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【二章完結】世界でただ一人の自動人形『ドール』使い  作者: 日之影ソラ
第二章

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24.ついて来る気?

 エリーシュ皇女のお願いを聞いた俺たちは――


「大きいですね」

「でっけーなー」

「首疲れる」

「……まさか、俺がここへ来ることになるなんて」


 王城の敷地に足を踏み入れていた。

 目の前にそびえたつ純白の城はまさに圧巻。

 冒険者ギルドの建物も十分に大きいけど、お城は規模が桁違いだ。

 

「何をぼーっと立っているの? こっちよ」

「あ、はい」


 俺たちはエリーシュ皇女の案内で王城にやってきた。

 冒険者になって城に招かれる。

 こんな奇跡……一体誰が信じるだろうか。

 正直自分でも夢じゃないかと思ってるくらいだ。


「いてっ!」


 皇女様にほっぺをつねられた。


「な、なにするんですか!」

「ふふっ、ちゃんと痛かったみたいね」

「当たり前じゃないですか!」


 俺はつねられたほほを押さえて叫ぶ。

 すると彼女は楽しそうに笑って。


「じゃあ夢じゃないわね」

「……そうですね」


 この人は他人の心を読み解くことができる。

 俺が考えていることはお見通しだ。

 頭の中で変なことを考えないように注意しないといけない。


「変なことって? もしかしてエッチなことかしら?」

「ち、違いますよ! 失礼なことを考えないようにと」

「気にしなくていいわ。慣れているもの」


 他人の声が聞こえる彼女は、相手の悪感情も包み隠さず知ることができる。

 それは……時間とともに慣れるものなのだろうか。

 俺なら耐えられない気がして、想像するとぞっとする。


「案外なれるわよ。他人が私でエッチな妄想をするのも……ね」


 彼女は耳元でそうささやいた。


「ちょっ、からかわないでくださいよ」

「ふふっ、あなたの反応が面白いからついね。けどそろそろやめてあげるわ。後ろの子たちが怖いから」

「え……?」


 俺たちの後ろに三姉妹がついてきている。

 アルファはむすっとしているし、デルタもなんだか不機嫌そうだ。

 シータは……歩くのが疲れたのかな?


「距離が近いわ……」

「なーんか釈然としねーな」

「お兄ちゃんおんぶしてぇ~」

「ふふっ、大人気ね」


 楽し気?な会話をしながら王城の建物内に入る。

 敷地内だけでも緊張したのに、場内はもっと緊張する。

 通り過ぎる騎士たちが彼女に挨拶する中、俺たちにも視線を向ける。

 明らかに訝しんでいるみたいだけど、誰も指摘しない。


「心配いらないわ。私と一緒にいる限り安全よ」

「あ、安全……ですか」

「ええ。城の中では私のそばを離れないことをお勧めするわ」


 俺はごくりと息をのむ。

 オークション会場の一件もあって正直不安だ。

 この中に、あの時会場にいた騎士が混ざっていないか……。


「それも心配いらないわ。あそこにいた騎士たちは全員クビになったから」

「く、クビ?」

「当然でしょう? あんなことが公になったら大変だもの。口封じよ」

「そ、その言い方だとクビよりひどいことになってるんじゃ……」


 まさか殺してないよね?

 皇女様はにこりと微笑んでごまかす。

 逆に怖い。


「さぁ、こっちよ」


 案内された一室に入る。

 長細いテーブルの左右にソファーがある。

 俺たちは皇女様と対面する位置に腰をおろした。


「ここなら誰にも聞かれないわ。安心してお仕事の話ができるわね」

「今さらですけど、うちじゃ駄目だったんですか?」

「駄目よ。あそこじゃ誰に聞かれてるかわからないわ。これから話すことには機密情報も含まれているの。それに……」

 

 彼女は俺の顔をじっと見つめる。


「なんですか?」

「いいえ、なんでもないわ。とにかくここで話したかったの」

「は、はぁ……」 

「長居するつもりはないわ。さっそく話を始めましょう」


 そう言って彼女はテーブルに五枚の用紙を並べた。


「これは?」

「あなたに受けてほしいお願いよ」


 それは依頼書だった。

 形式はギルドのクエストに似ている。

 ちゃんと報酬も設定されていた。

 俺たちは自分の手前にある用紙を一枚ずつ取る。


「大量発生したアンデットの討伐」

「これはアイスドラゴンの撃退ですね」

「こっちはダンジョンだな」

「マートレ湖の調査……調査?」

「そしてこれが――」


 最後の一枚は皇女様が手にして、俺たちに見せる。


「国を荒らす盗賊の一団、幻灯団の討伐よ」

「全部バラバラなんだなー、場所も違うしさ」

「ここの騎士たちに頼めないんですか?」


 アルファが皇女様に質問した。

 俺も同じことを尋ねようとしたからタイミングがよかった。

 皇女様は答える。


「それができたら頼んでいないわ。今、この国の兵力は別のところで使っていて空きがないの」

「あんなオークションに警備出してたじゃん」

「普段に比べれば少数だったわ。無駄だって話なら私もそう思ってるわよ」

「他って、何に使ってるの?」


 デルタとシータは皇女様相手に物おじしないな……。

 さすがに敬語は使ってほしいんだが。


「自然体でいいのよ。あなたもいい加減、私のことはエリーシュと呼んで」

「わかりました。エリーシュ様」

「様もいらないのに。まぁいいわ。シータの質問に答えるなら、お父様が知っているわ」


 エリーシュは遠回しな言い方をする。

 シータは首を傾げた。


「わからない?」

「そうよ。わからないの。お父様は何かを探している。それが何なのかは……お父様以外知らないわ」

「探し物をするために兵力を? 一体何を探しているんですか?」

「さぁね? 私にもわからないわ。噂じゃ、国の進退に関わる古代の遺産……らしいわよ」


 古代、という単語が引っかかる。

 俺の隣には、千年前に作られたドールが三人。

 まさか……な。


「そういうわけだから、こっちの問題は私たちがやるしかないの。特に急を要するのは、あなたが持っているそれね」

「アンデッド?」

「ええ。すでに大きな被害がでているわ。早急に対処するべき案件よ」

「じゃあ決まりですね」


 最初の案件は、アンデッド退治だ。


「判断が早くて助かるわ。それじゃ私も準備するわね」

「え? エリーシュ様もついて来る気ですか?」

「当然よ」


 何を今さら、みたいな顔をされた。

 大丈夫なのか?

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連載版始めました!
悪役令嬢に転生した田舎娘がバッドエンド回避に挑む話
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