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【二章完結】世界でただ一人の自動人形『ドール』使い  作者: 日之影ソラ
第一章

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20/45

20.因縁に決着を

「もうすぐ着くぞ~」

「……うん」

「シータ、いつまでそこにいるつもり?」

「あははは……」


 馬車の中、シータは座席ではなく俺の膝の上に頭をごろんと寝転がっていた。

 アルファはむすっとした顔で注意する。


「もう起きなさい。ラスト様に失礼でしょ」

「うーん……ここすごく落ち着く」

「そんなこと聞いてないわ。いいから起きなさい」

「嫌だよぉ~ めんどくさいもん」

 

 どうやらシータは面倒くさがりみたいだ。

 移動中ずっと気だるそうにしていたし、俺の膝でほとんど眠っていた。

 魔力が足りなかったんじゃないかと心配になるくらい。


「姉上も諦めろって。シータに言っても無駄だ」

「そうそう。デルタお姉ちゃんはわかってるね~」

「駄目よ。しっかりしなさい! ラスト様の前でだらしない」

「お兄ちゃんは気にしないでしょ~」


 ごろごろと膝の上で頭を転がし、俺のことを見上げる。

 なんだこの可愛い生き物は。


「そうだな。到着するまでだぞ?」

「わーい……お兄ちゃん優しい~」


 アルファには悪いが、この可愛さにあらがえない。

 頭を撫でるとゴロゴロ喉をならすし、猫みたいだな。

 

「ラスト様!」

「まぁまぁ、もうすぐ着くんだし」

「……もう、優しすぎるんですよ」


 そう言ってそっぽを向く。

 拗ねられてしまったらしい。


 と、そうこうしているうちに馬車は見慣れた街並みに入る。

 

「帰ってきたな」


 俺たちの街に。

 雪も降っていないし寒さも感じない。

 ちょうどいい気候でホッとする。

 街へ帰還した俺たちは馬車を返却した。


「歩くのー? お兄ちゃん、抱っこして~」


 そう言ってシータが背中に引っ付いてくる。

 アルファがそれを強引にはがす。


「駄目です。ちゃんと歩きなさい」

「うぅ……アルファお姉ちゃん……うるさい」

「うるっ! シータが甘えてばかりだからでしょ!」

「ちょっと姉上ここで喧嘩すんなよ。目立つじゃんか」


 デルタが仲裁に入る。

 アルファがここまで感情的になるのは初めてみる。

 なんだか生き生きとしていて、これはこれで悪くない光景だ。


「三人……そろったんだな」


 しみじみ感じる。

 やり遂げたという達成感も。

 そして、これから四人でたくさんの冒険をすることを夢想して、わくわくする。

 最高の気分のまま帰宅できれば……。


 本当によかったのに。


「ラスト」

「――!」

 

 聞きたくなかった声が響く。

 頭に、心に。

 何度も聞いた……呼ばれたことを思い出す。


「ドイル……」


 振り返ると彼らがいた。

 俺を追放した元パーティーが。


「なんだこいつら?」

「知らない人ー」

「そりゃそうだろ」

「……もしかして、ラスト様の以前の……」


 できれば会いたくなかった。

 会わせたくなかった。

 彼女たちには……。

 今さら遅いけど。


「久しぶり、元気にしてた?」

「お前は随分と楽しそうじゃねーか。ラストの分際で」

「いきなりか」


 まるで挨拶みたいに暴言を吐かれた。

 慣れていたはずなのに、こうして改めて聞くと胸の奥がきゅっと締め付けられる。

 苦しいな。


「ラスト、お前こっち戻ってこい」

「……は?」

「聞こえなったか? 戻れって言ってるんだよ」

「……聞き間違えだよね?」


 戻れといったのか?

 俺に、ドイルたちのパーティーに?


「何度も言わせんなよ。さっさと戻ってこい。また仲間にしてやるよ」

「……本当に」


 勝手な人たちだ。

 一度追放しておいて、今更戻れって?

