちはワシのことを覚えておったか?」

「自分たちを作った博士だと言っていたよ」

「……そうじゃろうな。そう認識するように組んでおいた。あの子たちは……ワシが本当の父親であることも、自らが一度死んだことも知らぬはずじゃ」

「一度……死んだ?」


 俺は耳を疑った。

 アルファ、デルタ、シータの三姉妹が……死んでいた?

 意味が分からず困惑する中、博士は続ける。


「少し長い話になる。当時、ワシはとある国に使える魔導具師じゃった。ワシは天才じゃった」


 自分で言うのか……。


「特にゴーレム作りが得意じゃったワシは、自律するゴーレムの作成に取り組んだ。それこそがドールの原型となった。意志を持つゴーレム……机上の空論じゃったが、ワシは魔物の死体をベースにして、自立型のゴーレムを完成させたんじゃ」


 死んだ魔物とゴーレム作成技術を応用し、魔物の身体を持つゴーレムを作成したという。

 それはゴーレムであってゴーレムではない。

 新たな命を吹き込まれた新しい生物、とでも表現するべきだろうか。

 外からの魔力供給がなければ動けないが、魔力さえあれば永遠に生き続けられる。

 限定的な不老不死を完成させた。


「ワシが作った自律型ゴーレムは、国にとっては強力な戦力じゃ。ちょうど戦争をしておったから、大量に作られた。結果、多くの血が流れた」


 彼の作ったゴーレムは兵器として運用された。

 壊れても死なない肉体を持つゴーレムは、不死身の兵力。

 圧倒的な武力を手に、その国は快進撃を続けた。

 が、それを快く思わなかった他国は、ゴーレムの発明者である博士を殺す計画を立てた。


「ワシが狙われるのは必然じゃった。じゃが予想外なのは、ワシの娘たちまで狙われてしまったことじゃよ」

「それが……アルファたちなのか?」

「うむ。ワシには嫁が三人おってのう。あの子たちはそれぞれの子供じゃった。危険じゃからとワシから離れて暮らしておったのじゃが……奴らはそこに襲撃した」


 博士曰く、おそらく脅しだったのだろう。

 お前のせいで多くの血が流れた。

 だから大切な娘たちを殺され、報いを受けろ。

 そういうメッセージだったのだろうと。


「そんな理由で……」

「ひどい時代だったのね」

「そうじゃよ。ワシはただ、研究ができればそれでよかった。その後の影響なぞ深く考えもせんかった。その結果……ワシは娘たちを失ってしまった」


 声から悲しみが伝わってくる。

 きっと、離れて暮らす娘たちのことが大切だったのだろう。

 そう思わせられる。


「娘たちの遺体が、ワシの元に運ばれてきた。無残な姿じゃった……嘆いても生き返ることはない。じゃが、ワシは一つの希望を見出した」


 それこそが自律型のゴーレム。

 魔物の死体をベースに作り出した新たな命の形。


「ここまでくればわかるじゃろう? ドールとはすなわち、生きた人間をベースにしたゴーレムじゃよ」


 彼女たちの肉体は、元から彼女たちのものだった。

 人として生まれ、死んでしまった肉体を、博士の技術で復活させた。

 彼女たちが異様に人間らしく、人形に見えない理由はそこにある。

 見えないはずだ。

 なぜなら彼女たちは、人間だったのだから。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 話がサクサク進む点 登場人物も多すぎず少なすぎずシンプルにわかりやすい [気になる点] きっちりオチまでいけるかどうか [一言] なにとぞ三章を~続きを~ 完結楽しみにしています
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