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【二章完結】世界でただ一人の自動人形『ドール』使い  作者: 日之影ソラ
第三章

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42.秋崩れのダンジョン

 マートレ湖の問題を解決した俺たちは、次なる依頼を完遂するために帝都を出発した。

 ここ最近、あまり一か所に滞在することがなくなり、少々疲れ気味だ。

 ただあまり休んでもいられない。

 あの日以降、幻灯団の活動が活発になったという報告が、姫様を通して俺たちにも伝えられた。


「近いうちに大きな戦いが起こる……上はそう睨んでいるそうよ」

「戦い……帝都を標的にするんでしょうか」

「さぁ、そこまではわからないわ」


 馬車に揺られながら俺と姫様は話し合う。

 彼らについての情報は、俺たちより帝国のほうが握っている。

 正直に言えば、彼らの動向は気になっていた。

 逃がしてしまった責任もあるが、何よりバイデンの顔が忘れられない。

 この感情が何なのか。

 奴の言う通り、俺とあいつは似ているのか。

 再び会って確かめないと気が済まない。

 今はそう思うようになっていた。


「気持ちはわかるけど、今はこっちに集中しなさい」

「わかっています」


 俺たちが向かっているのはダンジョンだ。

 昨年の秋ごろに発見され、帝国の騎士団によって探索された。

 しかし何も発見できず、それどころか探索中にダンジョンが崩れてその半分がなくなってしまったそうだ。

 話を聞いていたデルタがぼやく。

 

「だから秋崩れのダンジョンって命名は安直すぎねーか?」

「ふふっ、私もそう思うわ」


 姫様も呆れて笑う。

 どうやら崩壊が起こった後は放置されているらしい。

 本来なら再調査をするべきだったが、一度目の調査で何も発見できなかったとして、積極的な人員派遣は行われず、半年以上そのまま。

 アルファが姫様に尋ねる。

 

「どうして今さらその調査をすることにしたんですか?」

「幻灯団よ」


 ふいにその名が出され、俺は思わずビクッと反応する。

 

「最近、彼らの出入りが確認されているのよ。もしかすると拠点の一つにされているかもしれないわ」

「なるほど、だから調査を決めたんですね」

「ええ。幻灯団は私たち帝国が最も警戒しなければいけない相手だもの。その拠点なら早めに潰しておきたい」


 姫様からの説明を聞き、アルファたちは納得したようだ。

 かくいう俺も、この決定に疑問はない。

 むしろ好都合だ。

 ダンジョンが彼らの根城になっているのなら、バイデンたちがいる可能性もある。

 もう一度対面して、確かめるんだ。


「気負い過ぎないでね」


 姫様が隣で俺にぼそっと呟いた。

 少しだけ心配そうな横顔が見えて、俺は微笑む。


「大丈夫ですよ」


 心配はかけない。

 次は逃がさないし、負けない。

 姫様を解放する方法だって、今度こそ見つけてみせる。

 気負うなと言われても、多少は力が入る。

 それはきっと、姫様も同じはずだ。


 馬車を走らせ岩がゴロゴロと転がる道を進む。

 街や村は当の昔に通り過ぎて、人気のない場所にたどり着いていた。

 姫様の話によれば、この岩山のあたりにダンジョンの入り口があるらしいのだが。


「おかしいわね。この周辺だったはずよ」

「……なんもねーぞ」


 先頭のデルタが辺りを見渡してそう言った。

 俺も確認したけど、大きめの岩がいくつも並んでいる程度で、入り口らしきものは見当たらない。

 馬車を降りて、周囲を探索してみる。

 魔物の気配もなく、殺風景な景色が広がっていた。


「どこにもありませんね」

「ああ」


 隣を歩くアルファと一緒に、シータが大きな岩の前で立ち止まっていることに気付く。

 さっきまで寝ていた彼女だが、まだ寝ぼけているのだろうか。

 心配になって俺たちが歩み寄る。


「シータ?」

「お姉ちゃん、お兄ちゃん」

「どうかしたか?」

「……この下、弱いけど魔力を感じるよー」


 シータが岩の下を指さす。

 こんな何もない場所に魔力を感じるなんてありえない。

 何かが隠されているとかでもない限り。

 俺とアルファは顔を見合わせ、同じことを考えて頷く。

 アルファが右へ、俺が左へ移動し、大きな岩を持ち上げる。

 するとそこには……。


「ラスト様! 階段が!」

「ああ、見つけた。シータのお手柄だな」

「えへへ~ ほめてほめて~」


 岩を避けた後、俺はシータの頭を撫でてあげた。

 彼女の魔力に対する敏感な感覚がなければ見つけられなかっただろう。

 俺たちは遅れて二人を呼び寄せる。

 姫様とデルタも入り口前に到着する。


「へぇーよく見つけたなぁ~」

「シータのおかげ」


 えっへんと胸を張るシータ。

 可愛らしくまた頭を撫でてあげたくなってしまう。

 姫様が階段の奥を覗き込む。


「暗くて見えないわね。おそらく以前より崩壊が進んでいるはずよ」

「安全のために姫様は待機していますか?」

「冗談でしょ?」

「ですよね」


 姫様が居残りなんて選択するはずがない。

 もとより俺も、彼女を一人にするのは危険だと思っていた。

 同じ危険なら、俺たちの傍にいてくれたほうがずっといい。

 俺たちが守ればいいのだから。


「それじゃ、行きましょうか」

「ええ」


 俺たちは階段を下る。

 未知、かどうかわからないダンジョンを探索するために。


 この時、俺は考えもしていなかった。

 幻灯団よりずっと、意外な相手と対面することになるなんて……。

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悪役令嬢に転生した田舎娘がバッドエンド回避に挑む話
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