 どういう風の吹き回しだ。

 何を考えている?

 いや、そんなことどうでもいい。

 理由なんて関係なく、俺の返答は一つしかないんだから。


「嫌だよ」

「なんだと?」

「当たり前じゃないか。どうして今さら、戻らなきゃいけないんだ? そっちが追放したくせにさ。俺なんていなくても平気だったんでしょ?」

「……っ、いいから戻れ、これは命令だ」

「そんな命令聞く気はないし、お前に命令される筋合いはない。行こう、みんな」


 無視して立ち去ろうとする。

 しかしドイルが道を塞ぐ。


「どいて」

「てめぇ、調子に乗りすぎだぜ。一人じゃ何もできない癖に」

「一人じゃ……そうか。そこまでは気づいたんだね」

「くっ、てめぇ!」


 ドイルが胸倉をつかもうとする。

 その手を叩き落とした……のは、俺ではなくアルファだった。


「ラスト様に触れないでください」

「なんだお前は……」

「お前こそなんだよ。うちのマスターの邪魔してんじゃねーよ」


 今度はデルタが前に出た。

 彼女は目つきで威嚇している。

 二人とも、いつになく苛立っているように見えた。


「ありがとう二人とも。けど気にしないで。もう、関係ない人たちだから」

「……いい加減調子のんじゃねーよ!」


 怒りに身を任せ、ドイルが魔剣を抜く。

 仲間たちが止めようとしたがそれを無視して。

 ドイルの性格だから、こう来ることは予想できた。

 先に剣を抜いたのはあっちだ。

 ならこれは、正当防衛だろう?


「燃えやがれ!」


 魔剣から炎が放たれる。

 たけだけしい炎だが、今の俺には可愛く見える。

 片手で消してしまえるんだから。


「な……素手で?」

「ごめんね」


 刀を抜く。

 剣術の最速に、俺の肉体の最速を合わせて放つのは――


 居合。


 俺の刀は魔剣を斬り裂いた。


「ば、馬鹿な……こんな……」

「これで勝負ありだ。もう俺に関わらないで」

「っ、この野郎が!」

「――氷天」


 折れた剣で襲い掛かろうとしたドイルを、氷の柱がつなぎとめる。

 やったのはシータだ。


「もう終わったでしょ? 帰ろ、お兄ちゃん」

「そうだな。ありがとう」


 俺は彼女の頭を撫でてあげた。

 そして最後に、ドイルの顔を見る。


「お前の言う通りだよ。俺は一人じゃ何もできない。だから、彼女たちと一緒にいる。そうすれば、俺にもできることがあるから」


 それが答えだとまっすぐ伝える。

 俺はドイルたちじゃなく、三姉妹を選んだ。

 選ばせてもらえた。

 だからもう、これっきりだ。


「さよなら」


 俺の古巣。


 そして――


「ただいま」


 俺たちの新しい我が家。

ここまでを第一章とします!

というわけで第一章は完結です。

少しでも楽しんでいただけたでしょうか?


この先どうするかまだ検討中ですが、反応見つつ考えたいと思います。


よければここで一つ、評価★やブクマをしていただけると嬉しいです。

頑張って執筆しようという励みになります。

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連載版始めました!
悪役令嬢に転生した田舎娘がバッドエンド回避に挑む話
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最後まで読んでいただきありがとうございます!
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― 新着の感想 ―
[一言] 日之影ソラ先生 こんにちは。 お話、楽しく読ませていただいております。 ラストはパーティで献身的にみんなの支援をしていたのに 信じられず… パーティの一員として認められず放逐される、 と…
[一言] 流石に、これで戻ってこいと言われても、戻るわけねーよな。 追い出した癖に、戻ってこいは、ワガママだな。 まぁ、今のコイツらじゃあ、コイツらに勝てる訳ないよな。 自分の実力が、ラストあり…
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