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【二章完結】世界でただ一人の自動人形『ドール』使い  作者: 日之影ソラ
第二章

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30/45

30.昇天

 俺は気づいていた。

 彼女たちが俺に近づいていることに。

 つながる感覚がより強まっていたことに。

 だから信じた。

 彼女たちは必ずここへ来ると。


「あの死者どもを退けたきたか」

「はっ! あんなもん屁でもねーんだよ! 無事だな? マスター!」

「ああ、最高にいいタイミングだよ」

「当然です。私たちはラスト様のドールですから」

「連れてきたのはシータ」

「ありがとう、みんな」


 おかげで力が入る。

 余裕が生まれた俺と対照的に、リッチーは苛立ちを見せる。


「人形どもめ。貴様らに用はない」

「私たちはあるんです」

「そうだぜ腐敗臭野郎! うちのマスターを監禁しやがって!」

「天罰」


 三人がリッチーに向かう。

 反撃するように鞭による攻撃を放つ。

 アルファが素手で触れたが無事のようだ。


「ドールに即死は効きませんよ!」

「くぅ……」


 彼女たちは魔力で動いている。

 つまり、俺が生きている限り肉体が破壊されなければ死ぬことはない。

 リッチーは俺を殺すために彼女たちと引き離した。

 そう思っていたが少し違うらしい。

 彼女たちを遠ざけるために俺を移動させたんだ。

 自身の天敵である自動人形と戦うことを恐れて。


「アイススピア!」

「気炎」


 リッチーの魔術をシータの炎が相殺する。


「魔術で勝てると思わないほうがいい」

「貴様ぁ!」


 彼女たちのおかげで隙ができた。

 リッチーは今、自分と相性の悪い三人に意識がそがれている。

 俺はそれを見逃さない。

 すかさず距離を詰める。

 最大の魔力を足に込め、今出せる最高速度で。


「ようやく――」


 近づけた。

 リッチーの懐に、手が届く距離に。

 リッチーの肉体は外からの攻撃には強い。

 だが、その身体はあくまでアンデッド、聖なる力には弱い。

 不死性を保てるのは、聖なる力を相殺しているからに過ぎない。

 つまり、内側から聖なる力を流し込まれれば、リッチーといえど一たまりもない。 


「貴様!」


 リッチーに俺の手が触れる。

 うってつけの能力が俺にはある。


「ラスト様!」

「やっちまえマスター!」

「がんばってー」

「存分に使いなさい。私の力を――」


 スキル『コネクト』。

 俺とリッチーは繋がり、俺の中に流れる聖なる力がリッチーにも注がれる。


「ぐ、うおああああああああああああああああああああああああ」


 リッチーの肉体は青白い炎に包まれる。

 内側から流し込まれた力によって、リッチーは浄化されていく。

 これまでため込んだ魔力が放出され、炎のように見えるんだ。


「力が、力が抜けていくううううううううううううう」

「それは殺した人から奪った力だ。お前自身の力じゃない。他人の力を使いたいなら、ちゃんと了承を取らないとだめだぞ?」


 それが似た力を持った俺からのアドバイスだ。

 もっとも、活かす機会は永遠に訪れないだろうけど。


「さようなら、リッチー。殺された人たち」 

 

 どうか安らかに眠ってほしい。

 敵は討ったよ。


 空間が消滅していく。

 気づけば俺たちは街の中に戻っていた。

 どうやら空間の位置は現実と重なっていたようだ。


「みんな無事か?」

「はい」

「ピンピンしてるぜ」

「疲れた」

「はははっ、いつも通りだな」


 彼女たちを見ていると安心する。

 緊張が途切れて、全身が脱力する。


「お見事だったわ」

「エリーシュ様」


 彼女も無事のようだ。


「ありがとうございます。エリーシュ様のおかげでリッチーを倒せました」

「倒したのはあなたよ」

「エリーシュ様に助けられたおかげですよ。最後の攻撃も、コネクトで聖なる力を共有していたから倒せたんです」

「それも、あなたの力でしょう?」


 彼女は笑ってそう言った。

 どこまでも俺を立てるように。


「やっぱりあなたに頼んで正解だったわ。いえ、あなたたちにね。三人もありがとう。おかげで一つ目標が達成できたわ」

「いえ、私たちはラスト様の意思に従っただけです」

「こっちこそありがとな! マスターを助けてくれたんだろ?」

「意外といい人?」

「ふふっ、そうよ。意外と、いい人なの」


 意外は余計だな。

 彼女が悪い人間であるはずがない。

 だったら俺たちに力を貸すことも、こんな危険な場所について来ることもない。

 誰よりまじめで、優しい人だから。

 俺は心からそう思う。


「照れるわね」

「ぅ……そうだった」


 心の声も聞こえているんだった。

 恥ずかしいな。


「けど、本心です」

「わかっているわ。あなたの心はいつも青空みたいに綺麗だもの」

「見えるんですか? 心そのものが」

「感じるのよ。あなたと一緒にいると、大空をゆったり漂う雲の気分を味わえるわ。信じて委ねて、自由に浮かんでいられる」


 大空……か。

 だったら、三人は俺の太陽だな。


「恥ずかしいセリフね」

「言わないでくださいよ」

「黙っていてほしいの? だったら条件を出すわ」

「条件?」


 彼女はいたずらな笑顔で言う。


「これからも、私のことを守ってね?」

「そんなことでいいなら」

「そう? ありがと。じゃあ先にお礼ね」

「え?」


 チュッと、唇がほほに触れた。


「なっ!」

「ちょっ!」

「わーお」

「エリーシュ様!?」


 俺はキスされた頬に手を触れる。


「ふふっ、やっぱりあなたをからかうのは面白いわね」

「……悪い人ですね」


 予感がする。

 これからもにぎやかになりそうだ。

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連載版始めました!
悪役令嬢に転生した田舎娘がバッドエンド回避に挑む話
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